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女性に多い? 骨粗しょう症の症状や原因、治療方法を解説

「骨粗しょう症」は骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。その原因や予防対策について、医師とともに解説します。

骨粗しょう症の原因や予防法とは?
骨粗しょう症の原因や予防法とは?

「いつまでも健康に、自分のことは自分でできる」――。そんな普通の日常生活を送るために、まず大切にしなければならないのが骨です。骨の病気は多岐にわたりますが、その中でも、骨粗しょう症は今やメジャーな病気の一つとなっています。その原因や予防対策とはどのようなものでしょうか。光伸メディカルクリニックの中村光伸院長(整形外科)に聞きました。

骨粗しょう症とは

 骨は、大きく分けると、内側から骨髄(こつずい)、それを取り巻く海綿質(かいめんしつ)、緻密質(ちみつしつ)で成り立っています。

 海綿質は骨梁(こつりょう)と呼ばれる細い骨が集まってできており、板状と棒状の骨梁が絡み合って一つの形を維持しているものです。工事現場の足場を想像すると、より分かりやすいかと思います。その足場が架かっている硬い壁が、緻密質です。

 骨を構成する主な細胞には「破骨細胞」「骨芽細胞」の2つがあり、それぞれがバランスよく活動することで骨は維持されています。骨は赤ちゃんの時の骨がそのまま伸びたものではなく、ある一定期間をもって新陳代謝が繰り返されています。骨は、破骨細胞によって、古くなったものからどんどん壊されていくのです。

 これは「骨吸収」とも呼ばれ、その後に骨芽細胞が、コラーゲンを生成しながらカルシウムを動員し、新しい骨をどんどん作り出しています。こうして骨の新陳代謝が繰り返されることで、1年間に30%近くの骨が入れ替わることになります。

 骨粗しょう症とは、この新陳代謝のバランスが崩れ、骨の質が弱くなる状態を指します。緻密質に含まれるカルシウムやリンなどのミネラル成分が減り(骨量の減少)、海綿質の骨梁が折れたり細くなったりすることで(骨密度の低下)、本来は絡み合ってしっかり作られているはずの網目がスカスカになります。

 骨粗しょう症の初期には、だるい、痛いなどの自覚症状がありません。しかし、骨が弱くなっているため、転んだり、ぶつけたり、くしゃみをしたりするなどの小さな衝撃でも骨折してしまうことがあります。

 骨折は、運動に制限もなく、健康的な若い年齢であれば、安静療法や固定療法、または手術療法で完治を望めますが、高齢においては、部位によって、寝たきり生活を送らなければならなくなるリスクを抱えます。寝たきり生活では、不自由さを感じるばかりではなく、体全体の新陳代謝が悪化し、脳卒中や心臓病などの病気に発展する可能性があるため、軽視できないのが骨粗しょう症なのです。

骨粗しょう症を引き起こす危険因子

【加齢】

骨の新陳代謝が活発なのは思春期~18歳ごろで、その後、40代から徐々にバランスが崩れていきます。65~70代くらいから徐々に、骨形成よりも骨吸収(破壊)が進み、骨量が減少していきます。骨が形成されるには、カルシウムのほかにもコラーゲンであるタンパク質も重要です。加齢に伴い全身の代謝が悪くなると内臓機能が低下するため、食事の量も減り、さらに、食べ物の消化力や腸における栄養分の吸収力が減退し、カルシウムもタンパク質も不足しがちになります。

【女性ホルモンの減少】

女性ホルモンのエストロゲンが定期的に分泌することで、骨形成を促し、さらに骨が破壊される機能を抑制する働きをします。ところが、卵巣摘出などの手術を受けたり、閉経したりするとエストロゲンが減少し、骨粗しょう症の発症リスクが高まります(閉経後骨粗しょう症)。女性の発症率は男性に比べると2倍です。

【血液内のカルシウムが不足】

血液中のカルシウムは全体量の1%と少なく、その他は骨に貯蔵されています。少しでも血液内にカルシウムが不足した状況になると、骨から血液内にカルシウムが移動してしまい、結果として骨粗しょう症に向かうことになります。

【コラーゲンの減少】

骨の中にはカルシウムが存在しますが、それを固定しているのがコラーゲンです。コラーゲンが年齢に伴い減少したり、酸化などが原因で質が悪化したりすると、カルシウムをうまくつなぎ留められなくなります。そうなると、骨生成がしにくくなるばかりでなく、骨の柔軟性も失われ、何かの刺激で簡単に骨折しやすくなってしまいます。

【栄養不足】

骨粗しょう症は高齢者ばかりの病気ではありません。ダイエットなどによって、成長期に栄養不足になると骨質に支障が出て、骨粗しょう症の原因になります。特に、骨の主要であるカルシウムや、カルシウムを形成するために必要なビタミンD不足は、直接的に悪影響となります。

【運動不足】

新しい骨を作るには、骨への適度な圧力が必要です。運動のやり過ぎは骨に負担をかけることになりますが、全くせずに骨を休ませてばかりでも骨芽細胞が活動しなくなってしまい、骨粗しょう症になります。宇宙飛行士が、骨に圧力が加わらない無重力空間で過ごすと骨粗しょう症になるのは有名な話です。

