味の素の冷凍「エビピラフ」50周年! 味? 流行? ロングセラーに成長したワケ
味の素冷凍食品(東京都中央区)が販売する「エビピラフ」がロングセラー商品となった要因について、同社の担当者に聞きました。

味の素冷凍食品(東京都中央区)が販売する「エビピラフ」が、今年で発売50周年を迎えました。同社によると、この商品が発売された1973年当時は、電子レンジがあまり普及しておらず、家庭用の冷凍食品が珍しい時代でした。
その後、電子レンジの普及とともに数多くの冷凍食品が発売される中、同社のエビピラフは、なぜロングセラー商品に成長することができたのでしょうか。商品をどのように改良したのでしょうか。開発経緯などについて、同社製品戦略部リテールグループ長の多田裕之介さんに聞きました。
さまざまな料理にアレンジ可能
Q.そもそも、冷凍食品の「エビピラフ」を販売した経緯について、教えてください。当時、エビピラフは飲食店で人気のメニューだったのでしょうか。
多田さん「当社が家庭用の冷凍米飯市場に参入し、『エビピラフ』(現在は『具だくさんエビピラフ』)を発売したのは、1973年6月です。当時、液体窒素などを供給する工業ガス会社だった『日本酸素』(現在は日本酸素ホールディングス)の子会社で、エビピラフやチキンライスなどの業務用冷凍食品を製造していたフレック(2003年に味の素冷凍食品が吸収合併)と業務提携を行い、これらの製品を家庭用商品として新たに発売しました。
そもそも、『冷凍米飯』が誕生したきっかけは、フレックの従業員が液体窒素の実験を行う中で、弁当用に持参していた白米を液体窒素の中に落としてしまったことだといわれています。その際、きれいなつぶつぶの冷凍白米ができたそうです。
発売当時、エビピラフは、学校給食や喫茶店などで人気のメニューで、1990年代までは外食市場で人気でした。電子レンジの普及率とともに、家庭用の冷凍食品事業に参入するメーカーが増え、その中でエビピラフを商品化する動きが広がったと認識しています」
Q.当時はどのようにエビピラフを凍らせていたのでしょうか。
多田さん「発売当時は液体窒素を使用後、マジックフリーズという冷凍設備を使い、マイナス196度で一粒ずつ凍らせていました。この技術は、お米のパラパラ感を保ちながら、フライパンで簡単に解凍できる点が特長です。
その後、当社が独自に開発したターボ冷凍機を使うようになりましたが、フロンなどの代わりに自然冷媒で冷却することで、環境に配慮しながらも、冷凍しても塊にならないパラパラなお米の食感を実現しています」
Q.エピピラフの発売当時は、どのような方法で商品をアピールしていたのでしょうか。
多田さん「商品の発売当時は、冷凍食品自体が一般家庭に普及していない時代でした。特にお米の冷凍となると敬遠されがちでしたが、当社は、店頭実演販売などを通じて、おいしさを紹介してきました」
Q.エピピラフがロングセラー商品となった要因について、教えてください。
多田さん「飽きのこない味が人気の要因だと思います。また、エビがメイン具材であるため、日本人好みのメニューなのではないでしょうか。彩りもよく洋食メニューという意味でも時代背景的にご評価いただけたと聞いています。
エビピラフはオムレツやドリアの具材に使えるほか、ケチャップで絡めてチキンライス風にしたり、カレー粉を絡めてドライカレー風にしたりするなど、アレンジがしやすいことから汎用性のあるメニューです。
現在、家庭用の冷凍米飯カテゴリーの市場規模は約800億円で、そのうち450億円がチャーハン類の市場、エビピラフ市場は80億円規模です。もともとこのカテゴリーは、『しっかりした味わいで、これだけで食事になる』という商品が多いのが特長ですが、エビピラフはチャーハンよりも、飽きのこない優しい味わいで彩りもよく、『親子の休日のランチ』として活用されるシーンが多かったです。
電子レンジの普及率は1970年で3%でしたが、1980年は37.4%、1990年は75.6%、2000年は95.3%と年々伸び続け、それに伴い、当社のエビピラフの売り上げも拡大していきました。発売当初はフライパン調理がメインの設計でしたが、現在では電子レンジ解凍を前提とした商品設計になっています」
Q.エピピラフの販売を続ける中で、どのように改良を重ねていったのでしょうか。
多田さん「休日の昼食時に、お客さまがお子さまと一緒に優しい味わいのエビピラフを食べていただくシーンを想像しながら、改良を加えていきました。エビはよりプリプリとした食感に仕上げたほか、彩りが良い野菜を具材として追加したり、できるだけ指定農場で栽培された品質の良い野菜を使ったりするなど、時代に合わせて改良を加えていきました。
また、現在の『具だくさんエビピラフ』は、シェフや料理学校の先生などの意見も聞きながら、少しずつ本格製法に近づける開発を長年行ってきました。シェフがお米を炒めてブイヨンと一緒に炊く製法にならい、じか火釜でバターやブイヨンと一緒に炊き上げて作っています。大手の冷凍食品メーカーの中でも、このように、じか火釜で炊きながらピラフを作っているのは、当社だけのようです」
Q.エビピラフの主な購買層について、教えてください。どのような場面で食べられることが多いのでしょうか。
多田さん「最近では、冷凍米飯カテゴリーの売り上げ構成比の約4割が、60代以上のお客さまになってきています。エビピラフも同様で、昔からご愛用いただいているお客さまが多いと思います。30~40代の構成比は全体の約3割です。新型コロナウイルスの影響で一時期、在宅勤務をする人が増えましたが、現在も自宅で働いている人の中には、在宅時のランチとしてご愛用いただく人もいらっしゃいます。
自宅で食べるケースに比べると、弁当箱に入れて持ち歩くケースは相対的に少ないですが、お子さまの遠足にエビピラフおにぎりを作るというお客さまもいらっしゃいます。いずれにしても、エビピラフは、エビとカラフルな野菜の見た目がウキウキした気持ちにさせてくれるメニューだと思います」
(オトナンサー編集部)
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