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「帰宅恐怖症」の夫たち マイルール妻にうつ病にされた30歳会社員・妻の嫉妬に悩む40歳経営者

警察の取り調べを受けている気分

 帰宅恐怖症の夫というと、恐妻家で気の弱い男性をイメージする方が多いのではないでしょうか。確かに真面目で、自分の意見を伝えるのが苦手なタイプが多い傾向にありますが、必ずしも世間でイメージされるような“弱々しい”男性だけの問題ではありません。

 小沢洋介さん(仮名・40歳)は会社経営者。バリバリと仕事をし、部下にも慕われる、いわゆる“デキる”男性です。

 そんな洋介さんが、「僕、帰宅恐怖症かもしれません」と私のところに相談にいらっしゃいました。家に帰るのが億劫(おっくう)で、つい仕事帰りに部下を飲みに誘ってしまったり、遅い時間に打ち合わせを入れてしまったりするというのです。

 奥様の由紀子さん(仮名・40歳)は料理上手の専業主婦。そんな奥様とかわいい盛りの2歳の娘さんが待つ家に帰りたくないとは一体どういうことなのか、私が尋ねると、洋介さんは言いました。

「警察の取り調べを受けているみたいなんです」

 由紀子さんは、洋介さんが帰宅するやいなや、「今日はどこへ行っていたの」「誰と一緒だったの」と細かく問い詰めてくるのだそうです。

「部下と一緒だったと言うと、そのフルネームや年齢まで言わされる。それが面倒なので一人だったとうそをつくと、領収書を探し出してきて『一人の分量じゃない!』とわめかれるんです。こっちも疲れて帰ってきてるし、本当に勘弁してほしいですよ」

 由紀子さんの“監視”が始まったきっかけとして、洋介さんには思い当たる出来事がありました。

 洋介さんの会社で、パーティーを開催した時のこと。それまでも社員交流などを目的としたパーティーは何度か開催したことがあり、由紀子さんと娘さんも顔を出していたそうです。

 しかし、その時のパーティーの目的は大事なお客様の接待でした。いつも通り社長夫人として参加する気だった由紀子さんに、「今回はビジネスの交渉が目的となる会だから、娘と家で待っていてくれないか。自分はホストで慌ただしく、子どもの相手もできないし」と、洋介さんは頼みました。

 その時は「わかったわ」と素直に応じた由紀子さんでしたが、それ以降「今日の会に○○さん(会社の女性社員)は参加していたの?」「どんなお酒を飲んだの?」と“取り調べ”が始まったのです。

 要するに、由紀子さんの行動は嫉妬(しっと)からくるものでした。自分は出産後に仕事を辞め、まだまだ手のかかる我が子の子育てに一日中追われているのに、夫は昔と変わらず華やかな生活をし、仕事を通して女性に関わる機会も多い……。

 しかし、面白くないのは、洋介さんも同じでした。会食や、接待のパーティーは、あくまでビジネスの場であり、気疲れもします。週末に家族サービスをするために、平日のうちに仕事を片付けようと、夜遅くまで会議や打ち合わせを詰め込むことも少なくありませんでした。それを、まるで浮気でもしているかのように問い詰められたら、「やってられない」という気にもなります。

 夫婦の言い争い避けるために、洋介さんが会食を入れると、由紀子さんは余計嫉妬深くなり、何かあるのかと疑ってさらに大きなけんかに……。悪循環に陥った小沢夫婦の関係性は悪化の一途を辿り、とうとう離婚調停にまで発展してしまいました。

 しかし、調停でお互いすれ違っていた気持ちを確認し合えたこと、そして何よりも、夫婦ともに娘さんの成長を見守りたいという気持ちが強かったことから、離婚は回避。再構築の道を選ばれました。

 現在も、完全に問題解決、夫婦円満とまではいかない様子の小沢夫妻ですが、かわいい娘さんのためにも良い家族になろうと、夫婦カウンセリングを続けていらっしゃいます。

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高草木陽光(たかくさぎ・はるみ)

HaRuカウンセリングオフィス代表、夫婦問題カウンセラー

7年間で約7000人のカウンセリングを行い、夫婦問題・家族問題で悩む人の心に寄り添いながら、解決に向けての手伝いをしている。美容師、育毛カウンセラーを経て、その後、結婚して専業主婦となったが、夫の束縛や価値観の押し付けに違和感を覚え、「結婚生活とは何か」を深く考え始める。その後、「離婚カウンセラー」の職業があることを知り、自分たち夫婦や、夫婦関係で悩んでいる人たちのために、必ず役に立つと確信。2009年に「NPO法人 日本家族問題相談連盟」の認定資格を取得し、夫婦問題カウンセラーとなる。「直そうとしないで、わかろうとするカウンセリング」をモットーに日々活動中。著書に「なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか」(左右社)がある。HaRuカウンセリングオフィス公式サイト(http://haru-counseling.com/)。

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