「7pay」不正で3240万円被害…決済サービス巡る消費トラブルの回避策&対処法とは
スマホ決済サービス「7pay」が不正アクセスを受け、第三者に不正利用される被害が相次ぎました。消費トラブルに遭遇した際の対処法とは――。

コンビニ大手セブン-イレブンで7月1日に始まったスマホ決済サービス「7pay(ペイ)」が不正アクセスを受け、第三者によって不正利用される被害が相次ぎました。後に、ショートメッセージにパスワードを送って本人確認をする「2段階認証」を導入していなかったことが判明し、セキュリティーの不備が問題視されています。セブン&アイ・ホールディングス(東京都千代田区)は、11日時点で1574人(被害総額約3240万円)の被害を認定しています。
報道によると当初、一部被害者がコールセンターに問い合わせた際、「警察に被害届を提出してもらわないと補償できない」などと返答。その後、「7pay」の運営会社は記者会見で「被害に遭ったお客さまには、すべての被害に対して補償する」と発表しましたが、仮に企業側の不手際があった場合でも、被害者に警察へ被害届を提出させるのは正しい対応といえるのでしょうか。
消費トラブルに遭遇した際の対処法などについて、消費生活アドバイザーの池見浩さんに聞きました。
今回、直接の被害者はセブン側
Q.企業側の不手際で損害を被った場合、被害者が警察に被害届を出さなければならないのでしょうか。
池見さん「7月4日付の新聞記事でセブン・ペイの小林強社長の会見コメントを見た限りでは、『利用者から警察署に被害届を出してもらう』と言及しています。しかし、セブン側の公式サイトではそのような説明はありませんでした。また、私が7月12日に7pay特設コールセンターに問い合わせたところ、『今回、刑事事件として警察に被害届を出すべき立場は、不正アクセスを受けた7Payであり、利用者が警察に被害届を提出する必要はない』と返答されました。
私の推論ですがセブン側は当初、利用者に被害届を出させる考えで進めていたところ、2段階認証の不備などシステムの脆弱(ぜいじゃく)性が確認されたため対応を変更した可能性が考えられます。なお、今回の被害者が、個別に被害届を出すかどうかの問題で一方的に不利益を被っている事実が確認できない限り、仮に被害届を出させようとしていたとしても、同社の対応に問題はないと思われます」
Q.企業側の不手際で利用者が損害を受けても、補償されないケースはあるのでしょうか。
池見さん「今回のケースに限りませんが、損害を受けた事実を利用者側で立証できない場合、補償されない可能性はあり得ます。近年、個別にクレジットカードや金融機関、各種決済手段を不正利用されたというトラブルが多発していますが、例えば、クレジットカードの個人情報流出事件が報道発表されたとしても、そのカード会社のすべての契約者が補償対象になるわけではありません。利用者側が、実害が発生した旨やその根拠を申し出た上で、その事実が認定されなければ補償されません。
なお、企業側に被害回復を求める場合、一般的に被害届の受理番号の提出を求められます。事件性があると公的な確認がなされた証拠になり得るからです。受理番号は被害届が警察に受理された段階で発行されます。また、名義貸しや別アカウント利用など、そもそも利用規約に違反している使い方をしている場合は、補償対象にならない可能性が高いといえます」
Q.被害に遭ったにもかかわらず、警察が被害届を受理しないケースはあるのでしょうか。
池見さん「被害届を申し出ること自体は誰でも可能ですが、受理するかどうかは警察の判断によります。必ずしも、届け出を受理しなければならないわけではありませんから、単なる相談記録として残される場合も多くあります。被害届の受理番号は、警察が一定の事件性などを勘案して被害として受理した証拠になりますので必ず保管することが大切です。
また、今回の事例で考えると、犯人から不正アクセスされ、利用者から預かった価値を盗まれた直接の被害者はセブン側です。『7pay』の利用者は犯人から直接被害を受けてはいません。つまり、警察に被害届を提出し、『犯人を捕まえてくれ』と主張できる立場にあるのはセブン側です」
Q.今回は、セブン側が利用者に被害額を全額補償するということですが、もしセブン側が一向に補償をしなかった場合、被害者はセブン側を相手に訴訟を起こすことは可能なのでしょうか。
池見さん「補償を求める民事訴訟に関しては、原告として立証できるのであれば、誰でも裁判所に提訴することは可能です。しかし、判決は裁判官の判断なので、必ずしも勝訴して補償されるとは限りません。同じような訴訟内容であっても、裁判によって判断が異なる場合があるからです。提訴を検討する場合は、相応の事実確認と自身の主張の立証が必要です。弁護士の法律相談を受けてから判断した方がよいでしょう。
また、『セブン側が補償しない場合の法的な処罰』とのことですが、補償は民事の問題であり、基本的に補償するか否かは個別間企業の自由裁量によります。補償しないからただちに違法とはいえません。刑法では、補償しない場合に刑罰を与える法律はないので、処罰される可能性はないと言えます。
一方、前払いチャージの決済は資金決済法で規制されています。管理体制や苦情処理に何らかの不備や改善必要事項がある場合は、法律を所管する金融庁が『法的な処罰』ではなく、業務改善命令などの行政処分を行う可能性はあります。ただし、被害者へ個別に補償させることはありません」
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