夏の風物詩「花火大会」、そもそも夏に行うのはなぜ? 雨でも開催できる理由は?
花火大会は老若男女が楽しめる人気イベントですが、そもそも、なぜ夏に花火大会が多いのでしょうか。また、多少の雨が降っても花火ができるのはどうしてでしょうか。

夏の夜空を彩る花火大会が各地で行われています。花火大会は老若男女が楽しめる人気イベントですが、そもそも、なぜ夏に花火大会が多いのでしょうか。また、夏は夕立も多い季節ですが、多少の雨が降っても花火ができるのはなぜでしょうか。さまざまな疑問について、公益社団法人日本煙火協会(東京都中央区)の河野(こうの)晴行専務理事に聞きました。
夏に花火を楽しんだ江戸の風習
Q.まず、花火の始まりについて教えてください。
河野さん「花火の原料となる黒色火薬は中国で生まれ、12世紀ごろから実用化されて、軍事利用の他に爆竹や仕掛け花火が始まったようです。ヨーロッパでは、14世紀にイタリアで花火が初めて行われ、その後、各国に広まったといわれています。
日本では16世紀前半、戦国時代に火縄銃とともに黒色火薬が伝わり、当初は主に軍事用として使われました。現在のような観賞用花火については、1589年7月に伊達政宗が米沢城(山形県)で見たという記録や、1613年8月に徳川家康が駿府城(静岡県)で見たという記録があります。観賞用の花火が本格的に始まったのは江戸時代のことです」
Q.花火といえば「夏」のイメージがあります。なぜでしょうか。
河野さん「もともと『夏の娯楽』として広がったからです。江戸時代、夏の『納涼期間』というものが決められていて、その期間に花火を楽しむのが江戸の風習でした。お金持ちが舟遊びをして花火を楽しむことが流行し、だんだんとスポンサーがついて、イベントとして定着していきました。夏は日が長いので、夜を大切にして、夜に涼むという習慣があります。『納涼花火大会』とよくいいますよね」
Q.打ち上げ花火は1発当たりいくらかかり、例えば、5000発打ち上げる花火大会ではどれくらいの費用が必要でしょうか。
河野さん「1発いくらという計算はあまりしません。花火業者は、花火そのものや人件費、交通費などを合わせて打ち上げ一式を請け負います。花火の大きさや仕掛けが大会ごとに違うので、総額も一概にはいえませんが、5発くらい上げる運動会のような小規模なものなら数万円、数千発規模の花火大会なら数千万円になります。警備費用などは別です」
Q.花火大会の費用は誰が出しているのでしょうか。
河野さん「花火大会は一般に、各地の商工会議所や観光協会、自治体などが実行委員会をつくって運営している場合が多いです。費用は主催団体が出す他、スポンサー企業が出して、企業名を打ち上げる前にアナウンスしたり、プログラムに載せたりしています。寄付を募って開催する場合もありますし、『市民協賛席』という形で有料席を設けて費用の一部を賄う大会もあります」
Q.花火大会の目的は。飢饉(ききん)犠牲者の鎮魂で行われたという話も聞いたことがあります。
河野さん「そういう花火も確かにありますが、現在の多くの花火大会は集客と経済効果が目的です。何十万人と集まりますので。コンサートだと5万人くらいで、桁違いの人数が動くわけです。交通機関や飲食店、宿泊施設、商業施設などが潤います。花火は老若男女を問わず楽しめるので、さまざまな人が訪れるという面もあります」
Q.雨が降っても花火大会を決行するときがあります。雨に濡れてもしけないのでしょうか。
河野さん「通常は『小雨決行』です。準備しているときに土砂降りだったら無理ですが、多少の雨ならテントを張ってその中で準備をして、防湿用のアルミ箔などを使ったシートと、ビニールシートを2重にかぶせて雨を避けます。着火は今、『電気導火線』というものを使っているので、打ち上げるときに雨が降っていても大丈夫です」
Q.打ち上げ直前にシートを外すわけですね。
河野さん「いいえ、そのまま打ち上げます。打ち上げ用の火薬の圧力でシートを打ち抜きます。そういう流れで打ち上げ自体は雨が降っても大丈夫ですが、激しい雨の場合は客の安全上の問題などから、主催者が延期や中止を決める場合があります。また、風は雨よりも問題で、火の粉が大きく流れるような強風が予想されたら延期や中止になることが多いです」
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