「乳児に蜂蜜を食べさせてはいけない」理由は? 命に関わる事態も?
「1歳未満の乳児に蜂蜜を与えてはいけない」ことはよく知られていますが、なぜ蜂蜜が危険なのか、1歳以上なら本当に大丈夫なのか、産婦人科医に聞きました。

3月8日は「みつばちの日」です。その語呂合わせから、業界団体が制定したものだそうです。ミツバチが作る「蜂蜜」といえば、独特の優しい甘さが特徴的で、市販品をそのまま楽しむのはもちろん、家庭での手作りお菓子などでも重宝されていますが、一方で、1歳未満の乳児にとってはリスクが高い食品としても広く知られています。しかし、中には、「なぜ蜂蜜が危険なの?」「1歳になったら本当に大丈夫?」「もし、0歳の子が少しでも食べてしまったらどうすればいい?」など、疑問を持つ人も少なくないようです。
「1歳未満の乳児に蜂蜜を食べさせてはいけない」のは、なぜなのでしょうか。産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。
最悪の場合、死に至ることも
Q.「1歳未満の乳児に蜂蜜を食べさせてはいけない」ことは広く知られていますが、なぜ、乳児に蜂蜜を食べさせると危険なのでしょうか。
尾西さん「蜂蜜には『ボツリヌス菌』が混入していることがあり、それによる『乳児ボツリヌス症』を発症する危険性があるためです。ボツリヌス菌は、土の中や井戸水の中などに広く存在している細菌で、たとえ口に入ってしまったとしても、大人の腸内では腸内細菌に負けてしまうため、問題になりません。しかし、1歳未満の乳児はまだ腸内環境が整っておらず、腸内でボツリヌス菌が増殖し、毒素を出すことで症状が現れます。摂取量の問題ではなく、食べた部分にボツリヌス菌がいた場合は、どんなに少量でもかかる危険性があるため、注意が必要です。また、ボツリヌス菌は熱に強く、加熱で殺菌しづらいことも大きな特徴で、パンやお菓子、ハムなどの加工品などの原材料に入っていることもあります」
Q.乳児が蜂蜜を食べてしまった際に起こり得る症状とは。
尾西さん「ボツリヌス菌の産生する毒素により、便秘▽ミルクの飲みが悪い▽元気がない▽泣き声が弱々しい▽首のすわりが悪い―といった症状を呈し、最悪の場合は死に至ります」
Q.「1歳になったら蜂蜜を食べても問題ない」とされていますが、本当に大丈夫なのでしょうか。
尾西さん「1歳になれば離乳食も始まり、しっかりと解毒できる腸内環境が整ってくるので問題ありません。これまでに報告された発症の最高月齢は11カ月です。ただ、体調が悪いときなどは免疫力が低下していることもあるので、1歳になっていても、与えるのはやめましょう」
Q.万が一、1歳未満の乳児が、蜂蜜や蜂蜜入りの食品を口にしてしまった場合、どうすればよいですか。
尾西さん「蜂蜜に、高頻度でボツリヌス菌が混入しているというわけではないので、食べてすぐに感染するわけではありません。ただ、万が一、乳児が食べてしまった場合は、5日以上の便秘▽表情のこわばり▽ミルクの飲みが悪い▽泣き声が弱々しい▽ぐったりしている▽よだれが多い▽息がしづらそうにしている―といった症状が数日から1カ月の間に見られないか注意し、もし疑わしい場合は小児科を受診して、経緯を話しましょう。
病院では、呼吸管理や点滴加療といった全身状態を改善する治療に加えて、抗体を投与することで毒素の影響を軽減する治療も行われます」
Q.1歳未満の乳児が、蜂蜜や蜂蜜入りの飲食物を口にしないように、家庭内でどのような意識・行動が求められるでしょうか。
尾西さん「乳児ボツリヌス症に関しては蜂蜜ばかりが取り上げられますが、井戸水や自家製野菜スープ、コーンシロップ、缶詰から発症した例もあります。なお、黒糖もよくボツリヌス菌混入の可能性を指摘されますが、日本では黒糖から発生したボツリヌス菌感染例は1例も報告されていません。
ママやパパが、『“赤ちゃんに蜂蜜はNG”なんて常識』と思っていても、意外と知らないこともあるので、家族みんなで共有するようにしましょう。また、蜂蜜はパンやお菓子以外にも、調味料としていろいろな食品に入っているので、赤ちゃんの口に入るものは原材料名の表示を確認するようにしましょう」
(オトナンサー編集部)
コメント