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将来が不安…学生は「内定」を簡単に辞退できるのか

来春卒業予定の大学生・大学院生の就職内定率が過去最高となるなど、学生の売り手市場が続く就職活動ですが、内定が出ても入社に二の足を踏む学生も増えているといいます。そんな学生にとって、内定は簡単に辞退できるのでしょうか。

内定を辞退することは困難なのか

 2018年春卒業予定の大学生・大学院生の就職内定率が「過去最高」と報じられました。学生には売り手市場で、複数の内定をゲットする人も多くなっていますが、内定が出ても「第1志望ではない」「将来が不安」といった理由から、入社すべきか悩んでいる学生もたくさんいるようです。そうした学生にとって内定を辞退することは困難なのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

入社直前なら損害賠償請求のリスクも

Q.そもそも「内定」とは何でしょうか。また「内々定」との違いは。

牧野さん「まず『内々定』とは、内定日に『内定』する旨を企業が候補学生へ約束することです。経団連の採用選考に関する指針では、正式な内定日は卒業・修了年度の10月1日以降とあるので、それ以前に内定を出してはいけないルールとなっています。経団連加入企業は、それ以前には内定を出せないので、内々定を出すことで欲しい人材を内定解禁日よりも早めに確保しようとするのです」

Q.企業から内定を得ている学生は自分の意思で内定を辞退できるのでしょうか。

牧野さん「内定式に出席したり、内定承諾書へ署名・押印したりすることによって、雇用契約が成立します。学生が内定を辞退すれば、雇用契約を解除することができ、労働基準法上、辞退から2週間後に雇用契約が終了します。この場合、辞退の理由は問いません。ただし、入社直前に辞退したために、企業が代わりの内定者を確保することが事実上不可能な場合や、内定者研修に出席するなどして会社側に損害を与えた場合は、損害賠償請求をされるリスクがあります。そこで、内定を辞退する場合は、できるだけ早く伝えるなどの点に注意が必要です。このように、損害賠償請求のリスクこそありますが、だからといって内定の辞退そのものが認められないことはありません」

Q.学生が内定を辞退する場合、注意すべきことやマナーはありますか。

牧野さん「内定式に出席したり、内定承諾書へ署名・押印したりした後に内定を辞退する場合、企業に損害を与える前に、できるだけ早く辞退すべきでしょう。学生側からの内定辞退に法的問題がないとはいえ、辞退する際のマナーには気をつけるべきです。つまり、誠意を持って辞退を企業担当者へ伝えるべきであり、メールや電話で一方的に伝えることは絶対に避けましょう。企業側に損害を与えて損害賠償請求をされるリスクがあるほか(誠意をもって辞退を伝えた学生に対して、仮に損害を受けたとしても賠償請求をする企業は少ない)、大学の後輩の採用にも影響するからです。そこで、重要なのは、企業の採用担当者と面談して辞退を伝え、採用に多額の投資をした企業に理解してもらえるように、自分の言葉で事情を説明することです」

Q.逆に企業側が学生の内定を取り消せるのはどのようなケースでしょうか。

牧野さん「雇用契約が成立しているため、企業側が内定を取り消すことは『解雇』と解釈されます。つまり、いわゆる『解雇四要件』を満たす必要があるため、非常にハードルが高く事実上不可能です。解雇四要件とは(1)人員整理の必要性(経営危機にあること)(2)解雇回避努力義務の履行(配置転換などによる)(3)人選の合理性(4)手続きの妥当性(納得のいく手続き)です」

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。