耳をカットされた猫…虐待ではなく、実は意義ある社会活動の一環 どんな取り組み?
耳に切れ目が入った野良猫を見かけたことはありませんか。それは虐待の痕ではなく、野良猫の地域問題を解決する取り組みの目印です。
2月22日は「2(ニャン)月、2(ニャン)2(ニャン)日」で「猫の日」です。世は空前の「猫ブーム」ですが、先日、ネット上で「耳がカットされた野良猫がいる。虐待では?」と話題になりました。調べてみると、事故や虐待ではなく、意味のある取り組みの一環のようです。誰が、どのような目的で猫の耳に切れ目を入れるのでしょうか。動物愛護の取り組みを行う公益財団法人どうぶつ基金(兵庫県芦屋市)理事長の佐上邦久さんに聞きました。
不妊・去勢手術を行う「TNR」とは
Q.なぜ、猫の耳に切れ目が入っているのですか。
佐上さん「猫の耳に入っている切れ目は、野良猫の不妊・去勢手術を行った目印です。この取り組みを『TNR』と呼んでいます。『T』はTrap(トラップ、捕獲すること)、『N』はNuter(ニューター、不妊・去勢手術)、『R』はReturn(リターン、猫を元の場所に戻すこと)の頭文字を取った造語です」
Q.なぜ「TNR」を行うのですか。
佐上さん「野良猫の繁殖を防ぎ、『地域の猫』として1代限りの命を全うさせることで、野良猫に関わる苦情の減少や殺処分される猫の減少につなげるためです。耳に切れ目を入れることで、『その地域の野良猫が管理されている』ことが可視化できます」
Q.どのような団体・人が「TNR」を行うのですか。
佐上さん「地域に密着した、動物愛護のNPOやボランティアが行います。これらの団体や個人が、まず野良猫を捕まえ、不妊・去勢手術を行う獣医師に引き渡します。そして、手術を終えた野良猫を再び引き取り、元の場所に戻すという流れです。NPOやボランティアだけでなく、最近は地方自治体も積極的に関わり始めました」
Q.対象は野良猫だけですか。
佐上さん「一部ですが、飼い猫でも不妊・去勢手術ができておらず、子どもが増えすぎて飼い主が対応しきれない場合、飼い主に代わって不妊・去勢手術を行い、耳をカットします」
Q.野良猫の耳に切れ目を入れる意味を知っている人は少ないのでしょうか。「虐待だ」と通報してくる人もいますか。
佐上さん「以前、テレビなどで報道され、『TNR』への認知度は上がっています。しかし、広く世の中に知られているかというと、まだまだそのレベルには達していないと思います。『虐待だ』と通報してくる人は、どうぶつ基金に対してはいません。通報されれば、耳をカットする背景や意味を説明し、理解してもらうつもりです」
Q.一文字やV字型など、切れ目には複数のパターンがあるようです。どのようなパターンがありますか。
佐上さん「耳の切り方は、団体により一文字にしたり、V字型(さくら型)にしたりと、ばらばらです。どうぶつ基金ではV字型に統一しています。切り方は角度が60~90度、幅は1センチ。V字型にしているのは、一文字型では猫の耳の毛が伸びてきたとき、カットされているのか見分けがつきにくいからです。雄は右、雌は左に切れ目を入れる場合もありますが、どうぶつ基金では、性別に関係なく右耳に切れ目を入れています」
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