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園児置き去り死の会見で“笑顔”に批判殺到…園側の態度について、広報のプロに聞く

静岡県牧之原市で9月5日、通園バスに置き去りにされた女児が死亡した事故を巡り、園が記者会見を開きました。この会見について、広報の専門家に聞きました。

記者会見で説明する「川崎幼稚園」の増田立義園長(当時、左)ら
記者会見で説明する「川崎幼稚園」の増田立義園長(当時、左)ら

 静岡県牧之原市で9月5日、通園バスに置き去りにされた女児が死亡した事故を巡り、園が9月7日に記者会見を開きました。責任者であり、当日バスを運転していた理事長兼園長(当時)が笑ったように見える場面があるなど、ネット上では大きな批判の声が上がっています。この会見について、広報コンサルタントの山口明雄さんに聞きました。
(※以下、肩書はいずれも記者会見当時のものです)

不謹慎な「ひとごと」会見

Q.会見中、理事長兼園長が笑ったように見える場面がありました。どのように受け止められますか。

山口さん「不謹慎だと思います。理事長兼園長は、自分の『言い訳』に対して、たびたび笑っていました。例えば、記者から(園長の声が)『聞きづらい』と言われると、『この頃睡眠不足で、年齢も年齢ですから(と笑い)、ガラガラ声になっているのが現状です』と言い、笑顔を見せるといった具合です。

100%自分たちの落ち度で、3歳の子どもを“熱地獄”の中で死なせてしまったのです。園長は、この記者会見をどんな場と思っているのか聞いてみたいと思いました」

Q.副園長も笑ったように見える場面がありました。

山口さん「登壇者全員同様でしたが、特に副園長の態度は、『はしゃぎ回っている』ように見えました。たびたび笑顔を見せましたが、時には『うふふ』と声を上げて笑っています。『ちゃんと伝えられるほど覚えていないわ』と声を上げて笑い、厳しい質問に答えた後も笑っています。

また、両手でマスクの口辺りや顔全体を覆うしぐさを何度もしています。『こんな質問が出るなんて驚いたわ』とか、『これ以上追及しないで』と言っているように私には思えました。

テレビカメラの前での『打ち合わせ』を主導したのも副園長です。身ぶり手ぶり豊かに、園長や弁護士とこれから回答する『正式なコメント』を笑顔で議論し、決めたのです。

『副園長は何でこんなにテンションが高いんだろう?』との投稿がネット上でありました。私も同じ疑問を抱きました。緊張のためだけとは見えず、『このような人に子どもたちが預けられていたのか』と、言いようのない不安を抱きました」

Q.園児の名前を間違えたと取れる場面もありました。

山口さん「『ちなつちゃん(正しくは、千奈ちゃん)がどの子であるか、入園して間もないもので、僕は把握していません。担任から、この子がちなつちゃんだよ、と聞いていません。クラス全体のことは、担任から聞いて把握しています』と園長は話しています。幼稚園全体の経営は自分の責任だが、園児一人一人については、責任は持てないと言いたいのでしょうか? 実際、そう思っているのでしょう。死なせてしまった子の名前さえ覚えられないのですから」

Q.「説明がひとごとのよう」との批判もネット上では出ています。その他の点も含め、今回の会見について感想をお聞かせください。

山口さん「指摘通り、謝罪の気持ちが伝わらない『ひとごと』会見だったと思います。それだけではなく『人のせい』にしているように聞こえるコメントが気になりました。

『なぜ園長が代行運転したのか、それができる職員が他にいないのか』という質問に対して、『給食の担当者も、保育士も、運転手も、探すのが大変。どこでもそうだと思う。いい人をご存じであれば、紹介していただきたい』との趣旨の回答を園長はしています。求人難が事実であっても、この場で、このような回答をするべきではないと思います。『責任回避』『ひとごと』『人のせいにしている』と思われてしまいます」

Q.今回のような重大事故での会見は、どのようなものであるべきでしょうか。

山口さん「『目は口ほどにものを言う』ということわざがありますが、記者会見では、目や顔の表情とジェスチャーが、記者や視聴者の心にさまざまな感情を呼び起こします。受け取り方は視聴者個人で大きく異なり、口から出る言葉より、はるかにインパクトが大きいとの調査もあります。

お通夜やお葬式ではしゃぎ回ったり声を上げて笑ったりする人は、まずいないと思います。謝罪会見も厳粛な場であると、登壇者は認識すべきです。ほほ笑んだり笑ったりせず、不動の姿勢を保ち、ジェスチャーは控えるべきです。

また、記者会見中に、テレビカメラの前で、登壇者同士で回答のコメントを打ち合わせて決めるという行動は、『言い訳会見』、『ひとごと会見』の表れと受け取られてしまいます。事前に、登壇者の間でしっかりコメントの準備をするべきです」

(オトナンサー編集部)

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山口明雄(やまぐち・あきお)

広報コンサルタント

東京外国語大学を卒業後、NHKに入局。日本マクドネル・ダグラスで広報・宣伝マネージャーを務め、ヒル・アンド・ノウルトン・ジャパンで日本支社長、オズマピーアールで取締役副社長を務める。現在はアクセスイーストで国内外の企業に広報サービスを提供している。専門は、企業の不祥事・事故・事件の対応と、発生に伴う謝罪会見などのメディア対応、企業PR記者会見など。アクセスイースト(http://www.accesseast.jp/)。

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