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佐々木希、濱田岳、西島秀俊…朝ドラ&テレ東ドラマ“二刀流”ブームの謎

佐々木希さん、濱田岳さん、YOUさん、西島秀俊さん…近年、朝ドラとテレ東ドラマを掛け持ちして出演する“二刀流”が増加。その理由に筆者が迫ります。

佐々木希さん(2020年10月、時事)、西島秀俊さん(2019年5月、時事通信フォト)
佐々木希さん(2020年10月、時事)、西島秀俊さん(2019年5月、時事通信フォト)

 現在「ドラマプレミア23」で放送中の「ユーチューバーに娘はやらん!」(テレビ東京系)に佐々木希さんが主演しています。このドラマがスタートした翌日には、NHKの連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(NHK総合)にも登場。そこから1週間、重要な役を演じました。

「ドラマプレミア23」といえば、前クールの「じゃない方の彼女」(テレビ東京系)にも「カムカム」の役者たちが出演していました。濱田岳さんとYOUさんです。ドラマの中での関係性は「じゃない方」が実の親子で、「カムカム」ではヒロインの兄とヒロインの姑(しゅうとめ)。どちらにも抱擁シーンがあり、ネットでは「ここでもハグしてた」などと話題になったものです。

テレ東のドラマ力

 いわば、朝ドラとテレ東ドラマの“二刀流”状態。そんなケースは他にもあります。昨年の10月まで放送されていた朝ドラ「おかえりモネ」(NHK総合)に出演していた西島秀俊さんは、「ドラマプレミア23」の「シェフは名探偵」(テレビ東京系)に主演。「おかえりモネ」の浜野謙太さんと「カムカム」の西田尚美さんは、「ドラマ24」で「スナックキズツキ」(同)に出演しました。

 とはいえ、朝ドラと民放ドラマの掛け持ち自体は、珍しいことではありません。4年前には、佐藤健さんのケースが話題になりました。

 朝ドラ「半分、青い。」(NHK総合)にヒロインの幼なじみで、知的かつ繊細な役で登場。一方、「義母と娘のブルース」(TBS系)では無学な楽天家という対照的な役を演じ、その実力が高く評価されたのです。

 佐藤さん本人も「時間を縫って、同時に2作品の現場を経験して大変だった」としつつ、「時期が重なったことは“幸運だった”としか言えないし、ラッキーだなって」と振り返っています。

 ただ、朝ドラとテレ東ドラマという組み合わせは珍しいものです。ではなぜ、こうした掛け持ちが相次いでいるかといえば、その背景には、テレ東のドラマ力向上があると考えられます。

 民放キー局の中でも最も後発で、資金面なども潤沢ではないテレ東はかつて、隙間を狙ったようなバラエティー番組を得意にしていました。しかし、2005年に「ドラマ24」がスタートしたあたりから、ドラマにも力を入れ始めます。「モテキ」「勇者ヨシヒコと魔王の城」「孤独のグルメ」などがヒット。業界からも、役者たちからも一目置かれるようになりました。

“攻め”の姿勢が魅力

 例えば、昨年放送された「珈琲いかがでしょう」(テレビ東京系)に主演した中村倫也さん。リモート取材会で作品の雰囲気について聞かれると、「違うところはやっぱり予算のケタじゃないですか」と笑わせつつ、「テレ東さんは、ある程度攻めるというか、好きにやらせてくれる感じがある」と語っていたものです。

 この“攻め”の姿勢こそ、テレ東ドラマの魅力と言えます。テレ東のプロデューサー・阿部真士さんもインタビューで「はやりを意識せず、自分たちが面白いと思える作品制作に取り組んでいます」と発言。過剰な演出で叱られたこともあるとしながら、「でも、他がやらないからうちがやる、むしろ叱られたい(笑)ぐらいの熱量が持ち味」だとアピールしていました。

 だとしたら、朝ドラとテレ東ドラマの二刀流は今後、増えていく可能性があります。中村さんのような“攻め”の姿勢を好む感覚は、どの役者も大なり小なり持っているからです。

 朝ドラや大河ドラマ、あるいはフジテレビの「月9」のような、枠の注目度が高い分、役者への縛りも大きくなりがち。そんな中「好きにやらせてくれる感じ」のテレ東ドラマから面白いオファーが来れば、掛け持ちになるけど出てみよう、という気持ちも生まれやすいでしょう。

 しかも、テレ東ならではの掛け持ちのしやすさがあります。というのも、同じ役者が同時期に2本以上のドラマに出ている場合、混乱を避けるため、1本しか見ないという視聴者もいるので、掛け持ちはドラマ制作側にとって、歓迎ムード一色ではありません。その点、テレ東ドラマとなら、掛け持ちが目立ちにくいのです。

 その理由としては、系列局が少ないこと、スポーツ紙やワイドショー、情報番組との連携があまりないことが挙げられます。全国の人が見るわけではなく、連携するスポーツ紙や番組が、大々的に取り上げることも珍しいことから、気軽にオファーを受けられると考えられます。役者が自らの可能性をひそかに試す場としても、うってつけなわけです。

 さらに、両方で成功すれば、局や枠、役柄などにこだわらず、力を発揮できる役者であることが示せます。

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宝泉薫(ほうせん・かおる)

作家、芸能評論家

1964年岐阜県生まれ。岩手県在住。早大除籍後「よい子の歌謡曲」「週刊明星」「宝島30」「噂の真相」「サイゾー」などに執筆する。近著に「平成の死 追悼は生きる糧」(KKベストセラーズ)、「平成『一発屋』見聞録」(言視舎)、「あのアイドルがなぜヌードに」(文春ムック)など。

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