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青森山田ギニュー特戦隊話題に サッカーではなぜ「ゴールパフォーマンス」をする?

サッカーの見ものの一つに得点後の「ゴールパフォーマンス」がありますが、他の球技ではほとんど行われません。なぜ、サッカーではゴールパフォーマンスが行われるのでしょうか。

青森山田の選手によるゴールパフォーマンス(2020年1月、時事)
青森山田の選手によるゴールパフォーマンス(2020年1月、時事)

 1月11日に行われた第98回全国高等学校サッカー選手権準決勝で、青森山田高校の選手たちが得点直後にゴールパフォーマンスとして、人気漫画「ドラゴンボール」に登場する「ギニュー特戦隊」のポーズをしたことを同校の監督が叱ったという記事が話題になりました。今回に限らず、サッカーでは得点直後、集団や個人によるゴールパフォーマンスが行われますが、他の球技ではほとんど行われません。

 なぜ、サッカーでは得点直後にゴールパフォーマンスをするのでしょうか。一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事で尚美学園大学の江頭満正准教授に聞きました。

神に感謝するほどの希少性

Q.なぜ、サッカーでゴールパフォーマンスが行われるようになったのですか。

江頭さん「サッカーでは、ゴールが決まってからボールを中央にセットし、試合を再開するまで時間がかかります。また、1試合あたりの得点が他の球技よりも少なく、得点の重みが異なります。そこで、試合を再開するまでの時間に、ゴールできた幸運に感謝して神に祈る行為や、チームエンブレムにキスをする行為の習慣があり、それらの行為がゴールパフォーマンスに発展した可能性があります。ただ、はっきりとした起源は分かりません」

Q.1得点が重い球技だから、選手たちが喜びを表現する時間があるということでしょうか。

江頭さん「その通りです。プロのサッカー選手でも、現役時代にゴールを100回決められる選手は希少です。1993年のJリーグ開幕から27年が経過しましたが、J1で100ゴールを記録している人は、わずか14人しかいません。プロ野球のホームランに置き換えると、歴代通算ホームラン数14位は長嶋茂雄さんの444本です。少々強引ですが、サッカーのゴールはホームランの4.4倍希少です。

そのため、自分がゴールを決められたことは神に感謝するほど希少な出来事です。その素晴らしい出来事に対して感情が爆発することや、チームメートが駆け寄って、『おめでとう』と言うことは、自然な成り行きであって誰も止めるべきではありません」

Q.選手がゴールパフォーマンスに夢中で、守備につくのが遅れて相手に失点を許したという事象がいくつもあります。ゴールパフォーマンスと失点は紙一重の部分があると思うのですが…。

江頭さん「ゴールパフォーマンスに夢中で失点につながったケースは確かにありますが、レアケースです。失点につながったケースは、得点を決めたチームが過度なゴールパフォーマンスを行ったことで、審判が試合を再開させたのだと思われます。例えば、選手たちが試合中にもかかわらず、自陣で写真を撮り始めて、失点につながったケースがあります。試合を放棄したかのような行動を取ったため、審判がキックオフさせたのでしょう」

Q.ゴールパフォーマンス中は、相手チームや審判は相手に配慮して、試合を開始しないのが暗黙のルールなのでしょうか。

江頭さん「プロスポーツか否かによります。入場券を買ってプロの試合を観戦している場合、パフォーマンスもエンターテインメントの一部だと思われます。サッカーのゴールは素晴らしい芸術的なものもあれば、混乱の中で誰が決めたのか分かりにくいものまでさまざまです。いずれの場合も、観客はゴールを決めた選手を称賛したいものです。選手別の歌や振りがあれば、それを行いたいものです。

プロ野球の東京ヤクルトスワローズの応援団は得点後に『東京音頭』を熱唱します。この東京音頭の間に、審判がゲームを再開させることはありません。プロサッカーでは、すでに何度も行われ、観客も対戦相手も許せば、パフォーマンスが終わるまで審判は試合を再開しないのが粋だと思います。しかし、審判教育でこうしたことは明文化されていません。

また、サッカーの得点後のキックオフは、全ての選手が自陣に戻ってから行うことがルールで決められています。多くの場合、ゴールを決めた相手陣内でパフォーマンスに興じていますので、審判は待たざるを得ません。パフォーマンスを止めるのではなく、ゲームをスムーズに進行させるために自陣に戻るよう指示をすることはあります」

Q.フェアプレー精神からすると、サッカーのゴールパフォーマンスは問題ないのでしょうか。

江頭さん「ゲームの状況により、許される例と許されない例があります。

許される例は(1)見せることが目的のゲームで多くの観客がお金を支払っており、選手は入場料から報酬を受け取っている場合(2)チームにはファンがおり、ゴールしたことをファンも喜ぶ体験が顧客価値の一部である場合(3)試合進行の妨げにならない時間で終わること(4)対戦相手に向けて威嚇、もしくは侮辱的な行動や言葉が使われないこと(5)対戦相手の地域的な特徴、文化、国籍、人種、思想、宗教や身体的特徴を批判していないこと、の全てをクリアしている場合だと思います。

この考え方でいくと、残念ながら、青森山田高校のゴールパフォーマンスはいただけません。高校サッカーは見せることが目的のサッカーではなく、エンターテインメントとして開催されているゲームでもありません。しかも、5人の選手が事前に準備していたパフォーマンスであって自然な感情の爆発ではないからです。

5条件が一つでも満たされていない場合、ゴールを決めた選手は、自分の幸運を神に感謝すること、チームのエンブレムにキスをする程度は許されます。そして、その後迅速に自陣へ戻り、ゲームの進行を妨げないよう留意します。自陣に戻る最中、ゴールした選手をチームメートが称賛することも許されるでしょう。できれば、ゴールしたチームはボールを一秒でも早くセンターサークルにセットし、相手に反撃させる時間を残すようにしたいところです」

(オトナンサー編集部)

江頭満正(えとう・みつまさ)

尚美学園大学准教授

2000年、「クラフトマックス」代表取締役としてプロ野球携帯公式サイト事業を開始し、2002年、7球団と契約。2006年、事業を売却してスポーツ経営学研究者に。2009年、尚美学園大学教員となり、現在に至る。

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