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壁に目張り、フロアに死臭…歩き続ける「孤独死」の現場、見えてきた社会の闇

社会問題となっている「孤独死」を取材し続けてきた筆者が、このテーマにこだわり続ける理由をつづります。

身近な問題となった「孤独死」
身近な問題となった「孤独死」

 ジリジリと太陽が照りつけるような夏があっという間に終わって、日に日に冷え込むようになり、冬がやってこようとしています。事故物件などの清掃を行う特殊清掃業者が、一息つく季節がやってきました。暑さが和らぐにつれて、その最も多くを占める「孤独死」の案件が少なくなるからです。筆者は今年の夏も数多くの孤独死現場を取材しました。

2015年、大島てる氏との出会い

 筆者が孤独死に関心を持ったのは、俗に事故物件といわれる、人が自室で亡くなった物件の取材を始めたのがきっかけでした。2015年、事故物件公示サイトを運営する大島てる氏と出会い、一緒に事故物件を巡って本を書くことになりました。当初、事故物件にはおどろおどろしいイメージがあり、心霊現象が起きるのではないか、臭いに耐えられるだろうか、そんな複雑な思いを抱いていたのも事実です。大島氏から情報を得て、東京都江東区の物件に向かいました。

 1軒目は、築50年以上のマンションでした。幸いなことに臭いはなかったものの、壁全面に目張りがしてありました。2軒目のマンションは、エレベーターを降りた瞬間に、フロア全体に何とも言えない甘ったるい油のようないわゆる「死臭」が漂っていました。2件とも孤独死でした。

 特殊清掃業者に聞くと、事故物件のほとんどはやはり、自殺でも殺人でもなく孤独死だそうです。孤独死は決して珍しいことではなく、夏場はこのような孤独死の清掃に日常的に追われているということが分かりました。事故物件を通じて、孤独死のあまりの多さに驚きました。壁一枚隔てた部屋で遺体が腐り、何日も見つからない。ジワジワと日本社会を侵食しつつあるその実態を、世の中に伝えたいと思うようになりました。

 ある日、こうした事故物件を専門に取り扱う不動産業者と関東近郊のマンションを訪ねました。亡くなった男性は、犬と猫計7匹と暮らしていました。

 男性は死後半年もの間、発見されませんでした。築1年の高級マンションで、親の遺産で高級車を乗り回し、何不自由のない暮らしをしていました。しかし、近隣住民や友人知人、親族との付き合いはほとんどなく、孤立していた状況がうかがえました。管理人も規約を超えるペットがいることにうすうす気付いていたものの、「関わりたくない」と、特に話すことはなかったといいます。

 その後、筆者は数えきれないほどの事故物件を訪れ、ご遺族に話を聞きました。すると、離婚をきっかけに本人と疎遠になっていたり、仕事を辞めたことをきっかけにひきこもっていたり…という事例が多いことに気付きました。勤め先で理不尽なパワハラを受けたり、ブラック企業だったりして、失業や休職をしてうまくいかずに家にひきこもってしまう。その結果、自暴自棄になり生活が荒れ果て、ごみ屋敷やモノ屋敷になっている家もありました。

 介護保険などがある高齢者ではなく、40、50代で若くして孤独死する人も多く、そのほとんどが「人生で何らかのつまずいた経験」のある人たちでした。彼らはセルフネグレクト(自己放任)という、いわば「緩やかな自殺」の状態で亡くなっていました。

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菅野久美子(かんの・くみこ)

ノンフィクションライター

1982年、宮崎県生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。出版社の編集者を経て、2005年よりフリーライターに。単著に「大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました」(彩図社)、「孤独死大国」(双葉社)などがある。また「東洋経済オンライン」などのウェブ媒体で、孤独死や男女の性にまつわる記事を多数執筆中。最新刊は「超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる」(毎日新聞出版)。

コメント

1件のコメント

  1. アルファー幸徳有限会社(賃貸物件管理会社)の阿南と申します。
    これから更に増加すると考えられる孤独死を早期にキャッチできる管理システムを開発しようと考えております。単身入居者が水道水を利用した事を、水道の配管や個別メーターで情報としてキャッチして管理会社の送るシステムです。水道の利用がない場合に安否を確認するシステムです。良かったら、ご協力ください。