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「無痛分娩」は甘え? 「無痛がいい」「罪悪感が残った」と議論に、その方法やリスクとは

「無痛分娩は甘え」という風潮をめぐり、SNS上で議論が交わされています。無痛分娩の方法やメリット/デメリットについて、医師に聞きました。

無痛分娩のメリットとデメリットは?
無痛分娩のメリットとデメリットは?

「無痛分娩は甘えなのか」――。このような話題をめぐって先日、ネット上で話題となりました。

 厚生労働省「無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築についての研究(平成29年度)」 によると、日本では、全分娩のうち約5%が無痛分娩で近年、増加傾向にあります。一方で、「痛みの少ないお産は甘え」「痛みを乗り越えてこそ愛情が湧く」と考える風潮も一部では根強く残っており、親兄弟や義実家とトラブルに発展するケースもあるようです。

 ネット上では、「痛みを和らげることのどこが甘えだよ」「1人目の時に失神するほど痛かったから、次があるなら絶対無痛がいい」「無痛分娩でも命がけで出産することに変わりはない」「無痛分娩にしたけど、罪悪感が残っている」「死亡事故もあったから怖い」など、さまざまな声が上がっています。

 オトナンサー編集部では、無痛分娩の方法やリスクについて、医師の尾西芳子さんに聞きました。

病院によって種類や方法は異なる

Q.そもそも、「無痛分娩」とはどのような出産方法なのでしょうか。

尾西さん「麻酔を使用してお産の際の痛みをなくす方法です。出産日時の計画をして、陣痛促進剤で陣痛を起こして分娩するところもあれば、自然に陣痛が来てから麻酔を入れる病院もあります。病院によって、完全に痛みのない無痛分娩のところもあれば、ある程度の痛みは感じつつも、それを和らげる和痛分娩のところもあります」

Q.無痛と和痛の違いとは。

尾西さん「麻酔を使って陣痛を和らげる点は同じですが、麻酔を入れるタイミングが異なります。和痛分娩は、子宮の入り口がある程度開いて、陣痛が加速し始めてから麻酔を入れる方法です。

麻酔を入れると陣痛が弱まるので、完全無痛分娩の場合は陣痛促進剤を使用する量が増えたり、分娩が長引いたりするリスクがあります。そうしたリスクを減らすために、陣痛が加速してから麻酔を入れるのが和痛分娩です。そのため、子宮の入り口がある程度開くまでは痛みを感じます。

病院によっては、こうした方法を無痛分娩と呼ぶところもあるので事前に確認しておきましょう」

Q.「無痛分娩は甘え」という風潮について、医師としてどのように思われますか。

尾西さん「以前は日本人の気質として『痛みに耐えてこそ』母としての自覚が生まれるとも言われていましたが、今は少しずつ時代も考え方も変わってきていると思います。私個人としては『むだな痛みは必要ない』『技術があるなら使ったらよい』と思います。私は和痛分娩で出産しました。

ただ、後から『こんなはずではなかった』ということにならないように、双方のメリット/デメリットを知った上で選択することが大切です。それぞれの特徴は以下の通りです」

【自然分娩】

メリット:より自然な陣痛、分娩を経験できるので、医療介入によるむだなリスクが少ない。また、病院によってはフリースタイル(自分の好きな体勢)で産むことができる。夫が、陣痛の間ずっと腰をさすったりするなど、家族一緒に陣痛に立ち向かうことで絆(きずな)が生まれる。

デメリット:痛みに耐える必要がある(ただし、上手に痛みを和らげる方法を助産師が導いてくれるため、耐えられない痛みではない)。

【無痛分娩】

メリット:痛みが少ない分、疲れも少なくて済むので、赤ちゃんが出てきた瞬間にしっかり抱きしめることができ、家族と喜びを分かち合える。

デメリット:麻酔によって陣痛が弱まるため、陣痛促進剤を使用する量が増えたり、分娩が長引いたりすることがある。おなかを上から押したり、吸引や鉗子(かんし)分娩、会陰切開を行ったりして、赤ちゃんを取り出すこともある。麻酔や陣痛促進剤による副作用のリスクがある。そのため、なるべく人手がある日中に分娩を計画する(計画分娩)病院もある。

また、自然分娩に比べて10万円ほど費用がかかることが多い。

Q.自然分娩と無痛分娩のどちらにすべきか悩んだ時、本人や家族が意識するべきことは何でしょうか。

尾西さん「まずは、どんな分娩がしたいかイメージしてください。より自然な陣痛を感じたい、自然な体勢で分娩したい、なるべく医療介入によるリスクは減らしたいという方は、自然分娩を選ぶとよいと思います。リスクは承知の上で、なるべく痛みのない分娩がしたい、リラックスして赤ちゃんを迎えたいという方は無痛分娩を選ぶとよいでしょう。

いずれにせよ、後悔のないお産にするために家族とよく相談してください。ご主人や親にもいろいろな考えがあると思いますが、最終的には、実際に産むママの意見を尊重してあげましょう」

Q.無痛分娩を希望する場合、病院選びのポイントはありますか。

尾西さん「無痛分娩は種類も腕も、病院によってかなり差があるのでしっかり選ぶことが大切です。無痛か和痛か、陣痛が来るのは計画か自然か、夜間でも麻酔を入れてもらえるか、などを確認しましょう。陣痛が来るのを天に任せたいという人は、夜間に陣痛が起きた場合も無痛分娩に対応できる病院かどうかチェックしておく必要があります。

さらに、最終的に吸引分娩や鉗子分娩になる確率や、赤ちゃんに何か問題があった場合にすぐ小児科に診てもらえるかどうかも事前に確認しておきたいポイントです。なかなか難しいかもしれませんが、そこで分娩した先輩ママに聞くのもよいと思います」

(ライフスタイルチーム)

尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は高輪台レディースクリニック副医院長。「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性のすべての悩みに答えられるかかりつけ医を目指している。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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