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坂口憲二さんが活動休止 指定難病「特発性大腿骨頭壊死症」とは

俳優の坂口憲二さんが休業に追い込まれた指定難病の「特発性大腿骨頭壊死症」。普段は耳慣れない病気ですが、その原因や症状、予防・治療法とはどのようなものでしょうか。医師に聞きました。

激しい痛みで歩行困難になることも
激しい痛みで歩行困難になることも

 俳優の坂口憲二さんが、国の指定難病である「特発性大腿(だいたい)骨頭壊死(えし)症」の治療に専念するため、芸能活動を無期限休止すると発表しました。心配や戸惑いの声が上がるとともに、耳慣れない病名にも関心が集中しています。特発性大腿骨頭壊死症とはどのような病気なのでしょうか。オトナンサー編集部では、医師の市原由美江さんに聞きました。

股関節に強い痛み、原因不明の難病

Q.はじめに指定難病とは何でしょうか。

市原さん「まず、難病とは『発病の機構が明らかでない』『治療方法が確立していない』『希少な疾患である』『長期の療養を必要とする』という条件を満たす疾患です。指定難病はさらに『患者数が本邦(日本)において一定の人数に達しないこと』『客観的な診断基準が成立していること』という2条件が加わり、医療費助成の対象になります。指定難病の指定はいくつかの専門会議を経て、最終的に厚生労働大臣が行います。平成30年4月1日時点では、331の疾患が指定されています」

Q.特発性大腿骨頭壊死症とはどんな病気でしょうか。

市原さん「大腿骨頭が血流不足により壊死に陥る病気です。多くは股関節の痛みを生じ、X線検査やMRI検査での骨の壊死所見で診断されます。日本での患者数は1万5000人程度です。発症の危険因子として『ステロイド』『アルコール』『(危険因子のない)特発性』に分けられています」

Q.特発性とはどういう意味ですか。

市原さん「特発性とは、『発症の原因が不明である』という意味の医学用語です。突発性(とっぱつせい)と混同されがちですが、こちらは『急に発症する』という意味です」

Q.この病気はどのような人が発症しやすいのでしょうか。また、遺伝との関連性はありますか。

市原さん「年齢は30~50代、ステロイド関連の場合は30代、性別では男性に多いとされています。遺伝との関連性は明らかになっていません」

Q.治療法はどのようなものでしょうか。

市原さん「杖による免荷(めんか)、適正体重の維持、股関節への負担の軽減などの生活指導や痛み止めで対応する保存的治療と手術療法があります。手術療法で痛みがなくなり、問題なく日常生活を送れるようになることはありますが、経過を十分に追う必要があるため、定期的な通院は必要です」

Q.予防法はありますか。

市原さん「危険因子別の予防法としては、まずはアルコール多飲が原因になり得るため、アルコールの適正摂取をすることです。ステロイドは他の病気の治療に必要であるので、自己判断で中止しないことが重要です。特発性のケースは原因不明のため、予防法はありません」

Q.アルコールやステロイドは、日常的にどれくらい摂取していると発症のリスクがあるのでしょうか。

市原さん「発症リスクの目安となる摂取量は、ステロイドの場合、プレドニゾロン換算で15ミリグラム/日以上の内服、アルコールの場合は日本酒で2合以上とされています。ただし、飲酒習慣のある人や、ステロイドを服用した人が必ず発症するというわけではありません。確かに、お酒の飲み過ぎや、ステロイドを多量に服用または投与されたことによって、発症する方がいることはわかっていますが、これはごく一部です。病名の頭に『特発性』とあるように現段階で原因と対策は不明であり、今後の原因究明と治療方法の確立が待たれます」

(ライフスタイルチーム)

市原由美江(いちはら・ゆみえ)

医師(内科・糖尿病専門医)

eatLIFEクリニック院長。自身が11歳の時に1型糖尿病(年間10万人に約2人が発症)を発症したことをきっかけに糖尿病専門医に。病気のことを周囲に理解してもらえず苦しんだ子ども時代の経験から、1型糖尿病の正しい理解の普及・啓発のために患者会や企業での講演活動を行っている。また、医師と患者両方の立場から患者の気持ちに寄り添い、「病気を個性として前向きに付き合ってほしい」との思いで日々診療している。糖尿病専門医として、患者としての経験から、ダイエットや食事療法、糖質管理などの食に関する知識が豊富。1児の母として子育てをしながら仕事や家事をパワフルにこなしている。オフィシャルブログ(https://ameblo.jp/yumie6822/)。eatLIFEクリニック(https://eatlife-cl.com/)。

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