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子どもが「スマホ」使うと“キレる子”に!? ルール決め以外に、親がすべき対策とは

子どもにスマホやタブレットを長時間使わせると、子どもが怒りっぽくなるといわれていますが、本当なのでしょうか。専門家に聞きました。

子どもにスマホやタブレットを長時間使わせると怒りっぽくなる?
子どもにスマホやタブレットを長時間使わせると怒りっぽくなる?

 子どもに動画を見せる際にスマホやタブレットを使う人がいます。長時間、スマホやタブレットを使わせると視力低下につながるだけでなく、子どもが怒りっぽくなるともいわれていますが、本当なのでしょうか。子どもにデジタル機器を使わせる場合、どのような取り組みが必要なのでしょうか。デジタル機器への依存を防ぐ方法も含め、英会話スクールやインターナショナルスクールなどを運営する、アライブ(名古屋市東区)代表の三井博美さんに聞きました。

視覚や聴覚が刺激され脳が興奮状態に

Q.そもそも、子どもが怒りっぽくなるのはなぜなのでしょうか。原因について、教えてください。

三井さん「子どもが怒る場合、いくつかの原因が考えられます。一般的に睡眠不足や空腹、疲労などの生理的な欲求不満が挙げられ、特に、子どもは生理的な欲求が満たされないときに感情のコントロールができなくなる傾向にあります。

また、家庭環境の問題や愛情不足、学校の友人とのトラブル、自分の思い通りにならない状況も怒りの原因になります」

Q.では、子どもにスマホやタブレットを長時間使わせると、子どもが怒りっぽくなるということでしょうか。

三井さん「怒りっぽくなると考えられます。近年、スマホやタブレットの長時間の使用が、子どもを怒りっぽくする原因の一つとして指摘されているからです。

また、脳科学上、デジタル機器を使うと視覚や聴覚などが刺激されて脳が興奮状態になるとされています。その結果、落ち着きを取り戻すのが難しくなり、それが怒りにつながりやすくなるのです。

特に、快楽やSNSなどの反応を期待することでドーパミンといった神経伝達物質が過剰に分泌されやすくなります。また、動画やスマホゲームなどの中には、過激な色の映像や急激な音の変化があり、継続的に使用することで興奮状態になってアドレナリンが出たり、ささいなことでイライラしたりしやすくなる可能性があります。

最近、当社が運営する子ども英会話教室でも、普段は落ち着いている子どもが授業中にタブレットを使ったときに、操作がうまくいかず画面を強くたたいたり、焦って何度もタップしたりすることがあります。これは、機器の操作が思い通りにならないというフラストレーションと脳の興奮状態が重なった結果と考えられます。

また、SNSの影響も無視できません。特に小学校の高学年から中学生にかけて、友人のSNSの投稿や友人とのやりとりに敏感になり、自分が仲間外れにされていると感じることがストレスの原因となることも多いです。その結果、家庭でささいなことで怒りを爆発させるケースも増えています。

こども家庭庁の『2024年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)』によると、近年、子どもがインターネットを利用していると答えた年齢別比率は、2歳で56.4%、4歳で77.1%、6歳で83.5%、7歳で87.9%、8歳で92.1%です。

今や学校や塾などの教育現場ではデジタル機器が使われ、デジタル機器を利用した教育は今後も拡大していくと見込まれます。子どもの将来を考えたときに教育現場でのデジタル機器の使用は効果的ですが、長時間の使用には注意が必要です」

Q.子どもにスマホやタブレットを使わせる場合、視力低下や情緒不安定を防ぐにはどのような取り組みが有効なのでしょうか。デジタル機器への依存を防ぐ方法も含めて、教えてください。

三井さん「視力低下や情緒不安定を防ぐために効果的な方法の一つは、『デジタル機器の使用に適切な使用ルールを決める』『事前にその危険性をしっかりと子どもに認識させる』ことです。

また、日頃からデジタル機器のみに依存させないようにすることも大切です。デジタル機器に依存すると、『もっと見たい』『やめたくない』といった強い欲求が生じ、長時間見続けてしまいます。効果的な取り組みは次の通りです」

■使用時間に関するルールを決めて習慣化する
日本小児科医会は、2歳未満の子どもに対してスマホやタブレットなどを見せるのを控えるよう推奨しています。併せて小学生のデジタル機器の使用時間については、1日1時間以内を目安とすることを推奨しています。家族でルールを決め、デジタル機器の過剰な使用を防ぎましょう。小さな目標を設定し、達成できたらそのプロセスを褒めるようにすると、習慣化することができます。

また、子どもがルールを守れなかった場合、責めるのではなく、子どもと一緒に「見たかったんだよね」と共感しつつ、「どうしたら守れるか?」を考え、話し合いながら解決する姿勢が大切です。

■適度な休憩を取る
長時間の使用を避けるために、「30分使用したら5分間遠くを見る」などのルールを設け、子どもの視力低下を防ぎましょう。幼少期から習慣づけるようにすると、目の負担を大きく軽減できます。

■マインドフルネスを活用する
デジタル機器の刺激による興奮状態を落ち着かせるために、1日5分の瞑想(めいそう)や深呼吸を取り入れるのも効果的です。例えば、当社のインターナショナルスクールの生徒の場合、目の前のことに集中する、いわゆる「マインドフルネス」になる状態にするトレーニングを幼少期から積み重ねており、実際に集中力の向上が確認されています。

■スマホの使用前後に運動を取り入れる
スマホやタブレットを使用した後に、ストレッチや軽い運動を行うことで、興奮状態を和らげ、情緒の安定を図ることができるので、親子で体を動かすこともお勧めです。

■寝る前の使用を控える
ブルーライトの影響でメラトニンの分泌が抑制され、睡眠の質が低下することが報告されています。就寝の1時間前からはスマホやタブレットを使わない習慣を身に付けることが大切です。

【要チェック】これが、子どもの「スマホ依存」を防ぐ“10カ条”です(画像10枚)

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三井博美(みつい・ひろみ)

アライブ代表

米国サンフランシスコ州立大学卒業、名古屋大学大学院修士課程修了。国際マナースクールでの学びや、メーカー・ベンチャー企業の海外事業部での渉外業務、東南アジアでの海外勤務経験を生かし、2001年にアライブ(名古屋市東区)を創業。英語教育を軸に、SDGs、STEAM、リーダーシップ、起業家育成など、未来のグローバルリーダーを育成するプログラムを提供し続け、これまでに2万人以上の子どもたちの成長に携わる。保育士、チャイルドコーチングアドバイザー、問いかけ型教育スペシャリスト、マインドセットコーチ、児童英語講師トレーナーの資格を持ち、現在、JPPAポジティブ心理学協会会員として、脳科学やポジティブ心理学を研究して、教育プログラムの開発にも力を注ぐ。「超エリート英語教育 ~日常会話を目標にしない子ども英会話~」(ラーニングス)。ブログ(https://alive-co.com/blog/index.html

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