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「近所でされたら三重苦だよ」 自宅の庭でバーベキュー、近隣住民から「迷惑」噴出…弁護士が指摘する「違法になる基準」とは

ゴールデンウイークに自宅の庭や屋上でバーベキューをする予定の人はいませんか? 近隣の家への配慮が足りない場合、「違法」となってしまうかもしれません。弁護士が解説します。

「自宅の庭でバーベキュー」違法なの…?
「自宅の庭でバーベキュー」違法なの…?

 後半に入った2025年のゴールデンウイーク。残り少ない休みを利用して、家族や友人たちと自宅に集まり、庭や屋上でバーベキューをしようと考えている人もいるのではないでしょうか? しかし、自宅でのバーベキューは近隣住民に悪影響を及ぼす場合が少なくなく、実際に「煙が流れてきて本当に迷惑」「洗濯物に臭いがつくんだけど……」「1日中騒いでいて、正直うるさい」「近所でバーベキューなんかされたら、ニオイ・煙・騒音の三重苦だよ」といったトラブルの体験談が見受けられます。また、中には「いくら敷地内といっても、庭でバーベキューしていいの?」と疑問を持つ人も……。

 佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士は、自宅の敷地内で行うバーベキューをすることは「自由」であるとした上で、「損害賠償請求も含めたご近所トラブルに発展することはあり得る」と指摘します。自宅の敷地内で行うバーベキューに潜む法的なリスクについて、詳しくご解説いただきました。

「自宅の敷地内であれば何をするのも自由」とはいっても…

 自宅の庭や屋上などに集まってバーベキューを楽しむことについて、「自宅の敷地内なんだから何の問題もない」と考えている人は少なくないと思います。

 実際、自宅の庭や屋上などでバーベキューをすることは自由であり、法的な問題に発展することはほとんどないといってよいでしょう。所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益および処分をする権利を有する(民法206条)ため、自分の庭であれば、基本的にそこで何をしてもいいということになります。

 ただし、バーベキューをすれば当然、煙が出ますし、お酒が入って大声で騒ぐ人が現れたり、子どもがはしゃいで大声を出したりすることも考えられます。煙や臭い、音などは周囲の住民の迷惑になる場合があり、近隣住民から苦情がきて、ご近所トラブルに発展することは十分にあり得ます。

 自宅でバーベキューをしている家庭があり、隣家が煙や臭い、騒音などに悩まされた場合、法的手段としては、不法行為に基づく損害賠償請求をすることが一応、考えられます(民法709条)。いくら「自宅の敷地内であれば何をするのも自由だ」といっても、周囲にあまりに過大な迷惑をかけることは、法律上も許されないからです。

 損害賠償請求が認められるかどうかは、受忍限度(常識に照らして、我慢すべきレベル)を超えているか否かによります。バーベキューの実施頻度、時間帯、煙や騒音の程度、健康被害の有無や程度、煙や騒音を防ぐための工夫の有無……など、さまざまなことを総合的に考慮し、受忍限度を超えていると判断されれば違法となり、賠償責任が生じます。

 バーベキューの場合、毎日のように朝から晩まで行うことはあまりなく、多くはたまの休日、昼間の限られた時間などに行われるのではないでしょうか。「常識の範囲内」で行っている限り、多少、お隣がうるさいと感じたり、お隣の洗濯物に臭いがついてしまったりしたとしても、法的責任まで負うことはありません。

 とはいってもやはり、自宅でのバーベキューによって近隣トラブルを起こさないための心がけは必要です。

 自宅の敷地内でバーベキューを行う場面では、マナーを守り、できるだけ周囲の迷惑にならないよう心がけることが大切です。例えば、ご近所さんに、事前にバーベキューをやる日にちを伝えておき、後日、何か気になることがなかったか聞いてみると心遣いが伝わり、良好な関係につながります。

 また、バーベキューの際は、できるだけ隣家の物干しスペースから離れた場所で食材を焼くようにしたり、夜遅くまで行うことを避けたりするだけで、周囲への影響を抑えることができます。お互いを思いやり、気持ちよくバーベキューを楽しめるよう工夫しましょう。

(オトナンサー編集部)

佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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