福祉は申請主義、言わなきゃ何も得られない…自閉症児の母が実感した、知らなきゃ損する支援制度のリアル
福祉における残酷な地域差

また、障害児福祉は、自治体によって情報提供や支援の積極性に差があると感じています。
そのことを強く実感したのは、息子が4歳のときに別の自治体へ引っ越したときでした。
引っ越し先の自治体の発達支援センターに息子を連れて相談に行ったところ、担当の先生から「手帳は持っていますか?」と聞かれたのです。しかし当時の私は、「手帳」が何を指しているのか分からず、ぽかんとしてしまいました。無知だった私はそこで初めて、「障害者手帳」の存在を知ることになりました。
さらに先生からは、「このくらいの発達状況のお子さんなら、何の等級もつかないということはまずないと思います」と言われ、私は大きな衝撃を受けました。息子には、そこまで明確な障害があるのだということ、そして、それほど支援が必要な状態であったにもかかわらず、それまで住んでいた自治体では誰からも障害者手帳について説明を受けていなかったからです。
もちろん、どの自治体も限られた人員の中で対応していると思いますし、こちらが聞かなければ案内しきれない事情もあるのでしょう。うかつに「障害」などと口にして、親御さんを不快にさせたり、頑なにさせたりして余計に福祉から遠ざけてしまう可能性もある、非常にナイーブな問題だと思います。
しかし、親側に知識がなければ、制度そのものの存在に気付けないことがあるのもまた問題だと思っています。
息子はその後、児童相談所に行き、東京都で知的障害がある人に発行される「愛の手帳」を取得しました。
当時は3度(中度)判定でしたが、手帳を持ったことでさまざまな制度を利用できるようになりました。
交通機関の割引、各種助成制度や手当、ヘルパーの利用やショートステイといった支援サービスなど、それまで知らなかった制度が一気につながっていったのです。
都立公園の駐車場や一部のレジャー施設の割引制度が利用できるようになり、息子を連れたお出掛けがしやすくなりました。
さらに息子の特別支援学校入学後、手帳の更新で2度(重度)判定になると、受けられる支援はさらに増えました。新たに申請できる手当も増え、経済的にも助かりましたし、タクシー利用券がいただけたこともありがたかったです。
その頃、私は病気を患い、車の運転ができなくなってしまいましたが、息子は成長とともに自閉症の特性が強く出るようになり、体も大きくなったので、タクシー移動はなくてはならないものでした。
障害児育児は「情報戦」…自分で動いて支援を取りにいこう
障害児育児は、健常児の子育て以上に、お金も体力も必要になる場面があります。通院や療育、送迎など、移動も簡単ではありませんし、稼ごうにも親がフルタイムで働くことが難しくなるケースも少なくありません。
だからこそ、利用できる制度につながることは、生活を維持するために必要なことだと感じています。
ただそのすべては、自分で調べ、自分で申請しなければ始まりませんでした。役所の窓口へ行き、分厚いパンフレットをもらって、帰宅後に読み込んでまた調べなければなりません。
制度によって、窓口も役所とは限らず、交通機関だったり、税務署だったり、警察署だったり、いろいろです。そして必要書類を集め、判定を受け、更新時期を管理します。
障害児を育てながらそれを続けるのは、決して簡単ではありません。特に乳幼児期は、親自身が障害を受け止め切れていない時期でもあります。「様子を見ましょう」と言われれば期待してしまいますし、「障害」という言葉を受け入れることにも時間がかかるでしょう。
だからこそ私は、「障害があるかもしれない」と感じ始めた早い段階で、制度の存在だけでも知っておくことが大切だと思うのです。療育手帳、受給者証、特別児童扶養手当、障害児福祉手当、児童発達支援、放課後等デイサービスなど。名前だけ見ると難しく感じますが、実際には子ども本人だけでなく、家族全体の生活を支える制度でもあります。
情報を持っているかどうかで、親の負担は大きく変わります。障害児育児では、「知らなかった」が大きな不利益につながることもよくありますが、逆に言えば、知ることで救われることも多いです。
もし今、子どもの発達に不安を感じている保護者の方々がいるなら、「まだ診断がないから」と遠慮せず、地域の発達支援センターや自治体窓口に相談してみてほしいと思います。そして、分からないことはどんどん聞いてみてください。
障害児を小学6年生まで育ててきた私でも、いまだに受けられるのに知らなかった制度があり、去年初めて申請したサービスもありますし、要件が変わって受けられるようになったサービスもありました。
待っているだけでは必要な情報にたどり着けず、貴重な時間を無駄にしてしまいます。私自身、11年間の障害児育児の中で、「親が動くこと」の重要性を何度も痛感しました。
もしこの記事が、今まさに不安の中にいる親御さんにとって「まず調べてみよう」と思えるきっかけになれば、うれしく思います。
(ライター、イラストレーター べっこうあめアマミ)
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