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「メキシコ国境に壁」はウソ!? トランプ大統領は何を目指そうとしているのか

米大統領選に勝利し、世界に衝撃を与えたドナルド・トランプ次期米大統領。選挙戦では過激な発言や過去のスキャンダルから、その資質を疑われた同氏ですが、勝利後は一転、抑制的にも見えます。その“真意”はどこにあるのでしょうか。

大統領選に勝利し、その政策面に注目が集まるドナルド・トランプ氏

 11月8日の米大統領選で勝利し、世界に大きな衝撃を与えたドナルド・トランプ次期米大統領――。

 選挙戦では「メキシコとの国境に壁を築く」「北大西洋条約機構(NATO)は時代遅れ」などの過激な発言がクローズアップされ、「暴言王」のあだ名で呼ばれることも多かった同氏ですが、勝利後は一転、抑制的な物言いに終始しているように見えます。

 過激な言動は戦略や戦術だったのか、そして、同氏の“真意”はどこにあるのか。オトナンサー編集部では今回、国際政治学が専門の畠山圭一・学習院女子大学教授に話を聞きました。

「保護主義」「孤立主義」はクリントン陣営が作った

 畠山さんは大統領選に勝利するまでのトランプ氏の評価について、「そもそもメディアが(民主党候補の)ヒラリー・クリントン氏を持ち上げすぎていました」と断じます。

 マスコミが激しくトランプ氏を叩いているにもかかわらず、通常は差が開き始める選挙終盤の9月後半の世論調査でも支持率は拮抗しており、クリントン氏が苦戦を強いられることは一目瞭然だったといいます。

 トランプ氏の政策を語る上でキーワードになる「保護主義」「孤立主義」などの言葉も「クリントン氏が自らの『自由貿易主義』『国際協調主義』と対立させるために作ったネガティブワード」。トランプ氏の政策は本来、貿易・軍事ともに「国益優先主義」「不介入主義(国防力回復)」と表現されるものだそうです。

 畠山さんによると、トランプ氏の政策はそもそも、2008年大統領選で共和党大統領候補に名乗りを上げ、一時は共和党予備選挙をリードした故フレッド・トンプソン氏の政策と似ているそう。

 当時、トンプソン氏は党主流派の支持を得られずに終わりましたが、以前にもトランプ氏と同じ考えを持つ人がいたことを考えれば、「今回の結果はそこまで驚くべきことではありません」。

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畠山圭一(はたけやま・けいいち)

学習院女子大学副学長

早稲田大学卒。学習院大学大学院中退。ジョンズ・ホプキンズ大学研究員、メリーランド大学客員研究員、ジョージ・ワシントン大学客員研究員、北陸大学助教授、学習院女子大学助教授を経て、2002年から同教授。現在、同大学副学長。専攻は、国際政治、米国政治外交、日米関係。主著に「米国官僚組織の総て」「日米新秩序の構想」(以上、行研)、「アメリカ外交の軌跡」(共著・勁草書房)、「アメリカ・カナダ」(編著・ミネルヴァ書房)、「中国とアメリカと国際安全保障」(編著・晃洋書房)、「台頭するインド・中国」(共著・千倉書房)。訳書に「宗教と国家―国際政治の盲点」(共監訳・PHP研究所)、「ウルカヌスの群像―ブッシュ政権とイラク戦争」(共訳・共同通信社)など。

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