周囲に感染 「不安」「自責の念」を感じたら、どう解消したらいい?
新型コロナウイルスに感染した人が「周囲にうつしてしまったのでは…」と思うことがあるようです。こうした「自責の念」を感じやすいのは、どのような人なのでしょうか。

女優の松井玲奈さんが8月11日、YouTube公式チャンネルを更新、新型コロナウイルス感染で療養していた様子を語りました。38度後半の高熱が続いたものの、自宅療養で「全身の痛みで2時間以内で目が覚める。自分の想像していた症状と違う」などとつらい日々を振り返るとともに、「体がつらいだけではなく、気持ちの方もすごくつらくて、スタッフや共演者に迷惑がかかるようなことがあったらどうしようかという気持ちで、本当に不安でした」と、周囲の人たちに感染させなかったか、気になっていたことを涙ながらに話しました。
松井さんのような、不安や自責の念はどのような場合に感じるのでしょうか。また、そうした心理状態になっている人を周囲はどうサポートしたらいいのでしょうか。心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。
真面目で責任感の強い人
Q.新型コロナに感染・発症した人の中で「自分が周りの人にうつしてしまったのでは?」と不安になったり、自責の念を感じたりする人がいるようです。こうした不安や自責の念を感じるのは、どのような心理状態からでしょうか。
小日向さん「不安は『見えないもの』に対して生じますので、その見えないものが大きかったり、あるいは多かったりするほど増大していきます。今回の新型コロナは、治療法や予防法などで確立されたものがまだあまりなく、『見えないもの』の割合が非常に大きいウイルスです。
こうした状況が『自分が感染していたらどうしよう』といった不安だけでなく、自身が罹患(りかん)したときにも『自分が感じた大きな不安を他の人にも味わわせてしまっている』という自責感情につながっていると思います」
Q.新型コロナに関連して、自責の念を感じやすいのはどのような人でしょうか。
小日向さん「真面目で責任感の強い人は自責の念を感じやすいと思います。例えば、仕事においても責任を持って取り組んでいるからこそ、感染したとき、自分がその業務から一定期間離れることに強い自責を感じるのです。また、感受性の強い人も自責の念を感じやすいといえるでしょう。このタイプは、痛みなどの不快症状も強く感じる傾向があります。そのため、『こんなにつらい思いを他の人にも味わわせてしまっている』といった感情が強くなりがちなのです」
Q.そうした自責の念を感じている人がその思いや不安を軽減・解消するには、どのような方法が考えられますか。
小日向さん「方法の一つとして、『過去を考えないこと』があるでしょう。感染症に罹患した場合は、できるだけ隔離された状態で療養するため、どうしても、1人であれこれと考えてしまいがちです。しかし、この思考が自責の念をさらに強くする要因になります。とにかく、『今』を自分にとって心地よい状態で過ごすことに集中しましょう。
もちろん、感染率が上がるといわれる行動をして罹患した人は自責の念を感じて、大いに反省すべきですが、対策が完全に確立されていない現状では、しっかり対策をしていても罹患することはあり得ます。自責の念が強過ぎると脳が疲弊して、抑うつ状態に陥りやすくなります。そうなると『体は回復しても心が回復できない』という状態になりかねません。『体と一緒に心も回復する』という状況をつくることが大切です」
Q.感染者が自責の念を感じて、精神的に厳しい状態になっている場合、周囲はどのようにサポートするのが望ましいのでしょうか。
小日向さん「親しい人の口から発せられる自責の言葉を聞くことは、聞いている側からしても苦しいものです。そのためつい、『そんなに自分を責めちゃダメだよ』『誰でも罹患の可能性はあるから気にしないで』といった言葉をすぐ発してしまいがちですが、まずはどんな言葉も出さずに、本人が言いたいことや吐き出したい感情を聞いてあげましょう。誰かに吐き出すだけで楽になる感情があるというのは、コロナに関連しての自責感情に対しても同様です。
ただし、食欲がまったく戻らない、不眠が続いている、『消滅願望』を口にするなど、うつ症状に似た状態が見られる場合は、自分だけで支えようとせず、病院の受診など、専門家のサポートを提案することも忘れないでください」
Q.一方で、感染・発症しても周囲のことを気にかけない人もいるようです。これはどのような心理で、周囲はどう対応すべきでしょうか。
小日向さん「まず、状況として、日常であまり他人と接しない人は周囲への関心も薄くなっています。そうした状況にプラスして、本人が自己中心的な性格である場合は、感染によって、周囲を不快にする言動をしがちです。基本はそうした人には近づかず、自分の心身の健康を守ることが第一ですが、関わらざるを得ない場合は第三者、それも、より効果を期待できる第三者を絡ませるようにしましょう。
例えば、医師など専門家の介入や他の人の体験談を聞かせるといったものです。他者への共感能力は一朝一夕で身に付くものではないので、周囲が『他者に配慮しなさい!』と心理的な変容を迫っても、逆にこちらが疲弊する可能性が高いです。それよりも、感染拡大を防ぐことに焦点を当てて、本人の行動を変容させることに注力しましょう」
(オトナンサー編集部)
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