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「高齢期の健康を支えるもの」は?調査 高齢世代と若い世代で大きく違うのは?

「高齢期の健康を支えているもの」について調査を行うと、比較的若い世代と高齢の世代とで大きく違う項目がありました。「親世代の健康」を支えるものは何なのでしょうか。

高齢者の健康を支えるものとは?
高齢者の健康を支えるものとは?

 筆者が理事長を務めるNPO法人、老いの工学研究所で今年6月、「高齢期の健康を支えているもの」について調査を行いました(50歳以上の432人が回答)。「現在のあなたの健康維持に、大切な役割を果たしているものは何ですか?」と質問し、21項目から選択(複数回答可)していただきましたが、比較的若い世代と高齢の世代とで大きく違う項目がありました。

「安全な家」を最重視

「老いの工学研究所」の調査より作成
「老いの工学研究所」の調査より作成

 表の右端の列は「健康を支えるもの」として、年代による差(80歳以上と50代との差)が20ポイント以上あった項目です。トップは「安全な家であること」で、80代は50代より41ポイントも高く、約6割が「健康を支えるもの」と考えています。80代が思う「安全な家」とは、次の4つを指していると思います。

 1つ目は、段差や階段で転倒する危険が少ないこと。骨折して入院となり、そのまま介護を要する状態になってしまうような事態が避けられるという意味です。2つ目は、部屋の温度差によるヒートショックの危険がないこと。寒い部屋と暖かい風呂場など、急な温度差があると血圧が大きく変動し、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす危険があります。

 3つ目は防災面。地震や豪雨などの災害に耐えられる丈夫な家かどうか、避難しやすいかどうかです。そして、4つ目は防犯面で、高齢者を狙う犯罪が増えていることが背景にあるでしょう。

 50代では、これら4つの点はあまり気になりません。家の中でつまずいたくらいで入院するとは想像もしないでしょうし、ヒートショックも犯罪や災害も、現実に自分に起こって、それが健康を損なう可能性はなかなか考えないものです。

「助けてくれる人」の存在が大事に

 次に「緊急時に助けてくれる人がいる」が40ポイント、「身の回りのことを手伝ってくれる人がいる」が20ポイント上回っており、近くに支援してくれる人がいることが高齢期には重要になることが分かります。実際に具合が悪くなって、助けてもらった経験があるとか、お手伝いさんがいないと生活が難しいといった状況ではないのでしょうが「何があるか分からない」という不安が増してくるのが高齢期というもの。

 転倒などの事故や急病の際に、誰にも気付いてもらえなかったらどうするか。あるいは、重い物が運びにくい▽家電が故障した▽部屋の模様替えや電球の交換▽書類の文字が読みにくい▽新しい機器の使い方が難しい…といった“ちょっとした困り事”があるときも、尋ねる人や頼める人がいるかいないかでは大違いです。

 別の見方をすると「現在、大切な役割を果たしているもの」として、「安全な家であること」「助けてくれる人がいること」を挙げた人が約6割ですから、残りの4割の人は家の安全性や、近くに支援してくれる人がいないことへの不安を抱えている可能性があります。

65歳以上の最多は「家族の存在」

「老いの工学研究所」の調査より作成
「老いの工学研究所」の調査より作成

 2021年の高齢社会白書によると、高齢者がいる世帯は現在、全世帯の約半分です。そのうち、高齢の夫婦のみの世帯が約32%(827万世帯)、1人暮らしが約29%(737万世帯)で、合わせると、高齢者がいる世帯の約6割、約1560万世帯に上ります。そして、今後、高齢者のみの世帯も高齢の1人暮らし世帯も増加すると見込まれますから、高齢期の不安の内容を正確に捉えた対策がいっそう求められるといえるでしょう。

 高齢になると「病院・医師」「薬・健康食品」を頼りにするようになる――。こうしたことは50代でも容易に想像がつきます。しかし、家の安全性や近くの支援者の存在がここまで重要になってくるのは、意外に感じる人が多いのではないでしょうか。

 実際に年を取ってみないと分からないのは当然ですが、だからこそ、漠然と親の心配をしながら勝手な想像を巡らせるのではなく、十分な対話を通じて状況や心理を把握する必要があります。親は「余計な心配をかけたくない」という気持ちでいますから、心配事をなかなか口にはしません。それを踏まえて、子ども側からの積極的な働き掛けが求められるでしょう。

 ちなみに、65歳以上(293人)のみに絞って、「健康維持に大切な役割を果たしているもの」を集計すると、上位10項目は表のようになっています。高齢の親との対話のヒントにしてみていただければと思います。

(NPO法人・老いの工学研究所 理事長 川口雅裕)

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

NPO法人「老いの工学研究所」理事長

1964年生まれ。京都大学教育学部卒。リクルートグループで人事部門を中心にキャリアを積む。退社後、2012年より高齢者・高齢社会に関する研究活動を開始。高齢社会に関する講演や執筆活動を行うほか、新聞・テレビなどのメディアにも多数取り上げられている。著書に「年寄りは集まって住め ~幸福長寿の新・方程式」(幻冬舎)、「だから社員が育たない」(労働調査会)、「チームづくりのマネジメント再入門」(メディカ出版)、「速習! 看護管理者のためのフレームワーク思考53」(メディカ出版)、「なりたい老人になろう~65歳から楽しい年のとり方」(Kindle版)など。老いの工学研究所(https://www.oikohken.or.jp/)。

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