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中国に世界2位の鉄鋼メーカー誕生へ…経営統合の裏で労働者を悩ませる“現実”

人事や文化の融合…統合はうまく進むのか?

 青樹さんは今回の統合を“政略結婚”と表現します。「生産量が世界2位になることは一見華やかなニュースに聞こえますが、これは双方の企業による経営判断ではなく政府が主導した“政略結婚”です。中国語には『拉郎配』という言葉がありますが、これは男性側、強い側が力ずくで無理やり結婚させるという意味合いがあります。今回の合併統合は拉郎配であるとの声も上がっています」(青樹さん)。

 宝鋼集団(当時は上海宝鋼集団)が1998年、同じく上海の上海梅山集団を傘下に収めた際も、十数万人の社員の人事やビジネス文化の融合に18年間の期間を要しており、今回の経営統合にはそれ以上の困難が伴う、との見方もあるようです。

 青樹さんは「中国人にとって国有企業を離れることは自分たちが育った国を出ることと同じ。そのため彼らの中には今、すさまじい心理的抑圧があります。中国がより強い経済大国を目指すためには、経営合理化の裏にある、労働者のこうした感情をうまく処理する必要があるでしょう」と話します。

 かつて尖閣諸島の領有権をめぐって盛り上がった「反日デモ」も、社会に不満を持った大勢の人が参加したとされていますが、青樹さんは「中国の国内問題は即、日本にもはね返ってきます。中国政府には善処を期待します」とコメントしています。

(オトナンサー編集部)

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青樹明子(あおき・あきこ)

ノンフィクション作家・中国社会情勢専門家

早稲田大学第一文学部卒、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程修了。大学卒業後、テレビ構成作家や舞台脚本家などを経て企画編集事務所を設立し、業務の傍らノンフィクションライターとして世界数十カ国を取材する。テーマは「海外・日本企業ビジネス最前線」など。1995年から2年間、北京師範大学、北京語言文化大学に留学し、1998年から中国国際放送局で北京向け日本語放送のキャスターを務める。2016年6月から公益財団法人日中友好会館理事。著書に「中国人の頭の中」「『小皇帝』世代の中国」「日中ビジネス摩擦」など。近著に「中国人の『財布の中身』」(詩想社新書)がある。

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