母子家庭の子どもにお菓子 自身の体験もとに…奈良の僧による支援活動が5年で大きな輪へ
「どんな人も見捨てない」心で
「普通の生き方」をやめ、「ユニークな生き方」を求めて僧侶になった松島さん。今、思うことは「お寺の可能性を提示すること」だと語ります。
「全国に7万を超えるお寺があるといわれます。そのお寺が母子家庭の孤立解消の拠点になればと考えています。物理的にも精神的にもつながり、そして、見守りを提供する場所になれないか。お寺の可能性を提示したいんです。何かしたいと思っている人、社会問題に関心のある人が『そうか、あのお寺なら何かできるかも』と一番に思い浮かべてくれる、そんなお寺をたくさん作りたい。そう考えています」
若い頃、「お寺なんてつぶれてしまえ」と奈良を離れた松島さんが、回り道をして、たどり着いたのもお寺でした。おてらおやつクラブと仏教の関係について語るとき、松島さんは「仏様はどんな人も見捨てません」と話しますが、一度はお寺を嫌った松島さんをも、仏様は見捨てなかった、ということかもしれません。
2019年、おてらおやつクラブの活動は6年目に入ります。活動開始の頃から支援している、ある母子家庭の男の子から最近届いた手紙が、特に松島さんの印象に残っているそうです。
「『お坊さんへ。和菓子はもういいので、ポテトチップスをください』。自分がしたいこと、欲しいものを打ち明けられなかった男の子が、やっと子どもらしい姿を見せてくれた。それが本当にうれしかったんです。貧困問題の解決は難しいという現実がありますが、こうして一人の男の子が子どもらしく成長している。そんな姿を見られることが僕たち自身の励みにもなり、この活動を続ける大きな理由となっています」
松島さんの顔に、とても優しい笑みが浮かんでいました。
(オトナンサー編集部)
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