現場は悲痛な叫びも 教員免許更新講習に代わる「研修管理」システム、今後の行方は?
大学入試改革など、高等教育を中心にしたさまざまな問題について、教育ジャーナリストである筆者が解説します。

「現場を見ていない大臣と官僚が考えそうなこと」「俺たちはロボットではない。教育のプロであり、人間なんだ」「ここまでされて、教員になりたい人って今後、出てくるのでしょうか?」
10年に1度の教員免許更新講習の義務付けをやめる代わりに、文部科学省が導入しようとしている「教員の研修履歴管理システム」について、9月に記事を書いたところ、ニュースサイトのコメント欄に、教員とみられる人からの悲痛な叫びが多数寄せられました。教員にとって負担が重い現制度よりも、さらに「管理」色が強まりそうな新システム。その後、どうなったのでしょうか。
現場の懸念よそに「審議まとめ」了承
研修履歴管理システムは教員免許更新制の「発展的解消」策として、中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)の特別部会が「審議まとめ」で打ち出したものです。10年に1度の免許更新講習の義務付けをやめる代わりに、校内外やオンラインで受けた教員研修の履歴を一元的に記録、管理する仕組みを構築しようというものです。
どんな研修を受けるかは、都道府県などの単位で定めている「教員育成指標」や各学校の教育課題に基づき、校長や副校長など学校管理職との「対話」によって決めるとしています。そもそも、今回の審議まとめは「主体的に学び続ける教師」の育成を目指そうというものです。一方で、教委や管理職には「対話」を義務付け、ふさわしい水準の研修を受けていると認められない場合、教員に職務命令を出し、従わない場合は「懲戒処分の対象となり得る」という文言まであることも否定できません。
中教審には、小学校で採用試験の倍率が2倍を切る県が出るような「教員の不人気」状態を何とかしたいという問題意識があります。しかし、冒頭で紹介したコメントにもあった「ここまでされて、教員になりたい人って今後、出てくるのでしょうか?」というのが現場の正直な受け止めでしょう。
中教審の主要委員も「論調」には疑問
審議まとめは10月いっぱい行われた任意の意見募集(パブリックコメント)で1126件もの意見が寄せられた後、11月15日の特別部会で了承。終了後すぐ、渡辺光一郎部会長(中教審会長)が末松信介文部科学相に手渡しました。同30日、文科省はホームページに「皆さんからの10の質問にお答えします!」と題するQ&A集をアップしました。この説明で、審議まとめへの理解を得たい考えです。
2022年度概算要求には新システムの調査研究費を計上しており、間もなく決着する予算折衝で、どれだけ認められるかも注目点です。ところで、中教審の特別部会ではいよいよ、本丸の「教師の養成・採用・研修」の総合的な在り方について、本格的な審議が始まります。11月の特別部会では、教員免許更新制の検討などを通して浮かび上がった「検討の方向性」を確認するとともに、小委員会を設けて専門的な議論を行い、2022年夏ごろに一定の結論を得たい考えです。
この「検討の方向性」と題する資料をめぐっては、11月の会合で、中教審の副会長(大学分科会長)でもある永田恭介筑波大学長が「どうしても『管理』とか『制限』とかいう感じの論調に見える。(社会から)尊敬を感じられるような先生にならなければいけないのに、(管理職が先生を)縛るような書き方だ」と感想を述べ、複数の委員が賛同しました。教員と管理職との関係を巡って、現場の教員たちと同様の懸念を持つ中教審委員もいるわけです。
ただ、管理、制限の色彩はむしろ、新システムの方が強いかもしれません。12月10日に開かれた中教審の総会では、「管理」システムという名称を工夫するよう、要望する意見も出されました。年明けの通常国会で審議される、教員免許更新制の「廃止」法案(名目上は「発展的解消」)とともに、新しいシステムがどう制度設計されるか、2022年度も目が離せません。
(教育ジャーナリスト 渡辺敦司)
いや、ロボット以下で、教員としてのモラルや学力に疑問があるから、教員免許の更新制度ができたんだが…
政治活動をしている、学力不足の教員を、教員がサポートできていたら、そもそもこんな制度出来なかったんだと思うんだが