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ちゃんとしなさい→同じこと繰り返す しつけの「もぐらたたき」、どう防ぐ?

子どもが何か悪いことをして注意するとき、「もぐらたたき」ゲームのようになっていませんか。そんなときは、しつけの仕方を変えてみましょう。

(C)あべゆみこ
(C)あべゆみこ

 ゲームセンターにある「ワニたたき」や「もぐらたたき」のゲーム。次々に出てくるワニやモグラをハンマーでたたいて退治するゲームですが、学級崩壊しているクラスや家庭で子どもをしつけるとき、同じような状況に陥っているかもしれません。

学級崩壊で“馬の耳に念仏”

 ある小学1年のクラスの光景です。席が隣同士の子ども2人が互いをつつき合って、ふざけていました。それを見た担任の先生が2人のそばに近寄り、「何やってるの、ちゃんとしなさい!」と注意しました。時間にして、ほんの数秒です。この間に、別の子どもたちが「今、先生の注意はあの2人にいっているぞ。この隙に、隣の子とおしゃべりするチャンスだ」としゃべり始めたのです。すると、これが伝染し、クラス全体が私語で騒がしくなりました。

 本来なら、「自分たちもおしゃべりしていては同じことだ。注意されないように気を付けよう」と考え、“人のふり見てわがふり直せ”となってほしいのですが、一部の子どもに対する先生の注意は、他の子どもたちにとっては“馬の耳に念仏”状態でした。

 学級崩壊しているクラスは「“先生”対“生徒”」のなれ合いクラスになりがちです。子どもたちが先生を甘く見ているため、先生がクラスの誰かに注意しても、それを「自分ごとにもなり得ること」として落とし込めず、注意が右から左へ抜け出る状態になっているからです。同様のパターンで「教室から脱走」のケースもあります。1人の子どもが教室から出ていき、先生が呼び戻そうと教室を出ます。先生がその子を連れて戻ってくると、別の子ども数人がいなくなっている…というものです。

 このようなとき、子どもにどう対応するとよいのでしょうか。先生は、ふざけ合っている子どもたちのところに近寄って個別に指摘するのではなく、教壇から動かずに黙ります。その子たちを無言のまま、ジーッと見るのです。

 言葉は悪いですが、最初に騒ぎだした子どもたちを“やり玉”に挙げることで、他の子どもは「僕でなくてよかった」とホッと胸をなで下ろし、クラス全体が落ち着いた状態になります。「ふざけていると先生ににらまれて、やり玉に挙がってしまう」という“暗黙の了解”ができるわけです。さらに「おい、先生が見てるぞ。静かにしろよ」と言い出す子がいれば、クラスの秩序がより保たれていくでしょう。

 大人がつい連呼してしまう「ちゃんとしなさい!」「いい加減にしなさい!」という言葉ではなく、「今は何をする時間ですか」と問い掛けるようにして、子ども自身に「気付かせる」のです。

「なぜいけないか」説明を

かごに張った写真で“指定席”示す(筆者撮影)
かごに張った写真で“指定席”示す(筆者撮影)

 こうした対応は家庭でのしつけにも役立ちます。実際、親が年中無休で同じことで叱り、毎日、いたちごっこになっている家庭も少なくないでしょう。「早くしなさい!」「ちゃんとしなさい!」「いい加減にしなさい!」「こら!」「ダメ!」…これらの命令は、子どもにとっては曖昧で意味不明な指示です。たとえ一時的に行動が収まっても、命じられた言葉に条件反射で従っているだけなので、しばらくすれば、また同じことを繰り返しかねません。いわば、親の注意がBGMと化している状態です。

 こんなときは次のような「具体的な言い換え」を意識してみてください。

・ちゃんとしなさい、しっかりしなさい→「背中を伸ばして座ろうね」
・早くしなさい→「8時までにはご飯を食べ終えよう」。時計が読めない場合は「砂時計の砂が落ちるまでに片付けよう」「100数える間に片付けよう(声に出してカウントダウンしながら)」
・順番を守りなさい→「ブランコは○○君、△△ちゃんの次だよ。3番目だよ」
・きちんと片付けて→「かごに張った写真の通り、“指定席”に戻してね」

 食事中に子どもがスプーンで食器をたたいたとき、「○○ちゃん!」と子どもの名前を呼び掛けるだけだったり、「だめ」「やめなさい」と言ったりするだけだと、この指示や命令の意味を理解しないまま、条件反射で従うだけになってしまいます。つまり、子ども自身に「ああ、食器をおもちゃのようにして遊んではいけないんだな」ということが伝わっていないので、親の姿が見えなくなると、またすぐに同じことを繰り返すでしょう。

 中には「食器さんが割れちゃうよ。泣いちゃうよ」「危ないから」と理由付けする人もいますが、それは本当の理由ではありません。子どもは案外、「食器には神経が通っていないので泣くわけがない」「危なくはない」「プラスチックだから割れはしない」と分かっているものです。

 なぜそれがいけないのか、つまり、「食器はおもちゃではないし、太鼓でもない。食べ物を入れる道具であって、たたくものではない」という正しい理由を伝えましょう。子どもも自分が赤ちゃん扱いされていないことが分かり、言うことを聞くようになるでしょう。

 最後に忘れてはならないのは、小学校のクラスでも家庭でも、子どもが静かにしているタイミングを逃さず、また、食器をおもちゃにしていない瞬間を捉えて、「騒がず、静かにできたね」「スプーンでたたきたいのに我慢できているね」と褒めることです。努力しているのにそのことに気付いてもらえなければ、態度はまた元に戻ってしまうからです。もぐらたたきゲームのようなしつけにならないよう、気を付けたいものですね。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。著書は「1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ」「はずれ先生にあたったとき読む本」「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」など多数。ノンフィクション「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)。

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