企業や学校に「雪合戦」を普及 ベンチャーのサービスが「面白い」と好評、どんな効果が?
東京都内の企業が、雪合戦を競技にした「スポーツ雪合戦」の普及を図っています。

子どもたちの冬の楽しみの一つ、雪合戦を競技にした「スポーツ雪合戦」。東京都内のベンチャー企業が学校や企業などを対象に機材やノウハウを提供し、その普及を図っています。解けにくい氷を使うため、真夏でも遊べる点も特徴です。体験した人からは「面白かった」「組織のコミュニケーションの向上につながった」などと好評のようです。同社の代表に話を聞きました。
部署間のコミュニケーション向上を図る
スポーツ雪合戦は1980年代後半、北海道壮瞥(そうべつ)町で誕生しました。国際大会も開かれ、日本のレベルは世界トップクラスと言われます。競技は、各7人で構成するチーム同士で争います。競技時間は1セット3分の3セットマッチで、試合時にはヘルメットの着用が義務付けられ、1セット当たり1チーム90個の雪玉を使います。
選手は雪玉に当たらないよう「シェルター」と呼ぶ壁に隠れながら、相手陣地のフラッグ(旗)を奪いに行きます。相手選手の投げた雪玉に当たった選手はコートから出なければならず、最終的にフラッグを奪うか、試合終了時点で残った選手の多いチームが勝ちとなります。
決着がつかない場合、6メートル先の標的に雪玉を投げる「ビクトリースロー」を行い、標的を多く倒したチームが勝ちとなります。
この企業は、ぶーにゃんコミュニケーション(東京都目黒区)です。首都圏のフットサルコートや陸上競技場で体験会を開くほか、学校や企業の依頼でイベントを実施しています。後藤一郎社長(55)は2014年に金融関係の会社を退職し、2015年12月に起業しました。
サービスは、10人以上の団体を対象に8万円(税別)から提供。8月19日、東京都町田市で体験会を開く予定です。
後藤さんに話を聞きました。
Q.どれくらいの依頼がありますか。
後藤さん「1カ月に3件ほどの申し込みがあります。夏場は特に多く、月5~6件です。学校法人や青年会議所、企業などで、最近はJリーグの川崎フロンターレさんの依頼で、試合前に子どもたち向けに体験会を実施しました。申し込みは着実に増えています」
Q.会社を立ち上げた理由は。
後藤さん「スポーツ雪合戦を国内外でメジャーにしたいからです。30年前に新潟のスキー場でスポーツ雪合戦に出合い、面白さに目覚めました。当時はスキーブームでリフトの1時間待ちはざらで、待っている間に雪合戦をやるのが楽しかったですね。
その後、数年ほど毎冬スキー場に出かけ、雪合戦もしていました。一時は遠ざかっていましたが、以前からスポーツに関するビジネスがしたいと考えており、雪合戦の現状を研究して会社を立ち上げました」
Q.企業からはどのような形で依頼が来ることが多いのでしょうか。
後藤さん「研修に活用したいというお話をよく頂きます。大手企業からも何社か依頼されて驚きました」
Q.何時間かけて行うのですか。
後藤さん「半日規模で実施するケースが多いです」
Q.なぜ研修に採用するのでしょうか。
後藤さん「部署間のコミュニケーションを向上させ、課題解決につなげるためです。例えば、メーカーであれば、製造に携わる人もいれば営業をする人もいますよね。いくら良い製品でも、営業の状況も知らないまま大量生産すると在庫が残り、赤字となってしまいます。研修では部署同士がうまくコミュニケーションを取れるようになることで、無駄のない生産と販売が可能になることを伝えています」
Q.どのように実施するのですか。
後藤さん「座学と競技に分けて行います。座学では、会社にどう貢献するのかなどのビジョンを明確にしていきます。課長別、部長別といった階層別で実施することもあります」
Q.社員同士で行う魅力とは。
後藤さん「一人一人が個々の能力を生かせる点ですね。例えば、サッカーだと高い確率で経験者がいます。そうすると、その人がチームリーダー的な存在になってしまい、本来会社が求めるチームビルディング研修にそぐわなくなります。スポーツ雪合戦は経験者が少なく、全員が平等な形で参加できるよう役割分担が決まっています。そういう面で一人一人が全員主役で活躍できる内容です」
Q.企業側の反応は。
後藤さん「『社員間のコミュニケーションが向上した』という話を聞きます。特に課長、マネージャーレベルになると、持っている権限が大きくなります。チームリーダーとしてどう課を動かしていくか、他の課と連携を取りながらどう動いていくかということが分かるようになったと評価されました。
特定の課だけが良ければいいのではなく、会社全体で生産ロスをなくす、営業機会を増やすという所につながります。コミュニケーションが円滑になって余計な時間を使わなくなり、残業時間も減ります。また、最初は『雪合戦で研修? 何それ?』という人も、いざ始めると夢中になります」
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