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家具固定だけでは不十分 「巨大地震」生き抜くのに必要な“10カ条” 専門家が解説

けがをしないための備えが重要

 家具の固定は、最も重要で全員が必ず行うべき対策です。大規模地震の直後には、同時に多数のけが人が医療機関に殺到します。つまり、普段なら医療機関で治療してもらい、事なきを得るけがでも、災害時には適切な処置を受けられない可能性があります。だから、最初にけがをしないことが非常に重要です。これは日頃から心掛けておいてください。

 また、けがをしたり、家具に挟まれたりして動けなくなれば、津波や火災からの避難も困難になります。これらの理由から、地震の揺れによる直接的な被害を防ぐため、家具の固定は必須なのです。

 加えて、家具の数を減らすことや、背の低い家具を選ぶことも効果的です。特に、リビングや寝室など、長時間過ごす場所には高い家具を置かないようにしましょう。これらの対策を組み合わせることで、室内の安全性を大幅に高めることができます。

 南海トラフ地震のような大地震でも、耐震基準を満たした新しい建物が倒壊する可能性は比較的低いと考えられています。しかし、古い建物や耐震性の低い建物は依然として危険です。可能な限り耐震性の高い建物に住むこと、必要に応じて耐震補強をすることを心掛けましょう。

 自宅だけでなく、普段の行動範囲にある建物についても注意を払いましょう。日常的に利用する場所、例えば職場やよく買い物をする店舗などの耐震性も確認しておくべきです。耐震性が低いと思われる建物内での滞在時間を最小限に抑えるよう心掛ければ、それだけリスクを軽減できます。

 また、道を歩いているときの被災も考慮する必要があります。普段歩く経路にどのような建物があるかを確認し、可能であれば耐震性の低い建物が並ぶルートを避けることも大切です。日常生活のあらゆる場面で「今、揺れたらどんなことが起きるか」を想像する癖をつけることが、被害を軽減する重要な一歩となります。

 南海トラフ地震による想定死者数約32万人のうち、約23万人が津波による死者数とされています。このことからも、津波の危険がない場所に住むことがいかに重要か分かります。可能であれば、高台や内陸部など、津波の影響を受けにくい場所に住むことをお勧めします。

 しかし、仕事や生活の都合で津波リスクの高い地域に住まざるを得ない場合もあるでしょう。そのような状況では、次の点に特に注意を払う必要があります。

 まず、自宅や職場からどこまで逃げれば安全なのか、そこまでの経路や所要時間を確認し、実際に歩いてみることが重要です。高台までたどり着けなかったときのために、途中にある頑丈で高い建物や、建物の入り口の施錠状況なども確認しておいてください。ハザードマップを見るときは、津波の浸水域や浸水深だけでなく、津波の到達時間も必ず確認し、避難をシミュレーションしてください。

 さらに、家族や同僚との間で「てんでんこ」、つまり「各自が自力で必ず助かる」という約束をし、この認識を共有しておくことも大切です。これにより、お互いを探すために危険な場所に戻ることで発生する二次被害を減らすことができます。

 最大規模の南海トラフ地震が発生すると、伊豆半島付近から九州南部までの広大な地域が甚大な被害を受けます。このため、しばらくは周辺地域からの支援は期待できません。最低でも1週間、できれば2週間程度は自立して生活できるよう、必要な物資を確保しておいてください。

個人の十分な備えが復興を早める

 このように書くと「怖い」「考えたくない」と思うかもしれません。確かに大きな災害は怖いものではありますが、「災害について考え、備えること」は、未来の被害を減らす行為なので「怖いこと」ではなく、むしろ「楽しいこと」だと私は思います。

 南海トラフ地震は過去にも繰り返し発生していますが、日本はそのたびに乗り越え、立ち直ってきたのもまた事実です。だから、次の南海トラフ地震からも必ず立ち直れるはずです。そのためにも、まずはあなた自身が生き延びることが重要です。

 一人一人が生き延びることは、生き延びた本人だけではなく、周囲への負担を減らし、復興を早めることにもつながります。死者や行方不明者が少ないほど、その対応や捜索に当たる人的資源を復興に向けることができます。

 そして、生き延びた人自身も復興活動に加わることができます。言い換えれば、あなたが生き延びてくれるだけで、復興を早めるための大きな社会貢献になるのです。

 繰り返しになりますが、南海トラフ地震は避けられません。「南海トラフ地震臨時情報」(巨大地震注意)の呼び掛けが1週間で終了したのは、「危機が去ったから」ではなく、「1週間以上は、社会が警戒を続けられないから」です。だから決して「無事に終わった」と安心しないでください。南海トラフのひずみは今日もたまり続けているのです。

 でも悲観的にならないでください。必ず来るなら備えれば良いのです。雨が降る日に傘を持って出掛けるのと同じです。今日からでも、できることから始めてみましょう。

 そして、この記事を読んだ後には、ぜひ家族や友人とも地震への備えについて話し合ってみてください。一人一人の備えが、そしてあなたが生き延びることが、災害が起きても、そこからしなやかに復興できる力、いわゆる災害レジリエンスを高めることにつながるのです。

(近畿大学生物理工学部准教授 島崎敢)

【画像】覚えておいて! これが「巨大地震」生き抜くのに必要な“10カ条”です

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島崎敢(しまざき・かん)

近畿大学生物理工学部准教授

1976年、東京都練馬区生まれ。静岡県立大学卒業後、大型トラックのドライバーなどで学費をため、早稲田大学大学院に進学し学位を取得。同大助手、助教、国立研究開発法人防災科学技術研究所特別研究員、名古屋大学未来社会創造機構特任准教授を経て、2022年4月から、近畿大学生物理工学部人間環境デザイン学科で准教授を務める。日本交通心理学会が認定する主幹総合交通心理士の他、全ての一種免許と大型二種免許、クレーンや重機など多くの資格を持つ。心理学による事故防止や災害リスク軽減を目指す研究者で、3人の娘の父親。趣味は料理と娘のヘアアレンジ。著書に「心配学〜本当の確率となぜずれる〜」(光文社)などがあり、「アベマプライム」「首都圏情報ネタドリ!」「TVタックル」などメディア出演も多数。博士(人間科学)。

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