オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「性欲は?」にも正直に回答 原田龍二さんの不倫謝罪会見、プロは何点をつける?

不倫問題で謝罪会見を開いた原田龍二さんの姿勢について、賛否両論が起きています。「正直過ぎる回答」を広報の専門家はどう見たのでしょうか。

原田龍二さん(2005年9月、時事)
原田龍二さん(2005年9月、時事)

 週刊誌報道により、2人の女性との不倫関係が明らかとなった俳優の原田龍二さんが、5月31日に謝罪会見を行いました。記者から際どい質問を受けても、自分の言葉で正直に答える原田さんの様子が伝えられ、SNS上では「女性の敵」「子どもが気の毒」などと厳しい意見が上がる一方、「憎めない人」「あそこまで素直だと応援したくなる」といった好意的な声が上がっています。

 確かに、謝罪会見では“誠実さ”が求められますが、記者の質問に、素直にありのままを話すのは正しい対応といえるのでしょうか。広報コンサルタントの山口明雄さんに聞きました。

うそは騒動を拡大させる

Q.原田さんは「(性欲は)強いのか」「性欲は抑えられそうか」など記者から際どい質問を受けても、言葉を濁さず正直に返答している印象がありました。例えば、企業や官公庁が謝罪会見を行った場合、記者からの質問に対しては内容を問わず、正直に答えた方がよいのでしょうか。

山口さん「企業の場合、答えられない部分については、はっきりと回答を断るべきだと助言しています。ただし、断る前に答えられない理由を短い言葉で説明することが不可欠です。例えば、『個人情報に関わることですので』『私たちの業界は競争が厳しく、大切な技術秘密や営業秘密に関わりますので』『原因は、警察と監督官庁が調査しておりますので』などです。そうしないと、尊大、無礼、あるいは隠蔽(いんぺい)しようとしているという印象を与えます。

官公庁も同様ですが、『国民のしもべ』だとすれば、答えられない理由が誰にも納得できるものでないと、忖度(そんたく)や隠蔽だと疑われてしまいます。なお、性欲に関する原田さんへの質問は、今回の不倫騒動の核心に関わる質問なので、避けては通れなかったと思います。原田さんが素直に認めて回答した点はよかったと思います」

Q.謝罪会見の注意点は。

山口さん「何よりも素早い対応が大事です。会見が開かれるまでの間に、調査報道や推測ニュースが続出、氾濫することで、メディアやネットの考えが定着してしまうため、会見は早めに開くべきです。謝罪会見では、被害者、関係者、家族、国民への真摯(しんし)なおわびの言葉で口を切るべきですし、質問には誠実な受け答えが大切です。

会見時に絶対にやってはいけないことは、うそをつくことです。ベッキーさんが行った『友達で押し通そう』の対応は第2弾砲、第3弾砲のさく裂を招きました。記者はうそを暴いてなんぼの職業です。うそをつくことで、記者に続報を書く機会を与え、結果的に騒動を拡大させ、長引かせ、当事者の顔に泥を塗ってしまいます。

企業の謝罪会見では、時として当事者意識の欠如が問題となります。例えば、データの偽装や完成車検査の不正が40年も前から行われていた場合、トップの説明に『自分は直接手をくだしていない』というようなニュアンスが見え隠れすると、謝罪どころか反発を招く結果となってしまいます。登壇者は『評論家』になってはいけないと私は常に助言しています」

Q.謝罪会見の注意点の中で、例えば、企業同士や個人同士でトラブルが発生した際の謝罪に応用できるものはありますか。

山口さん「『素早い対応』『被害者・相手側の気持ちを思いやり真摯に謝罪する』『今できること、今後の再発防止策をきちんと話すこと』。これらは、どんな謝罪にも共通します。通常の謝罪では、損害賠償の意向についても話す必要があります。

一方、謝罪会見の場合、第一義の相手は読者や視聴者、すなわち国民で、『ブランドを守っている』『ひどい芸人だ』『ひどい企業だ』などの印象を世間に与えないようにすることが主な目的です。従って、『世間をお騒がせした』というようなあいまいな謝罪をするのではなく、『具体的に何がどのように悪かったのか』『世間の批判を浴びた理由をどう受け止めているか』『同じ事を繰り返さないためにどうしようと思っているか』などをきちんと話すことが肝要です」

Q.笑いのネタにされた印象もありますが、原田さんは謝罪会見を行って正解だったのでしょうか。

山口さん「週刊誌に不倫を報道されたら、芸能人にとって会見を行わないという選択肢はないと思います。先日、お笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志さんが、『素直に認めたのにもかかわらず、番組が差し替えとかになると聞くと、最後までしらばっくれたほうが得なのか』と疑問を呈したという記事を読みました。しかし、釈明をしないと、ネットや週刊誌、スポーツ紙などの調査・推測報道はますますヒートアップし、仕事への悪影響はもっと拡大したのではないかと思います。

原田さんが笑いのネタにされているのは、報道された不倫の内容が、性欲のはけ口をファンに求め、『お手軽』な場所でことを済ませたというお粗末さに対してでしょう。奥さんから『ビョーキ』『馬鹿!』と言われ、昨年出演したダウンタウンの大みそかの特番のフレーズにかけて『原田、アウト!』と怒られたなどの話は、自ら自虐ネタをまいているように思えました」

1 2 3

山口明雄(やまぐち・あきお)

広報コンサルタント

東京外国語大学を卒業後、NHKに入局。日本マクドネル・ダグラスで広報・宣伝マネージャーを務め、ヒル・アンド・ノウルトン・ジャパンで日本支社長、オズマピーアールで取締役副社長を務める。現在はアクセスイーストで国内外の企業に広報サービスを提供している。専門は、企業の不祥事・事故・事件の対応と、発生に伴う謝罪会見などのメディア対応、企業PR記者会見など。アクセスイースト(http://www.accesseast.jp/)。

コメント