突然の提供停止で波紋 “給食”事業は収益化が難しい? 値上げNG? 経営コンサルタントに聞く
学校給食は収益化が難しい事業なのでしょうか。経営コンサルタントに聞きました。
全国で学校給食などを提供する食堂運営会社「ホーユー」(広島市中区)が、経営の行き詰まりを理由に、今月1日から給食の提供を停止していると新聞やテレビなどで報じられ、SNS上で波紋が広がりました。帝国データバンクが9月8日に公表した調査によると、国内で給食サービスなどを提供する企業374社のうち、2022年度の業績が赤字だった企業は127社に上り、厳しい経営を強いられているのが分かります。
そもそも、学校給食は、収益化が難しい事業なのでしょうか。もし給食サービスの事業者の経営難が続いた場合、学校や家庭にどのような影響が生じる可能性があるのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。
給食は予算を決めて実施
Q.そもそも、学校給食は収益化が難しい事業なのでしょうか。
大庭さん「国や地方自治体が管理する国公立の学校に関する給食費用は、学校給食法という法律で、学校施設の設置者である市区町村と保護者が負担する仕組みになっています。
そのため、市区町村の教育委員会や学校長などが、年度ごとに『1食当たりの単価を決定する方法や単価の額』『1人当たりの年間の学校給食費』などをあらかじめ考慮して予算化し、給食が実施されます。
つまり、学校給食の費用(給食サービス提供事業者の売り上げ)は、あらかじめ決められており、その内容に基づき市区町村が管理をしています。年度途中で給食の予算額を変更するのは困難なため、原材料費の高騰などが生じた際に給食サービスの提供事業者が値上げをできず、収益化できなくなるケースが発生します。
予算額の変更が可能だと仮定しても、負担が増加するとして保護者からの反発があるため、給食費は実質的に値上げはできないものと考える必要があります」
Q.給食サービスを提供する企業の経営難が続いた場合、学校や家庭にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか。
大庭さん「学校給食は、成長期にある児童・生徒の心身の健全な発達を促進するために栄養バランスの取れた食事を提供することを目的に実施されています。学校給食の提供は義務ではありませんが、学校給食法で実施が推奨されていることもあり、実施する学校が多くあります。
そのような中、安定的に給食を実施することができない状況が発生した場合、学校は、給食の安定化を図るために既存の給食サービスの提供事業者との交渉のほか、新たな給食サービスの提供事業者の開拓、自前で給食を作ることの検討などを行わなくてはならなくなります。
また、家庭でも、学校給食に見合う栄養バランスの取れた食事(弁当)を日々用意しなければならなくなるなどの負担が新たに発生します」
Q.近年、飲食店の運営会社などが給食事業に参入するケースがあるようですが、この場合、既存の給食サービスの提供企業にどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
大庭さん「民間企業が地域の給食事業に新規参入した場合、競争が激化し、場合によっては、新規参入者に取って代わられることがあります。そのようなリスクが拡大することが、既存の給食サービスの提供事業者にとっての最大のデメリットです。
一方、新規参入により、M&Aなどを通じて給食サービスの提供事業者の再編が進んだ場合、事業買収を行った新規参入者にとっては、スケールメリットを得ることにより、原材料費や物流費などのコストの合理化を図ることができます。
事業を売却した既存の給食サービスの提供事業者も、不採算事業の切り離しによる企業収益の改善が実現されるというメリットが得られます」
Q.企業が給食事業で安定した収益を得るには、どのような対策が必要なのでしょうか。国や自治体の支援の必要性なども含めて、教えてください。
大庭さん「国や都道府県からの補助金を獲得する、もしくは増やすことができれば、給食費用に対する予算の増額が実現され、給食サービスの提供事業者の収益を安定化させることができます。
そのためには、事業者は、原価や経費削減に関する最大限の企業努力を行った上で、今後に向け、子どもたちに栄養バランスの取れた食事を安定的に提供することができる根拠を国や都道府県に対して説明していく必要があります。その上で、補助金の配布や増額を陳情することなどを考えていく必要があるのではないかと個人的には思います」
(オトナンサー編集部)
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