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暴力団員を相手に…新米身辺警護員が招いた「2回の失敗」〜実録・ボディーガード体験談

「こいつらにわびろ」 “兄貴”との対峙

 そんなとき、大石が登場しました。年齢は40歳くらい、身長は180センチ弱で体重は100キロ近くありそうな、迫力のある男です。ピンストライプのスーツを着た、いかにも…な風貌でしたが、物静かですごみがありました。大石が現れると空気が変わり、チンピラたちの背筋がピンと伸びるのが分かるほどでした。細かいやりとりは覚えていませんが、大石が言うには、「おまえ(私)も変にイキがるんじゃない」「おまえの出方次第では、やぼなことはしないから、こいつらにわびろ」といったような内容だったと思います。

 私は、謝りはせず、代わりに「自分は管理人ではなく、金子さんの身辺警護だ」と話しました。すると、私の名前と会社名、そして「いつまでこの現場を続けるのか」というようなことを聞かれました。名前と社名は教えましたが、「期間はあなた方次第」のような答え方をしたと思います。その後、大石はどこかに電話をして、私は舎弟衆に囲まれたまま5分ほど待ちました。その後、「おまえ、本当に警護員なんだな? なら、こちらも何もしないから、今後お互いに関わらないようにしよう」というようなことを言われたので、「異存ありません」と答えました。最初は私を、同業者と勘違いしていたようです。

 このような問題だらけのやり方でしたが、その場は何とか収まりました。そしてその後、金子さんへの目立った嫌がらせはなくなりました。しかし金子さんにとって、それまでの経験は本当につらかったのでしょう。問題が落ち着いて気が抜けたためか、2カ月後にお辞めになり、その後は警護員が管理人の代わりに、制服で常駐しました。

 余談ですが、現場が終了した数カ月後、街でばったり大石に出会ったのです。ある繁華街を歩いていると、見慣れた金エンブレムの高級車が止まっていました。私はナンバーを覚えていたので、「近くに大石がいる」と気付きました。辺りを見渡すと、10メートルくらい先から、大きな男がこちらに向かって歩いてきます。向こうも私に気付いたようだったので、近付いてくるのをその場で待ちました。大石は何も言わず、軽く会釈をしただけでした。私も会釈を返し、その場を去りました。

 今回、お話ししたような暴力団絡みのケースは、つい20年くらい前までは頻繁にあったご依頼です。近年でも、相手が反社とは知らずに取引を始めてしまった企業など、一定数のご依頼はあります。しかしそれよりも、親族間の争いや元恋人のストーカー行為、会社と従業員のトラブルなど、一般の人たちのトラブルに関するご依頼が増えているのが現状です。

(一般社団法人暴犯被害相談センター代表理事 加藤一統)

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加藤一統(かとう・たかのり)

一般社団法人暴犯被害相談センター代表理事

1995年より身辺警備(ボディーガード)に従事し、これまで900件以上の警護依頼を請け負う。業界歴26年。現在は、優良なボディーガード会社や探偵会社を探すユーザーに向けた無料紹介所「ボデタンナビ」を主宰。紹介だけでなく、企業のセキュリティーから家庭の防犯まで、網羅的な質問にも答えている。護身・防犯用品の設計企画を行う「タカディフェンスデザイン」も運営。ボデタンナビ(https://bhsc.or.jp/)、タカディフェンスデザイン(https://www.t-d-design.com)、公式ツイッター(https://twitter.com/bodetan)。

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