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けがから転落が始まった50代男性…現役世代「孤独死」の背景にあるセルフネグレクト

離婚も孤独死の大きなリスクに

 孤独死する人の中には、かつては結婚していた痕跡がある人も多く見受けられます。特殊清掃現場からは、頻繁に子どもの写真が見つかります。写真の持ち主は、ほとんどが男性です。金銭トラブルやDVなど、きっかけはさまざまですが、離婚後の男性は孤立しやすいといえます。

 50代後半の男性は、金銭トラブルがあり、離婚後、妻子が家を出て行ったことをきっかけに転落が始まりました。一戸建ての家は荒れ果て、仕事でも不振が続き、離職。かつてのマイホームは、近隣の人も誰が住んでいるか分からないというほどに荒れ果て、その中で男性はもがくような姿で息絶えていました。部屋にはハエのさなぎが床一面に散らばるなど無残な状態。

 こうした場合、遺族が故人に良い感情を持っていないことも多く、故人に遺産がないとさらに悲惨で、露骨に相続拒否されることもあります。遺族と生前の故人の関係性が、最期の瞬間に現れるのは間違いありません。

 一般社団法人日本少額短期保険協会・孤独死対策委員会が発表した「第4回孤独死現状レポート」によると、孤独死者の8割が男性とされています。取材をしていても、男性は離婚後に元妻や子どもと連絡を取ることが減り、仕事だけが社会とつながる接点になっている人が多いです。そのため、自分の身辺を気遣ってくれる身内や友人がおらず、何日も遺体が放置されて見つからない…という事態に陥りやすいのです。

 孤独死を完全に防ぐことはできませんが、民間の孤独死保険が登場したり、無料通話アプリ「LINE」で見守りを行うNPO法人が現れるなど、少しでも孤独死をなくしたり、せめて早く見つかるようにしようという動きもあります。孤独死は私たち一人一人の問題であるということを認識すると同時に、国も高齢者だけでなく、現役世代の孤独死の実態調査に一日も早く乗り出してほしいと思います。

(ノンフィクションライター 菅野久美子)

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菅野久美子(かんの・くみこ)

ノンフィクションライター

1982年、宮崎県生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。出版社の編集者を経て、2005年よりフリーライターに。単著に「大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました」(彩図社)、「孤独死大国」(双葉社)などがある。また「東洋経済オンライン」などのウェブ媒体で、孤独死や男女の性にまつわる記事を多数執筆中。最新刊は「超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる」(毎日新聞出版)。

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