接客業の女性、職場で「眼鏡」許されていないって本当? 専門家に聞く
接客業の女性の中には、職場で眼鏡をかけることが許されていない人がいるようです。そうしたルールや暗黙の了解は、なぜ存在するのでしょうか。

ショールームや宴会場のスタッフ、百貨店の受付など接客業に携わる女性を見ると、眼鏡を掛けている人をあまり見かけないように思います。ネット上には、「接客業の職場では眼鏡を掛けることが許されていない」という投稿もあります。接客業の世界では、「眼鏡を掛けてはいけない」というルールや、暗黙の了解があるのでしょうか。もしあるなら、なぜでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。
女性に華やかさ求める風潮
Q.接客業で、「眼鏡を掛けてはいけない」というルール、あるいは暗黙の了解がある職場は存在するのですか。どのような接客業で、そうしたルールがあるのでしょうか。
大庭さん「『基本的に眼鏡を掛けないこと』というルールや暗黙の了解がある職場が存在することは事実です。例えば、百貨店や飲食店、ショールーム、美容サービスを提供する店などの接客スタッフは、そのようなルールや暗黙の了解のもとで働いている人が多いです」
Q.なぜ、接客業では眼鏡を掛けてはいけないのですか。
大庭さん「『華やかさが失われる』『冷たく感じる』など、見た目に関するネガティブな印象が存在するからです。接客業はリピート客が増えるほど、あるいは、来店客の1回当たりの消費金額が増えるほど会社(店)の売り上げが向上します。
そして、接客スタッフの与える印象が、客の来店頻度や消費意欲の向上に対して影響を与えます。接客スタッフの与える印象に関しては、心のこもった接客が最も影響を左右するのはもちろんのことですが、見た目による影響も小さくはありません」
Q.「眼鏡を掛けてはいけない」とされるのは女性だけなのですか。そうであれば、それはどうしてでしょうか。
大庭さん「一般的に、『眼鏡を掛けてはいけない』というルールや暗黙の了解の対象となっているのは、女性です。見た目の華やかさに対する影響度が大きいのが女性だからです。
通常、女性の方が男性よりも『明るい』『柔らかい』『優しい』という印象を与えます。それが客の来店頻度や消費意欲に対して、良い影響を与えている部分もあるため、『女性の接客スタッフは眼鏡を掛けないことが望ましい』という考え方が接客業界では定着しているのです」
Q.「冷たく感じる」というネガティブな印象が眼鏡にあるとすれば、それは男女共通です。なぜ男性はよくて、女性は駄目なのでしょうか。
大庭さん「合理的な理由というものは存在せず、『男は度胸、女は愛嬌(あいきょう)』という旧来の日本人の感覚からくることによるものです。時代錯誤的ともいえますが、そのような考えのもとで、接客業においては、女性の接客スタッフについては特に、華やかさを重要視する価値観が存在していました。
そのことが現在でも、接客の表に立つのは主に女性スタッフで、男性スタッフは裏で支えている店などが多いことにつながっています」
Q.女性だけ眼鏡が駄目と言われることについて、「男女差別ではないか」と違和感を覚える人がいるようです。
大庭さん「男女の特性やそれぞれの良さを生かした配置を行うことに関しては、男女差別を問われる余地はないと考えます。しかし、女性スタッフの意思にかかわらず、半ば強制的に『眼鏡を掛けてはいけない』という考えを押し付けているのは、男女差別につながる問題だと考えます」
Q.今後、こうしたルール、あるいは暗黙の了解は続きそうですか、なくなっていきそうですか。
大庭さん「接客業界における『眼鏡を掛けてはいけない』というルールや暗黙の了解は、短期間では、なくならないと考えます。理由は、人による接客というものがなくなることはないからです。
しかし、今後、現在よりも訪日外国人による国内消費が増えたり、あるいは消費の主体が今の子どもや若者たちに変わっていったりすると、眼鏡を掛けた接客スタッフに対し『華やかでない』『冷たく感じる』などの印象を抱くことが総体的ではなくなり、『眼鏡を掛けてはいけない』というルールや暗黙の了解が衰退する可能性も考えられます。
加えて、今後、世の中全体で『ジェンダー平等』の価値観が定着することで、女性だけに華やかさを要求するなどの価値観が払拭(ふっしょく)され、先述したようなルールや暗黙の了解も、自然に淘汰(とうた)され消えていくのではないでしょうか」
(オトナンサー編集部)
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