春の食材「菜の花」、実は優秀! アンチエイジング&美肌、がん予防にも? 管理栄養士が解説
春を感じられる食材の一つ「菜の花」。スーパーなどでも手軽に購入できる菜の花には、どんな栄養素が含まれているのでしょうか。管理栄養士が解説します。

春の訪れを伝える食材の一つ「菜の花」。小さなつぼみがたくさんついた見た目が特徴的で、スーパーなどでも多く出回っています。一方で、「菜の花」に含まれている栄養素については「あまり知らない」という声も少なくありません。
春を感じられる食材「菜の花」には、どんな栄養素が含まれているのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。
ビタミンCはホウレンソウの約4倍
Q.そもそも「菜の花」とはどんな食材ですか。
岸さん「菜の花は、アブラナ科アブラナ属に属する全ての花のことで、『菜の花』という特定の花や野菜を指す名称ではありません。観賞用は『花菜(はなな)』とも呼ばれます。
アブラナ属の野菜には小松菜、ハクサイ、キャベツ、ブロッコリーなどがあり、さまざまな野菜が菜の花に分類されますが、スーパーなどで販売されている菜の花は、その多くが食用に開発された『菜花(なばな)』という品種で、和種と西洋種の2種類があります。和種は花茎、つぼみ、葉を食べますが、西洋種は花茎や葉を食べます。いずれも特有のほろ苦さがありますが、ゆでることで甘みが出るので、お浸しや和え物などでおいしく食べられます。
店頭には12月ごろから並び始めるので、一足早く春を告げる食材の一つといえます。菜の花の開花時期は2月〜5月ごろで、食用は11月〜4月ごろまで出回ります。旬を迎えるのは1月〜3月ごろです。日本国内の主な生産地は千葉県で、次いで徳島県、香川県、高知県です。
なお、菜の花は植物油の原料としても使われ、『油菜(あぶらな)』や『菜種(なたね)』などとも呼ばれます。食用だけでなく、観賞用として植えて花畑にしたり、切り花などに利用されたりと、春によく見かける花の一つでもあります」
Q.食用の「菜の花」に含まれている栄養素と効果、カロリーを教えてください。
岸さん「菜の花は緑黄色野菜の一種で、さまざまな栄養が豊富に含まれている食材です。中でもビタミンB群、カルシウム、カリウムといった多くのビタミンやミネラル類、食物繊維をバランスよく含んでいます。抗酸化作用のあるβカロテン、ビタミンC、ビタミンEが豊富で、特にビタミンCはホウレンソウの約4倍も含まれます。不足しがちな葉酸や鉄分も、野菜の中ではトップクラスの含有量です。
これらの相乗効果により、貧血や高血圧、便秘予防とともに、老化や病気の原因となる活性酸素の発生を抑える作用、免疫力の向上、美肌効果などが期待できます。なお、文部科学省の『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』によると、カロリーは100グラムあたり33キロカロリー(和種)です。
また、菜の花には『シニグリン』という成分が含まれ、細胞内に含まれる分解酵素と混じり合うと、『アリルイソチオシアネート』という物質に変わります。アリルイソチオシアネートは菜の花がもつほろ苦さのもととなるもので、ワサビやダイコンにも含まれているアブラナ科特有の成分です。血液をサラサラにする効果の他、近年はがんや血栓の予防効果が高いことでも注目されています」
Q.菜の花の上手な選び方や、お勧めの食べ方、注意点は。
岸さん「選び方としては、つぼみのままのものをお勧めします。花が咲いてしまうと口当たりが悪くなる他、苦みやえぐみが強いことがあるためです。菜の花は通常、茎が切られた状態で売られているので、切り口がみずみずしく、しなびていないかを確認してください。中心部に空洞がある菜の花は、古くなった状態のものです。茎の軸をチェックし、鮮やかな緑色でやわらかいものを選びましょう
ビタミンCや、先述のアリルイソチアシアネートは熱に弱い栄養素です。そのため、ゆで過ぎると豊富な栄養素が減少してしまう上、菜の花特有の魅力である香りや苦味、食感も損なわれてしまいます。ゆでる場合はたっぷりのお湯に茎の部分から入れ、30秒くらいしたら葉の方まで入れて、長くても全体で1分程度ゆでれば十分でしょう。
スープや汁物に使うと、水溶性の栄養素も摂取できるのでお勧めです。炒め物やパスタなどに使用し、油と一緒に摂取すれば、βカロテンやビタミンEといった脂溶性の栄養素の吸収率がアップします。
また、菜の花には不溶性の食物繊維が豊富に含まれています。食物繊維には腸内環境の改善作用があるため、便秘解消に効果がありますが、摂取し過ぎると逆に便を固くしてしまうことがある他、消化不良の原因にもなるので、一度に大量に食べることはやめましょう。
なお、先述したように、菜の花はアブラナ科の植物です。アブラナ科の野菜にアレルギーがある場合は、菜の花でもアレルギーを引き起こす可能性があるので注意しましょう」
(オトナンサー編集部)
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