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呼吸困難、肺炎で入院も…「防水スプレー」使用時の注意点は? 東京都に聞く

雨天時の外出のため、「防水スプレー」を使う人も多いと思いますが、誤った使い方で思わぬ事故が起きることもあるようです。

閉め切った部屋で防水スプレーを使うと…(東京都生活文化局作製のリーフレットより)
閉め切った部屋で防水スプレーを使うと…(東京都生活文化局作製のリーフレットより)

 梅雨入りの知らせが各地から届き、本格的な雨のシーズンを迎えました。雨天時の外出のため、靴やバッグに「防水スプレー」を吹き掛けている人も多いと思いますが、誤った使い方をして、呼吸困難に陥ったり、肺炎になったりして、入院する人もいるようです。

 東京都は、防水スプレーによる事故事例や安全に使うための方法をまとめたリーフレットを今年3月に作製・配布して、注意を呼び掛けています。防水スプレーの注意点について取材しました。

主成分は撥水性の樹脂

防水スプレーを吸い込んだ事故の相談件数(日本中毒情報センターのホームページより)
防水スプレーを吸い込んだ事故の相談件数(日本中毒情報センターのホームページより)

 防水スプレーの主成分はフッ素樹脂やシリコーン樹脂といった撥水(はっすい)性の樹脂で、靴やバッグ、衣服などに吹き掛けて、表面をコーティングすることで、雨や水滴から、靴、バッグを守ります。便利な半面、スプレーの成分を誤って吸い込むと体に悪影響を及ぼす恐れがあり、メーカーは「屋外で使用する」「使用時はマスクを着用する」などの注意点を製品に表示しています。それでも、誤った使い方による事故が後を絶たないようです。

 内閣府所管の公益財団法人で、各種の中毒事故の相談を受けている日本中毒情報センター(茨城県つくば市)の調査によると、スキーブームが起きた1992年から1994年、12月~3月のスキーシーズンを中心に、防水スプレーを室内などで使用して吸い込み、呼吸困難や肺炎で入院する事故が多発。1993年と1994年は年100件を超える相談が、同センターが開設する「中毒110番」に寄せられました。

 国やメーカーによる安全対策強化と注意喚起によって、事故の相談件数は減少しましたが近年、再び増加傾向にあり、2017年81件、2018年100件、2019年95件の相談がありました。最近の特徴として、雪のシーズンだけでなく、6月、7月の雨のシーズンにも事故が多いことが挙げられるとのことです。

 同センターによると、呼吸困難や肺炎は防水スプレーの細かい粒子を吸い込み、撥水性の樹脂が肺の中の肺胞に付着することによって、肺でのガス交換に支障を来すために起きると考えられているそうです。

「防水スプレーを安全に使いましょう」と題したリーフレットを今年3月に作製・配布した東京都生活文化局の担当者に話を聞きました。

Q.リーフレットを作製した経緯を教えてください。

担当者「日本中毒情報センターが公表しているデータなどから、2010年代に入って、防水スプレーの吸入事故が増加傾向にあり、近年は年間100件前後の発生があることが分かりました。

それを受けて、学識経験者や事業者団体などで構成する東京都商品等安全対策協議会が昨年10月から協議を重ね、商品自体の安全対策や都民向けに注意喚起することなどを都に提言。注意喚起のためのリーフレットを作製することになり、専門家のアドバイスも受けながら、A4判3つ折りのリーフレット6万部を作製して、都内各区市町村の保健所、消費生活センター、小売店、医療機関などに配布しました。都のホームページにも掲載し、ダウンロードできるようにしています」

Q.防水スプレーの使用状況について、昨年、アンケートを実施したそうですが、その結果を教えてください。

担当者「東京都在住の20歳以上の男女で、予備調査で『防水スプレーを使用したことがある』と回答した人1052人を対象に本調査を行いました。その結果、商品に注意表示されている『必ず屋外で使用する』『吸い込むと有害』『風通しの良い所で使用する』を知っている人はいずれも5割超でしたが、使用する際、『マスクをつける』に『当てはまる』『やや当てはまる』は計48.5%で、約半数にとどまりました。つまり、残り半分の人はマスクをしていないということです。

防水スプレーによる事故の経験については、自身や周辺の人などが吸い込んで、体調が悪くなったり、なりそうになったりした人が使用者の12.7%に上りました。体調が悪くなった経験のある人にその症状を複数回答で聞いたところ、回答した58人の中では『せき』50.0%や『気分が悪くなる・吐き気』41.4%が多く、『呼吸困難・息苦しくなる』も32.8%に上りました。58人のうち74.1%の人は当日中に症状が回復していましたが、1週間以上症状が治まらなかった人も5.1%いて、中には入院した人もいました。

事故の場所は『玄関』が35%で最も多く、防水スプレーの種類は『革靴用』が最多で、対象物も『革靴』が多いことが分かりました」

Q.リーフレットのポイントを教えてください。

担当者「事故事例やその傾向、吸入事故の症状、発生場所、種類・対象物の傾向、事故防止のポイント、防水スプレーの防水効果の原理などについて、イラストやグラフ、表を使って分かりやすくまとめました。事故防止のポイントとしては、次の点です。

・必ずマスクを着用して屋外で使用する
・屋外で風上から風下に向かって使用する
・一度に大量に使用しない
・(防水しようとする服を)身に着けたまま使うなど、顔の近くでスプレーしない
・子どもやペットのそばで使用しない
・火気の近くで使用しない

なお、先ほど紹介したアンケート結果の概要もリーフレットに掲載しています」

Q.防水スプレーの粒子を吸い込むと、呼吸困難に陥ったり、死亡したりすることもあるのでしょうか。一時期、ネットで話題になったことがあります。

担当者「リーフレット作成に先立って収集した事故事例から、呼吸困難に陥った事例については把握していますが、防水スプレーの吸入が直接的な原因となった死亡例については把握していません。なお、海外では死亡例があります」

Q.防水スプレーの粒子を吸い込んでしまったときは、どう対応すればよいのでしょうか。

担当者「気分が悪くなった場合は新鮮な空気が吸える場所に移動し、それでも気分や体調が回復しない場合は必ず、医師の診断を受けるか、日本中毒情報センターに相談してください。同センターが開設している『中毒110番』の電話番号もリーフレットに記載しています」

(オトナンサー編集部)

【画像】リーフレット「防水スプレーを安全に使いましょう」

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