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許せますか? 自宅への“アポなし訪問”に「玄関先なら」「非常識」と賛否、マナー講師に聞く

友人や知人による「アポなし訪問」の是非がネット上で話題になりました。マナーの専門家の見解とは。

アポなし訪問、あなたは許容できる?
アポなし訪問、あなたは許容できる?

 友人や知人による「アポなし訪問」について先日、ネット上で話題になりました。事前の約束や連絡などが一切ない状態で、友人や会社・学校関係の知人などに突然自宅を訪問された経験のある人は少なくないようです。

 アポなし訪問を「迷惑」だと感じる理由として、「家の中が片付いていない」「来客を迎える準備がない」「化粧や服装が来客に対応できる状態でない」を挙げる人も多く、ネット上では「本当に迷惑」「非常識」「居留守を使ったことある」「身内なら許せる」「玄関先までなら大丈夫」など、さまざまな声が上がっています。

「アポなし訪問」の是非について、マナーのプロの見解とはどのようなものでしょうか。「マナーは互いをプラスにするもの」をモットーに、国内外の企業や大学などで人財育成教育やマナーコンサルティングを行うほか、NHK大河ドラマなどのドラマや映画でマナー指導を行い、国内外で85冊以上のマナー本を出版するマナーコンサルタント・西出ひろ子さんに聞きました。

相手の立場に立ち、事前の連絡を

Q.マナー的観点からみて、知り合いの個人宅へのアポなし訪問はOKでしょうか、NGでしょうか。

西出さん「状況や相手との関係性に応じてその答えは変わりますが、知り合いの個人宅へ訪問する際には、事前に連絡をする方がよいでしょう。そのため、アポなし訪問は基本的にはNGといえます。マナーの大前提は『相手の立場に立つ』ということ。

事前に何の連絡もなく、突然自宅を来訪されたら、自分ならどのように思うかを考えてみるとどうでしょう。外出で家を不在にしていたり、予定のない休日に家でくつろいでいたり…そんな時に突然の来客があれば、戸惑う人はいらっしゃいますね。逆に言えば、自宅に伺う旨について事前に連絡があれば、訪問を受ける側は前もって予定を立てたり、身なりや部屋を整えたりするなど、準備できるということです。

たとえ、『来訪してくれること』自体がうれしい行為であっても、アポがなかったために会うことがかなわず、『連絡さえ入れておいてくれれば、ちゃんと会えたのに』と思うこともあるでしょう。アポのない突然の自宅訪問は、双方が残念な思いをする結果につながってしまいかねません」

Q.玄関先までであれば、マナー的にはどうでしょうか。

西出さん「『どうしても一目お会いしてごあいさつしたい』『取り急ぎ物品の手渡しだけをしたい』など、やむを得ない事情によって突然の訪問が必要となるケースもあるでしょう。相手との関係性やその状況などによりますが、玄関先や門の前でのみ、ごくわずかな時間だけ会うことを目的とした訪問であれば、アポがなくてもよいといえる場合もあります。ごくささいな用事のために前もって約束をすると、お互い事前に予定を立てておけるメリットはありますが、その分相手の時間を縛ってしまうことにもなるからです。

ただし、こうした訪問の形式は誰にでも通用するものではなく、相手との関係性に大きく左右されることを肝に銘じておきましょう。相手に不快な思いをさせる場合も十分にありうるので、注意が必要です」

Q.アポなし訪問を受けた際、どのように対応すればよいでしょうか。

西出さん「アポなし訪問を迷惑と感じる場合もあるかもしれませんが、『相手にも何らかの事情があるのかも』と相手の立場に立ってみる心の余裕を持てると素敵ではないでしょうか。そういう気持ちになることで、自身にストレスを感じさせないことにもつながり、お互いにとってプラスになります。

とはいえ、なかなかそのような気持ちになれない場合、まず大事なことは、突然の来客に驚いたり戸惑ったりしたとしても、露骨に嫌な顔や表情をするのは控えることです。関係性によっては、『驚いた』などの旨を正直にお伝えしてもよいと思います。訪問する側/される側のそれぞれが意識するべきポイントは次の通りです」

【訪問する側】

 アポなしで自宅を訪れる際には「相手が在宅しているとは限らない」ことを念頭に置いておく必要があります。もし遠方から急遽(きゅうきょ)訪問した場合に不在だった場合は、ポストにちょっとしたメモを残しておくのもよいでしょう。

 基本的にアポなし訪問はNGのため、アポがないにもかかわらず家に上げてもらおうとするのは「ずうずうしい」「失礼だ」などと思われても仕方のないことです。「せっかく訪れてくれたから」と、厚意で家に上げていただけるケースもあるかとは思いますが、「玄関先に入れていただけるだけでもありがたいこと」だという気持ちを持つことが、マナーとして大切なことです。

 また、よく「散らかっていても気にしないから!」と言う人がいますが、「家や部屋が来客を迎えられる状態でない」ことを最も気にするのは訪問を受ける側です。こうした発言はマナーがないと言われても仕方のない、自己本位な言動といえます。

【迎える(訪問を受ける)側】

 約束やアポのない時に突然の訪問を受けると、驚いたり困惑したりする人が大半でしょう。さまざまな事情で、突然の来客を家に上げることができない場合も多いと思いますが、「本当は家に上がってほしいけど、今はとてもそんな状況ではない」旨を説明し、「『あなたのことが嫌だから上げたくない』というわけではない」ことを伝えられるとよいですね。

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西出ひろ子(にしで・ひろこ)

マナーコンサルタント、マナー解説者、美道家

ヒロコマナーグループ代表。一般社団法人「マナー&プロトコル・日本伝統文化普及協会」代表理事。大妻女子大学卒業後、国会議員などの秘書職を経て、マナー講師として独立。マナーの本場英国へ。オックスフォードにて、オックスフォード大学大学院遺伝子学研究者のビジネスパートナーと2000年に起業し、お互いをプラスに導くマナー論を確立させる。帰国後、名だたる企業300社以上にマナーコンサルティングなどを行い、他に類を見ない唯一無二の指導と称賛される。その実績はテレビや新聞、雑誌などで「マナー界のカリスマ」として多数紹介。「マナーの賢人」として「ソロモン流」(テレビ東京)などのドキュメンタリー番組でも報道された。NHK大河ドラマ「龍馬伝」をはじめ、NHKドラマ「岸辺露伴は動かない 富豪村」、映画「るろうに剣心 伝説の最期編」などのドラマや映画、CMのマナー指導・監修者としても活躍中。著書は28万部突破の「お仕事のマナーとコツ」(学研プラス)など監修含め国内外で100冊以上。「10歳までに身につけたい 一生困らない子どものマナー」(青春出版社)など子どものマナーから、ビジネスマナー、テーブルマナーなどマナーのすべてに精通。ヒロコマナーグループ(http://www.hirokomanner-group.com)。
※「TPPPO」「先手必笑」「マナーコミュニケーション」「真心マナー」は西出博子の登録商標です。

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