結婚後、夫は娘オンリー…無視され続ける41歳妻の孤独、「没交渉夫婦」の実態とは
夫婦の一方が「面倒くさい」とコミュニケーションを放り出したり、無意識のうちに対話をやめてしまったりする「没交渉夫婦」。その事例を紹介します。

初対面の人とスムーズな会話ができない、たまの出社日に職場に行くと「何か話し掛けなきゃ」という強迫観念にとらわれ、「今日はコロナの感染者数、何人ですかねえ」と毎回同じ話題を振ってしまう――。そんな「コミュニケーション苦手系あるある」話を聞いたことがありませんか。
仕事の関係者であれば、何とかして会話をつなぎ、相互理解のために努力する意思が働きますが、それが夫婦となると「面倒くさい」とコミュニケーションを放り出す人や無意識のうちに夫婦の対話をやめてしまう人がいるのです。
家庭では逃げ場がないので、黙り込むのが楽ちん――。それは恐ろしい「仮面夫婦生活」への第一歩です。会話を最低限にミニマム化した「没交渉夫婦」のケースをご紹介します。
娘の意見しか聞かず、妻を否定する夫
加奈さん(仮名、41歳)には5歳と2歳の子どもがいます。同世代の夫とは会社の先輩・後輩の間柄で恋愛関係になり結婚。優しくて加奈さん思いだったという夫は交際中、ご飯をどこに食べに行くか、どんなデートをするかなどを必ず、加奈さんに聞いてくれていたそうです。加奈さんが「○○が食べたい」と言うといつも、「いいね」とうれしそうに賛成してくれていました。
そんな夫が変わったのは、1人目の子どもが生まれてからのこと。夫は溺愛型の父親で、子どもが話せるようになった頃から、加奈さんのことを少しずつ否定するようになっていったのです。
小さなことでいえば家族で出掛けたとき、それまでは加奈さんに「何食べたい?」と聞いていたのに今では必ず、長女の綾ちゃん(仮名)に聞くようになりました。綾ちゃんが「ラーメン」と言うと、夫は「いいよ」と即賛成。そこで、加奈さんが「夜ご飯にラーメンなんて、野菜も取れないしだめだよ」と言うと、「じゃあ、ママだけ他の店で食べればいいよね。綾とパパはラーメン食べに行こう」と言う始末。
「娘オンリー・妻スルー」の状態は続きます。車を購入したときも車種や色をある程度自分で決め、そこから、綾ちゃんに「どれがいい?」と選ばせました。加奈さんが「私も運転するんだから意見を聞いてよ」と言うと夫は不機嫌に。「せっかく楽しく選んでいたのに、ママが嫌な空気にするね」などと言い、加奈さんをないがしろにします。
結局、「ローンを組むのは俺だから」と最後まで妻の意見は聞いてくれなかったそうです。一方で、いつも、子ども2人とは和気あいあい。キャッキャ言いながら楽しそうに遊んでいます。一事が万事、その調子。家族みんなで楽しみたいと思っているのに、加奈さんはのけ者にされたような気がして寂しい気持ちになっています。
夫が妻に愛を注ぐのをやめ、子どもにだけ惜しみなく注ぐ――。一般的には出産以降、「妻が夫より子ども優先の態度を取る」事例が多いのですが、加奈さん夫婦は逆のようです。加奈さんの夫はある意味、子煩悩でいちずな人です。しかし、妻との交渉を無意識に避け、自分の言動が妻を傷つけていることに気付いていません。
加奈さんは自分の意見が聞いてもらえなかったり、否定されたりしたとき、その場の雰囲気が悪くなるのが嫌で「じゃあ、いいや」と意見を取り下げてきたそうです。落ち込んでも、何事もなかったかのように振る舞っていた、と。
そんな中、習い事のことで夫が綾ちゃんに意見を求める場面がありました。夫がいつものごとく、妻の意見を否定したとき、加奈さんは勇気を出して、「ママね、そうやって自分の意見を否定されて、パパと綾ちゃんの意見だけが正解みたいになるとすごく悲しい気持ちになる」と言いました。綾ちゃんは「ママごめんね。悲しい気持ちごめんね」と言って泣き始めました。そして、次女の凜ちゃん(仮名)が「ママいい子いい子」と頭をなでてくれたのです。
それを見ていた夫は加奈さんに「ごめん」と謝りました。しかし、何が悪いのか、いまいちピンと来ていない様子。それからも夫の「娘ファースト」は続いているそうですが、娘たちは加奈さんの味方で、夫がはねのけると綾ちゃんがとりなすようになったそうです。子どもたちは成長するにつれ、両親の力関係や、何かにつけて母親を否定する父親の様子を冷静に判断できるようになるでしょう。
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