【喫煙、飲酒】

喫煙は体内を酸化させ、代謝をはじめとする全機能をマイナスにします。また、アルコールとともに内臓の働きを悪くするので、腸からのカルシウム吸収の弊害となります。

【遺伝】

はっきりと立証されてはいませんが、家族に骨粗しょう症に罹患(りかん)した方がいる場合には、リスクの一つと考えた方がよいとされています。

骨粗しょう症のリスクとなる病気

【糖尿病】

膵(すい)臓から分泌されるインスリンは、骨芽細胞を増やし、骨の形成を助けます。しかし、糖尿病になると、このインスリンが不足するので、骨形成の力が不足し、骨粗しょう症のリスクとなるわけです。

【関節リウマチ】

関節リウマチは全身の関節に炎症を起こし、骨吸収を促進すると同時に骨形成の抑制も行ってしまうため、骨粗しょう症とは密接した関係にあります。また関節リウマチの治療薬として代表的なのがステロイドであり、この副作用が同じような結果を生み出します。

【副甲状腺機能亢進(こうしん)症】

副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺ホルモン(PTH)が必要以上に分泌してしまう病気です。この副甲状腺ホルモンが血液内のカルシウム量を高めようと骨吸収を促進し、結果として骨粗しょう症が進んでしまいます。

【慢性腎臓病】

腸からカルシウムを吸収するにはビタミンDが必要です。ビタミンDはそのままでは機能しないため、腎臓で活性型ビタミンDに変えなければなりません。しかし、腎臓の機能が低下してしまうとこのサイクルが成立しないため、ビタミンDの効果がゼロとなってしまいます。そのため、骨粗しょう症につながることになります。

骨粗しょう症の治療と予防

【治療薬】

カルシウム製剤:不足したカルシウムを補充
活性型ビタミンD3製剤:腸からカルシウムを吸収させやすくする
ビタミンK2製剤:コラーゲンなど間接的に関与し、骨の質を強化する
女性ホルモン(エストロゲン)製剤:骨吸収を防止する
SERM:女性ホルモン(エストロゲン)の減少を補う形で骨に作用し、骨吸収を抑制する
テリパラチド(副甲状腺ホルモン):骨を作る働きを促進する
ビスホスホネート製剤:破骨細胞の働きに作用し、骨を破壊する働きを抑える
デノスマブ製剤:骨吸収を促す成分を阻害する
カルシトニン製剤:骨吸収を抑制し、骨粗しょう症による痛みに対して沈静する

【食事】

カルシウムは最低でも1日600ミリグラムは必要とされます。閉経後は2倍の摂取量が必要です

カルシウム:牛乳、乳製品、小魚、干しエビ、小松菜などに含まれる
タンパク質:肉類、魚、卵、乳製品、大豆製品などに含まれる
ビタミンD:サケ、ウナギ、サンマ、シイタケ、キクラゲなどに含まれる
ビタミンK:納豆、ホウレン草、ニラ、ブロッコリー、キャベツなどに含まれる

【運動】

骨は、適度の刺激や負荷をかけることでカルシウムの取り込みが良くなります。ただし、普段から運動していない人が急激な運動をすると、転倒や骨折などの原因にもなりますので、軽いウオーキングから始めましょう。毎日1000歩程度を目標に、少しずつ距離をアップしていくようにすることが望ましいです。

また、紫外線は皮膚に良くないと言われますが、カルシウムを作るのに必要なビタミンDを作り出す力を持っているので、紫外線予防しながら、なるべく外での運動を心がけましょう。

気になる症状があれば、整形外科へ

「骨粗しょう症は、かなり進行しなければ痛みや苦痛を感じるものではありません。しかし、気づかないうちに骨がもろくなっているため、転倒などによって骨折し、運動制限が起きてしまいます。高齢になってから数週間ベッドの上で生活することになれば、すぐに筋力や内臓の機能が低下してしまうことも考えられます。

いつまでも、元気で明るい生活を送るために、早いうちから骨を弱めないための小さな心掛けを行っていくことが大切です。食事の改善や運動など、できることから始めてみましょう。また、少しでも気になる症状があれば、すぐに整形外科を受診し、必要に応じて骨密度測定など検査をしてもらうことをお勧めします」(中村さん)

(ライフスタイルチーム)

中村光伸(なかむら・こうしん)

医師(光伸メディカルクリニック院長)、医学博士

北里大学医学部卒業。北里大学整形外科専任講師、都内美容外科クリニック勤務を経て、2011年12月、光伸メディカルクリニックを東京都新宿区に開業。「美容皮膚科」(美を追求する見た目)と「整形外科」(若さを追求する動き目)の2つの診療科にわたって、美と若さを積極的に目指す「リバースエイジング」の治療を行っている。特にヒアルロン酸注入を中心とした、メスを使わない美容医療をとことん追求し続け、15年間で約4万症例(2017年12月現在)の実績を誇り、オリジナル注入技法を用いて全国の医師に技術指導を実施するなど、「ヒアルロン酸の名医」として活躍中。日本整形外科学会専門医、日本抗加齢学会認定専門医。所属学会は日本美容外科学会、日本美容皮膚科学会。著書に「わたしはリバースエイジングドクター」(平成出版)。

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