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シャンシャン1歳で祝福ムード そもそも、パンダの体色はなぜ「白黒」なの?

上野動物園の人気者、ジャイアントパンダのシャンシャンが1歳を迎えました。パンダの特徴といえば白黒の体色。なぜ、あのような特徴的な模様になったのでしょうか。

パンダの体色はなぜ白黒?(左がシンシン、右がリーリー)
パンダの体色はなぜ白黒?(左がシンシン、右がリーリー)

 東京・上野動物園のジャイアントパンダ「シャンシャン」が6月12日、1歳の誕生日を迎えました。その愛らしい姿を一目見たいと、シャンシャンのブースは連日大にぎわい。実際に足を運ぶことができない人のために、同園がライブ配信している動画も人気です。

 ところで、パンダの特徴といえば白黒のツートンカラーですが、あれほどはっきり白黒に別れた体色になったのには理由があるようです。オトナンサー編集部では、著書に「動物進化ミステリーファイル」(実業之日本社)などがある、「どうぶつ科学コミュニケーター」の大渕希郷さんに聞きました。

白黒の理由は「省エネ」?

 大渕さんは、かつて、上野動物園の飼育展示スタッフを務めた経歴の持ち主。2011年2月、後にシャンシャンの両親となる、リーリーとシンシンが来日した際の搬入作業に携わったそうです。

「当時、私は両生爬虫(はちゅう)類館の担当でした。ある日突然『2月21日は午前3時に動物園集合』と言われたことを覚えています。ジャイアントパンダが届くので、男手が必要とのことでした。中国から上野動物園までは、飛行機やトラックで運ばれてくるわけですが、最後は人の手でパンダ舎の中へ檻(おり)ごと運ばないといけなかったからです。深夜、とても重たい、黒い鋼鉄製の檻に入ったパンダを男性飼育スタッフ数名で運び込みました。とにかく重くて、眠気も吹っ飛んだ覚えがあります」(大渕さん)

 そもそもパンダとは、中国大陸の高地に生息する哺乳(ほにゅう)類でクマの仲間です。目、鼻、耳、手足が黒く、顔や腹部が白い、ツートンカラーがトレードマークですが、体型が似ている他のクマたちは、白や茶色など単一色のものばかり。なぜパンダは特徴的な体色に進化したのでしょうか。

 パンダの進化には諸説あるとしつつ、大渕さんは次のように話します。

「最新の学説では、ズバリ『省エネ』説が有力です。成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地の情報によると、アジアゴールデンキャットやジャッカル、ヒョウなどがパンダの野生での天敵のようです。白は雪景色、黒は木陰に溶け込み、これらの天敵から身を守ることができます。

ウサギのように、雪の時期は白、木々が茂る時期は黒と季節によって体色を変える動物も多いですが、パンダの主食の竹には、それほど豊富な栄養がありません。そこで、季節ごとに体色を変えるエネルギーがもったいないので、『常に白も黒もあればいい』という折衷案で2色になったとの学説が発表されたのです。冬服、夏服ではなく、まずはオールシーズンの服から選んでしまう私のようです(笑)なお、顔の白黒は、天敵への警告や仲間同士の見分けに使っていると考えられています」

「進化」と「進歩」は違う

 せっかく進化するのであれば、主食の方を変えたり、もっと効率的にエネルギーを生み出せるように生態を変えたりする方法もあったのでは。

「多くの方が勘違いしているのですが、『進化』は『進歩』ではありません。『進化論』の提唱者として知られるダーウィンも、実は進化という言葉さえ使っていません。『集団が世代を超えて変化していく』というそのままの意味で『Descent with modification(直訳=変化を伴う由来)』という言葉を使っていました。生物の進化は、以前より優れたものになるのではなく、『環境に適したものになる』ということなのです。

パンダは、竹がたくさん生えている中国の高地に暮らしています。栄養の少ない竹が主食であれば、他の動物と奪い合う必要もなく、食べるものに困りません。“省エネスタイル”で森の中に隠れることができる白黒の体色は、パンダが生息地の環境に順応していった結果なのです」

<主な参考文献>
倉持浩「パンダ ネコをかぶった珍獣」(岩波科学ライブラリー230)
成都ジャイアントパンダのホームページより「【パンダ知識】野外での天敵」
Tim Caro,Hannah Walker,Zoe Rossman,Megan Hendrix,Theodore Stankowich “Why is the giant panda black and white?” Behavioral Ecology,Volume 28,Issue 3,1 May 2017,Pages 657-667

(ライフスタイルチーム)

大渕希郷(おおぶち・まさと)

どうぶつ科学コミュニケーター

1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園、日本科学未来館勤務、京都大学野生動物研究センター・特定助教を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。著書に「絶滅危機動物」「爬虫類・両生類」(いずれも学研ポケット図鑑)、「絶滅危惧種 救出裁判ファイル」「動物進化ミステリーファイル」(いずれも実業之日本社)など。公式ホームページ(http://www.sky.sannet.ne.jp/masato-oh/)。

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