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節約&投資で早期リタイア目指す「FIRE」が話題に その問題点とは?

「自己責任論」と結び付く

 日本におけるFIREブームは、低成長時代の自己防衛ツールという側面が強いので、自己責任化の流れにも注意が必要です。具体的には、社会保障が先細り、安定的な報酬が望めず、経済状況の好転も見込めない昨今、他人に頼らずに、自らのライフスタイルを変革することで乗り越えるという思想です。皮肉なことに、これが岸田文雄政権の「資産所得倍増プラン」とシンクロしていることは言うまでもありません。

 つまり、「もう国は君たちの面倒を見ていられないから、老後の備えは自分たちでどうにかしてくれ」という最後通告であり、そのための地ならしがNISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充・恒久化というわけです。

 自己責任により、人と人のつながりが希薄になればなるほど、お金への依存度は高まります。すると、FIREの目的化が起こりやすくなり、生活が貧相なものに成り果てるかもしれません。

 前掲書の「お金か人生か」では、倹約は「たった1人の孤独なレンジャーになって、すべてを自前主義で行うということではない」として、さまざまなコミュニティーの一員となって、貸し借り、物々交換、共有などの互恵経済の輪に入ることが推奨されています。「コミュニティーと関わることが幸福(そして倹約)につながる1つの道」と断言するほどです。

 私たちは、社会的な課題を自己責任で解決せよという「時代の要請」を信じて疑わず、気付けば「すべてを自前主義で行う」という思い込みにも拘束されているのかもしれません。そういう意味で、FIREブームは現代特有の問題を浮き彫りにしている現象といえます。そう考えれば、この現象は、私たちが抱えている不都合な真実を再認識するためのきっかけになるかもしれません。

(評論家、著述家 真鍋厚)

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真鍋厚(まなべ・あつし)

評論家・著述家

1979年、奈良県生まれ。大阪芸術大学大学院修士課程修了。出版社に勤める傍ら評論活動を展開。著書に「テロリスト・ワールド」(現代書館)、「不寛容という不安」(彩流社)、「山本太郎とN国党 SNSが変える民主主義」(光文社新書)。

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