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「だじいな おらしせ」 間違いなのになぜか読める和菓子店の広告が「お見事」、制作経緯は?

富山県内にある、どら焼きの老舗「中尾清月堂」の広告のコピーが話題に。よく見ると文字が入れ替わっているのに、なぜか問題なく読めて…。

北日本新聞の折り込み冊子に掲載された広告(中尾清月堂提供)
北日本新聞の折り込み冊子に掲載された広告(中尾清月堂提供)

 富山県内にある和菓子店「中尾清月堂」の広告のコピーが、よく見ると文字の順番が入れ替わっているのに、問題なく読めてしまうことから、SNS上で話題になっています。

 あえて“違和感”を創出し、広告内容を伝えることを狙った広告で、SNS上では「これはお見事」「秀逸な広告」「普通になんの違和感もなく読めた(笑)不思議だなー」などの反応が上がっています。中尾清月堂の広報担当者に制作の経緯を聞きました。

「みまなさに だじいな おらしせ」

 中尾清月堂は富山県内に5店を展開しています。看板商品のどら焼き「清月」を、創業当時の味に近づけるために大幅改良したのに合わせ、2018年3月18日、地元紙「北日本新聞」の折り込み冊子に広告を出しました。

 同時に、どら焼きのどこが変わったかをクイズで当てるキャンペーンも行い、3000通を超える応募がありました。県内のみの販売にもかかわらず、10日間で過去最高の5万9200個を売り上げました。

 広告は「みまなさに だじいな おらしせ」という書き出しで始まります。

 みまなさに だじいな おらしせ。
 こたのび なかお せいげどつうが
 ぜたっい に ばれない ように
 どやらき の リニュアール を
 おなこい ました。
 ※ちみなに この ぶんしょう の じんゅばん も ばなれい ように いかれえています。

 元々のメッセージは、次の内容です。

 みなさまに大事なお知らせ。
 この度 中尾清月堂が
 絶対にばれないように
 どら焼きのリニューアルを
 行いました。
 ※ちなみに この文章の順番も ばれないように入れ替えています。

 この広告に取り入れられたのが「タイポグリセミア(Typoglycemia)現象」と呼ばれるものです。「typo(タイポ、誤植)」と「hypoglycemia(ハイポグリセミア、低血糖)」の組み合わせによる造語で、文字を並べ替えても、多くの人がその文章を問題なく読めてしまう現象です。

 人は単語を、一文字ごとではなく一つの集合として視覚的に認識しており、人の脳が単語を瞬時に予測、補正して読むことができると言われます。「タイポグリセミア現象」が発生するためには、何でも単語を入れ替えればよいのではなく、「単語の最初と最後の文字は正しいものにする」といった条件があります。

どら焼きの「絶対にバレない」からヒント

キャンペーン期間中の特製パッケージ(中尾清月堂提供)
キャンペーン期間中の特製パッケージ(中尾清月堂提供)

 広報担当者は「当初は一般的な広告にすることも考えましたが、リニューアルをお客様にも楽しみながら味わってほしかった」と話します。

 広告のアイデア考案・制作に携わったのは、富山県高岡市に事務所「ROLE(ロール)」を構えるクリエーターの羽田純さんです。富山県を拠点に地元企業などの商品開発や広告制作に携わっています。

 リニューアルしたどら焼きは、これまでの電気に代わりガスで焼いてふっくらとさせたほか、包装方法や餡(あん)、卵、小麦粉などの材料も変えました。羽田さんは、リニューアル後もどら焼きが愛されている様子を見て、「一見すると変化が絶対にバレないが、よく見ると変わっている」ことを実感し、その特性を生かした広告をと考えたそうです。

「どら焼きのどこが変わったか」を5択の投票形式で回答するリニューアルキャンペーンには、3377人の応募があり、応募者からは「生地も餡も変わった気がする…難しい!」「豆の粒が少し小さく赤みがかり、歯応えを残しつつ、汁気多めの餡になったような気がしました」などの声が寄せられ、これらの結果をアンサー広告として4月12日に折り込み冊子に掲載したそうです。

(報道チーム)

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