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「化粧をしたまま」寝てしまった!…肌へのリスクは? 皮膚科医に聞く

帰宅後、化粧を落とさずに寝てしまった…そんなとき、肌では何が起こっているのでしょうか。化粧をしたまま寝ることで肌にどんな影響やリスクがあるのか、皮膚科医に聞きました。

化粧をしたまま寝落ち…肌への影響は?
化粧をしたまま寝落ち…肌への影響は?

 帰宅が遅くなった日の夜、つい面倒になって、化粧を落とさずにそのまま寝てしまった…という経験がある人は多いのではないでしょうか。化粧を落とす際は、化粧水などでのお手入れもセットになるので、疲れて帰宅した日は面倒になりがちですが、「翌朝に後悔するのを分かっていながら、いつもやらかしてしまう」「顔に汚れた雑巾を載せて寝ているようなもの、ってよく聞くけど…」「肌に悪いイメージはあるけど、実際はどうなんだろう」など、疑問の声もあります。

 化粧をしたまま寝てしまうことは、やはり肌にとってよくないのでしょうか。実際のところについて、アヴェニュー表参道クリニックの佐藤卓士院長(皮膚科・形成外科)に聞きました。

メークの油分や皮脂が酸化、肌トラブルに

Q.化粧をしていない「すっぴん」のときと、化粧をしているとき、肌はそれぞれどのような状態なのでしょうか。

佐藤さん「化粧には肌を保護する働きがあります。日中の刺激、例えば紫外線やほこり、大気汚染、こすれなどの物理的刺激から肌を守る他、肌の水分蒸散を防ぎ、乾燥から肌を守る働きもあります。逆に、下地やファンデーションなどを付けない『すっぴん』のときは、日中の刺激を肌が直接受け、水分蒸散が過剰に起きて乾燥していきます。乾燥状態が続くと、代償的に皮脂分泌が増え、肌が脂ぎってくるようになります。つまり、日中に化粧をしているときは、『すっぴん』状態に比べて肌の水分蒸散が抑えられ、皮脂の量が過剰にならない状態が保たれているといえます」

Q.化粧をしたまま寝てしまうと、やはり肌によくないのでしょうか。また、「化粧をしたまま寝る=顔に汚れた雑巾を載せて寝るようなもの」とよく聞きますが、これも正しいといえるのでしょうか。

佐藤さん「化粧は先述の通り、日中の肌の保護にはよいのですが、ずっとつけたままだと肌に悪影響を及ぼします。ファンデーションには、肌との密着性を高めるため、油性成分や顔料が多く使われています。落とさずにいると、肌の汗と混じり合い、微生物の温床になる可能性があります。

また、化粧をしたままだと、メークの油分や日中に分泌した皮脂が、皮膚表面で徐々に酸化していきます。酸化した油分は『過酸化脂質』というものに変わり、これが肌にとって刺激物となります。刺激を受け続けると肌荒れを起こし、肌表面の角層(角質層)が厚くなってごわつきやくすみが発生します。また、過酸化脂質が毛穴を詰まらせ、菌が増殖してニキビの原因にもなりますし、さらに毛穴の黒ずみ、開きなどの肌トラブルを引き起こします。

なお、『汚れた雑巾』は、あくまで例え話であって、そこまで不衛生かつ汚染されているわけではないです。とはいえ、化粧したまま寝ることは、日中に付着したさまざまな汚れが肌に触れ続け、また化粧の成分自体も酸化し、さらに皮脂や汗が長時間肌にとどまる状態となるので、肌には悪影響を及ぼし得るでしょう」

Q.仮に、化粧を落とさずに寝てしまう日が、何日も続いた場合、肌はどのような状態になると考えられますか。

佐藤さん「化粧をしたまま寝る回数が増えれば増えるほど、肌へのダメージはどんどん蓄積されていきます。そうすると肌が乾燥し、カサカサしてきて、徐々に肌荒れが進行し、赤みやざらつきが出てくるようになります。ニキビも多発するようになると考えられます。また、毛穴の黒ずみ、開きなども目立つようになり、くすみやシミが出てくるようになります。長期的には肌老化が進行し、たるみが目立つようになるでしょう」

Q.肌以外に、化粧をしたまま寝ることでダメージが考えられるパーツはありますか。

佐藤さん「口紅をつけたまま寝てしまうと、唇の荒れや乾燥の原因になります。唇荒れや乾燥が続くと色素沈着が起こり、くすんだ唇になってしまいます。また、目の周りの化粧、特にマスカラをつけたままにしておくと、まつげがもろくなってしまい、すぐに抜けやすくなることがあります。また、まつげの毛包(もうほう)にマスカラの粒子が詰まって炎症を引き起こす恐れもあり、目が腫れたり、細菌が長く居座ると結膜炎を誘発したりすることもあります」

Q.もし、化粧をしたまま寝てしまった場合、どうすればよいですか。また、翌日もすぐに化粧してよいでしょうか。

佐藤さん「朝、起きたらすぐにメークを落としましょう。いつもより多めにクレンジングを使用し、クレンジングを塗ったままいつもより長めに置いておき、クレンジングとメークをなじませます。洗顔前にお風呂に入って汗を流すと、毛穴の奥から汚れをしっかりと取ることができます。また、スチーマーを使用したり、顔にホットタオルを載せて温めたりすることでも毛穴が開き、汚れが落ちやすくなります。ホットタオルは顔を温め、血行促進効果もあります。

クレンジング後は、保湿力が高いローションでしっかり保湿をして、さらに乳液やクリームで保湿を高めましょう。化粧をしたまま寝てしまった翌日の肌はデリケートな状態になっているので、しっかり落とそうとしてゴシゴシと力が入りがちになるのを抑え、全ての動作を優しく丁寧に、時間をかけて行いましょう。

翌朝の化粧は、肌に刺激になるようなことは避けたいので、基礎化粧品のみでフルメークは避けるのがベストですが、どうしても必要な場合は、前提としてしっかり保湿してから化粧を始めましょう。その日はなるべく低刺激の化粧品を選び、できる限り薄めのナチュラルメークにするのがお勧めです」

(オトナンサー編集部)

【画像】化粧をしたまま寝るとリスク大! 「ニキビ」の種類はこんなにある

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佐藤卓士(さとう・たかし)

医師(皮膚科・形成外科)・医学博士

アヴェニュー表参道クリニック院長。京都大学農学部卒業。九州大学医学部卒業。岡山大学医学部、杏林大学医学部、都立大塚病院形成外科にて研鑽(けんさん)を積み、現在に至る。日本形成外科学会認定専門医、日本レーザー医学会認定レーザー専門医。日本形成外科学会、日本皮膚科学会、日本美容外科学会、日本レーザー医学会、日本手外科学会、日本創傷外科学会所属。アヴェニュー表参道クリニック(https://www.a6-clinic.com)。

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