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「メキシコ国境に壁」はウソ!? トランプ大統領は何を目指そうとしているのか

「国境に壁」はメキシコを特定したものではない?

 それでは、トランプ氏の政策は一体どのようなものでしょうか。

 その主眼は「米国の国力をどう回復するか」。現職のオバマ大統領と民主党政権が行ったオバマケア(医療保険制度改革)などの高福祉政策を放棄し、製造業を活性化するための減税政策や富裕層の負担増を主張したことで、人種・性別を問わず、共和党を支持するブルーカラー層や中低所得層の大きな支持を獲得したといいます。

 米国の立場に注目が集まる環太平洋経済連携協定(TPP)ですが、畠山さんによると、選挙戦の当初こそ暴言を吐いていたトランプ氏ですが、共和党大会で発表された党の政策綱領(プラットフォーム)では「自由貿易反対」「保護主義」などとは言わず、「国益に資する通商交渉」を主張。

「TPP」の文字は消え、「重要な通商合意はレームダック議会では審議すべきでない」とあるだけだそうです。

「国境に壁」発言が物議を醸した移民政策については、犯罪歴のある不法移民を強制送還し、テロリストや麻薬・犯罪組織を入国させないとの主張で、しかも「メキシコ」と特定したわけではなく、内容は「意外とマトモ」。メディアが「壁」「ムスリム入国禁止」を煽りすぎた側面があるといいます。

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畠山圭一(はたけやま・けいいち)

学習院女子大学副学長

早稲田大学卒。学習院大学大学院中退。ジョンズ・ホプキンズ大学研究員、メリーランド大学客員研究員、ジョージ・ワシントン大学客員研究員、北陸大学助教授、学習院女子大学助教授を経て、2002年から同教授。現在、同大学副学長。専攻は、国際政治、米国政治外交、日米関係。主著に「米国官僚組織の総て」「日米新秩序の構想」(以上、行研)、「アメリカ外交の軌跡」(共著・勁草書房)、「アメリカ・カナダ」(編著・ミネルヴァ書房)、「中国とアメリカと国際安全保障」(編著・晃洋書房)、「台頭するインド・中国」(共著・千倉書房)。訳書に「宗教と国家―国際政治の盲点」(共監訳・PHP研究所)、「ウルカヌスの群像―ブッシュ政権とイラク戦争」(共訳・共同通信社)など。

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