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けがから転落が始まった50代男性…現役世代「孤独死」の背景にあるセルフネグレクト

孤独死の件数が年々増え続けています。半数以上は65歳未満という調査もあり、孤独死は現役世代にとって人ごとではありません。

現役世代も孤独死と無縁ではない
現役世代も孤独死と無縁ではない

 日照時間が少なく、夏にしては肌寒かった7月から一転、梅雨明け後は日本各地でジリジリとした暑さが続いています。暑くなってくると、件数が急増するのが孤独死です。一人部屋でひっそりと亡くなって誰にも発見されない孤独死の件数は、年々増え続けています。特に、孤独死の半数以上が65歳未満といった調査結果も報告されており、孤独死は現役世代にとって、決して人ごとではありません。

誰にでもある「人生のつまずき」

 内閣府は6月18日、2019年版の「高齢社会白書」を閣議決定しました。この白書の中で孤独死についての統計があり、孤独死の数が過去最多を記録したことが明らかになりました。

 東京23区内における、一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数は、2017年に3333人。前年は3179人で、それを上回り、孤立死と考えられる事例が多数発生しているとしています。また、この統計によると、2003年の1451人から、倍以上になっていることが分かります。

 この統計は高齢者に限ったものですが、若年者も含む現役世代まで範囲を広げると、恐るべき数字が割り出されるのではないでしょうか。

 現に、亡くなった人の部屋の原状回復を手掛ける特殊清掃業者は、他業種からの新規参入が相次ぎ、毎年増え続けています。皮肉なことに、孤独死の増加による「孤独死バブル」という状況が業界で巻き起こっているのです。そして、その中心は65歳以下の孤独死です。筆者が取材した中には、30代、40代の若年者も決して珍しくありません。

 では、なぜ、働き盛りの現役世代が孤独死してしまうのでしょうか。取材を通じて、孤独死した人の人生をたどってみると、そこにあるのは誰にでも起こる、ふとした「人生のつまずき」です。

 例えば、孤独死して1カ月間見つからなかった50代の警備員の男性は、ある日仕事で片足をけがしてしまい、そこから人生の転落が始まりました。男性は仕事を休まざるを得なくなり、その結果、家にひきこもるようになりました。次第に悪くなっていく体のことを誰にも相談できず、精神的に追い詰められていきます。地方の実家に住む両親にはとてもこんなことは言えない――。

 男性は自暴自棄になり、ごみをため込むようになって、不衛生な生活を送るようになります。そして、次第に体は弱っていき、衰弱死してしまったのです。男性は、セルフネグレクト(自己放任)に陥っていました。これは緩やかな自殺行為で、自分で自分を死に追いやるような行為です。

 また、スキーやゴルフが趣味だった40代後半のサラリーマンの男性は、ある日、趣味のスポーツでけがをしたことで一気にセルフネグレクトに陥ってしまいました。男性は10年前までは明らかにアクティブで、休日にスポーツをおう歌していました。ごみの後ろに隠れていたタンスからは、勤めていた職場で使用していた大量の高級ネクタイが100本以上も見つかりました。

 しかし、ここ数年で松葉づえをつくような生活に急変し、それがきっかけで離職。その後、部屋にひきこもるようになり、最後はごみに埋もれた中で亡くなっていました。

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菅野久美子(かんの・くみこ)

ノンフィクションライター

1982年、宮崎県生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。出版社の編集者を経て、2005年よりフリーライターに。単著に「大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました」(彩図社)、「孤独死大国」(双葉社)などがある。また「東洋経済オンライン」などのウェブ媒体で、孤独死や男女の性にまつわる記事を多数執筆中。最新刊は「超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる」(毎日新聞出版)。

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