「腸管出血性大腸菌O157」「サルモネラ」「カンピロバクター」…夏に気を付けたい食中毒 予防&対処を内科医に聞く
梅雨時期から夏にかけて食中毒が増えます。改めて食中毒の種類と緊急の対応法を糖尿病専門医で内科医の市原由美江さんに聞きました。
梅雨時期から夏にかけて増える食中毒。「腸管出血性大腸菌O157」「黄色ブドウ球菌」「サルモネラ」「カンピロバクター」「腸炎ビブリオ」などの細菌で汚染された食品を食べると、腹痛や吐き気、下痢、発熱などの症状が出ます。夏に流行する食中毒にならないよう、食事で気を付けることや食中毒になった時の緊急の対応などを糖尿病専門医で内科医の市原由美江さんに聞きました。
調理器具の汚染に注意! 食材はしっかり加熱! 食中毒にかかったら…
Q.夏に流行する食中毒はどんなものがありますか?
市原さん「以下の5つが代表的な例です」
(1)カンピロバクター
牛、豚、鶏の腸管内などに存在し、近年多いのが加熱不足の鶏肉による食中毒です。潜伏期間は1~7日程度で、症状は吐き気や腹痛、下痢などの胃腸炎症状と発熱です。
(2)黄色ブドウ球菌
人間の皮膚に存在し、特に手荒れや傷口に多く存在します。そのため、おにぎりやサンドイッチなどの手作りの食品からの感染が目立ちます。潜伏期間は約1~5時間で、症状は激しい吐き気や嘔吐(おうと)、腹痛、下痢、発熱などです。
(3)サルモネラ菌
牛、豚、鶏などの食肉や卵に存在します。生卵による感染が多いです。乳幼児や高齢者などの免疫力が落ちている場合は重症化することがあるため、新鮮な卵を選び、できれば加熱しましょう。潜伏期間は約6~72時間で、症状は吐き気や嘔吐、腹痛、下痢、発熱などですが、これらが1週間程度続くこともあります。
(4)腸炎ビブリオ
魚介類に存在します。4℃以下では増殖しないので、温度管理に注意して新鮮なものを食べるようにしましょう。魚を調理した後の包丁やまな板からの感染もあるので、調理器具は十分に洗いましょう。潜伏期間は約8~24時間で、症状は吐き気や嘔吐、腹痛、下痢、発熱などです。
(5)腸管出血性大腸菌(O157)
大腸菌の一種で、「ベロ毒素」という強い毒素を出す菌です。動物の腸内に生息しており、食肉やそれに汚染された食品を食べることによって感染します。代表的な感染源は、生肉や十分に加熱していない肉です。75度以上で1分以上加熱すると死滅するので、肉の中心部が75度以上になるよう、しっかりと加熱することが大切です。
潜伏期間は4〜8日で、症状は、激しい腹痛と水溶性下痢、その後に血性下痢(下血)を認めます。乳幼児や高齢者は重症化することがあり、中でも「溶血性尿毒症症候群」を併発すると命に関わります。「溶血性尿毒症症候群」とは、溶血性貧血(赤血球が破壊される、つまり溶血して起きる貧血)や血小板の減少、急性腎不全が特徴の病気です。さらに、これに続いて脳症を引き起こすことがあり、どちらも死に至る可能性がある怖い病気です
Q.夏場、食中毒にならないよう気を付けた方が良いことはありますか?
市原さん「高温多湿の環境では細菌性の食中毒が増えます。魚や肉などの生鮮食品は購入したらできるだけ早く冷蔵庫に入れ、移動中も保冷剤を使うと安心です。調理したものは常温におかず、冷蔵庫、または冷凍庫で保存し、なるべく早く食べるようにしましょう。料理する前や生の食材を触った後は手をよく洗い、調理器具の汚染にも注意しましょう。食材は中までしっかりと加熱することも大切です」
Q.食中毒のような症状が出たときは、どのように判断し、どのような緊急対応をすれば良いですか?
市原さん「軽い嘔吐や下痢であればこまめに水分摂取をして様子を見てかまいません。しかし、子どもや高齢者は気付かないうちに脱水が進行することがあるので医療機関を受診することをお勧めします。もちろん、嘔吐や下痢が止まらない場合は早めに受診しましょう」
Q.食中毒になると救急車で搬送されるニュースを見聞きしますが、食中毒を疑ったとき、すぐに病院に行くのか、または症状が治まってから行った方がいいのか、タイミングはあるのでしょうか?
市原さん「症状が治まってから受診しても病院でできることは少ないです。嘔吐や下痢が止まらない場合は脱水の補正が必要なので早めに病院へ行きましょう」
Q.食中毒によって、内科、消化器内科などかかる科に悩むことがあると思います。アドバイスをいただけるようでしたら教えてください。
市原さん「症状が軽い場合や治まりかけているときであれば消化器内科をお勧めします。急を要する場合は救急科が現実的です」
(オトナンサー編集部)
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