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人気の「低温調理」、ネットに出回る「自己流レシピ」が要注意なワケを専門家に聞く

「低温調理」とは、そもそもどういう調理法で、どんな利点があるのか、ネット上で出回る自己流レシピの注意点などについて、料理研究家に聞きました。

「低温調理」とは?
「低温調理」とは?

「低温調理」が話題になっていますが、ネット上では「「自己流レシピで低温調理すると、食中毒の恐れもある」との情報もあります。低温調理とは、そもそもどういう調理法で、どんな利点があるのか、ネット上で出回る自己流レシピの注意点などについて、料理研究家の長田絢さんに聞きました。

温度管理、しっかりと

Q.そもそも「低温調理」とはどのような調理法なのでしょうか。

長田さん「通常の調理(高温調理)では、肉や魚をフライパンで焼いたり、沸騰状態の鍋で煮たりしますが、低温調理は、食材を耐熱性の袋に詰めて、空気を抜いて密閉し、湯せんや専用調理器を使って、比較的低い温度で加熱して調理します。

素材のみずみずしさやうまみを保ち、ジューシーにいただけるという利点があります。また、温度と時間の組み合わせ次第で食感が変わり、料理の可能性が広がります」

Q.どんな料理に向いているのでしょうか。

長田さん「代表的な料理では、ローストビーフ、ローストポーク、サラダチキン、鶏ハム、お魚のコンフィや(フランス語で『半生』の意味の料理)ミキュイ、チャーシューなどが挙げられます。低温調理をすることによって、食材本来の水分やうまみをそのままキープすることができるため、やわらかくておいしい料理が仕上がります」

Q.食中毒の危険性はないのでしょうか。

長田さん「確かに、低温で加熱するということは、その過程で菌が繁殖するリスクが大きくなったり、きちんとした温度管理ができていないと加熱が不十分になったりして、食中毒の危険性があります。厚生労働省では食材の安全性を保つため、食肉においては、中心温度75度で1分以上の加熱、または中心温度63度で30分の加熱を基準としています。ただし、その基準を満たしたからといって、リスクがゼロになるとは限りませんので注意が必要です。

専用の低温調理器を使用するか、食品用の中心温度計を使用して、しっかり管理しながら調理した方がよいでしょう」

Q.SNSに投稿されている低温調理の自己流レシピの中には、まねすると危険なものもあるといわれます。どのような点が危険なのでしょうか。

長田さん「SNSで投稿されている低温調理の自己流レシピの中には、ヨーグルトメーカーや炊飯器を使う方法もありますが、どちらの器具も、お湯を攪拌(かくはん)する機能がついていません。そのため火の通りにムラができてしまい、専用の低温調理器と同じ時間加熱したとしても、食中毒菌が死滅しない可能性があるため危険です。

また、通常のヨーグルトメーカーや炊飯器を低温調理に使うのは、本来の用途と異なるため、故障や事故の原因になりかねません。先述しましたが、専用の低温調理器を使用するか、食品用の中心温度計を使用して、しっかり管理しながら調理することをおすすめします」

Q.低温調理をする際の注意点、楽しむためにはどのような点に気を付けたらいいか教えてください。

長田さん「低温調理は、正しく慎重に調理を行えば、家でもプロ並みの料理の仕上がりを期待できる画期的な調理法です。ただし、低温調理での料理を楽しむためには、いつも以上に食中毒対策を行う必要があります。

基本的なことですが、新鮮な食材を使う、清潔な手や器具で作業する、生肉・生魚を素手で触ったら、その都度必ず洗うことも大切です。さらに『75度、1分』と同等の加熱殺菌の条件として、『70度、3 分』『63度、30分』などの目安がありますので、その通りの加熱を行い、中心温度計を適切に使用し、調理後の温度管理も怠らず、調理後はできるだけ早めに食べるようにしましょう。

安全な低温調理の方法で、ご自宅でもおいしいお料理を楽しんでくださいね」

(オトナンサー編集部)

【写真】プロ並みの味も! 低温調理の代表的な料理は?

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長田絢(おさだ・あや)

料理研究家、栄養士

食の専門家として、テレビ番組のコメンテーターを務め、料理番組に出演。情報誌への寄稿やウェブコラムの執筆なども行う。飲食店の企画やメニュー開発、フードコーディネート、オペレーション指導から、企業の商品開発、レシピ制作、プロモーション支援など幅広く活躍。地域の特産品を使用した商品開発や、地域活性化のためのイベント企画、プロモーションなどを行う地域創生事業プランナーとしても活動している。インスタグラムやYouTubeでも食の情報を発信中。著書に「スーパーで買える『肉』を最高においしく食べる100の方法」(ダイヤモンド社)がある。JapanFoodExpert(https://jfe-aya.jp/)。

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