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「焼き肉店」がコロナで好調の理由は? “焼き肉バブル”崩壊の懸念はない?

コロナ禍で「焼き肉店」の好調さが注目されています。なぜ、焼き肉店だけ好調なのでしょうか。また、「焼き肉バブル」ともいうべき状態が崩壊する懸念はないのでしょうか。

ワタミが新たに展開を始めた「焼肉の和民」(2020年10月、時事)
ワタミが新たに展開を始めた「焼肉の和民」(2020年10月、時事)

 新型コロナウイルスの影響で外食産業の多くが苦しむ中、「焼き肉店」の好調さが注目されています。外食大手のワタミが居酒屋から焼き肉店への大量業態転換を発表した他、個別の出店も相次いでいるようです。コロナ禍の中、なぜ、焼き肉店だけ好調なのでしょうか。そして、「焼き肉バブル」ともいうべき状態が崩壊する懸念はないのでしょうか。飲食店コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。

強力な換気で安心感

Q.なぜ、焼き肉店の出店や焼き肉店への業態転換が相次いでいるのでしょうか。

成田さん「新型コロナウイルスの流行に伴う休業要請が解除された後も多くの飲食店では、前年同月比の売り上げが70~80%台にとどまっています。特に居酒屋チェーンは『密』が避けられないイメージもあって、同50%割れと非常に厳しい状況です。自治体やメディアで毎日のように感染の危険性が報道され、多くの人が『感染不安』で外食を控える傾向にあることも、前年比で同レベルまで売り上げが回復しない要因の一つだと考えられます。

そんな中、焼き肉店は強力な換気システムが整備されていて、居酒屋や一般的なレストランに比べ、換気が十分になされている印象が強いです。新型コロナウイルスの感染不安が続く中、換気が十分にされていれば感染リスクは低いといわれていますので、『安心できる』イメージのある焼き肉店が話題になっており、コロナ終息まではイメージ的に有利だと思います。

実際に、飲食店の業態の中で焼き肉業態の売り上げは他よりも伸びており、しばらくはこの傾向が続くとみられます。そのため、焼き肉店の出店や業態転換が増えていると考えられます」

Q.焼き肉店は他の飲食店に比べて出店しやすいのでしょうか。

成田さん「飲食店を出店する場合、初期経費と運営経費(ランニングコスト)のバランスも検討しなくてはなりません。初期経費は物件(店舗)の契約料や調理設備、空調設備などで、運営経費は食材費、光熱費、人件費などです。

焼き肉店の場合、初期経費については換気システムや焼き肉用テーブルを設置しなくてはならず、居酒屋などに比べ出店コストはかかりますが、運営経費については基本的にお客さま自身が調理をしますので、厨房(ちゅうぼう)担当者の人件費が大幅に抑えられます。また、新型コロナ流行に伴う休業要請などの影響で食肉の卸値が値崩れしているので、食材費も抑えられて利益が出やすくなっており、初期経費の早期回収も見込めます。今の状況では、飲食店の中では比較的、焼き肉店が出店しやすいと思われます」

Q.焼き肉店が有利な点は分かりましたが、逆に、焼き肉店が他の飲食店と比べ不利な点はないのでしょうか。

成田さん「ビュッフェスタイルの焼き肉店では、不特定多数のお客さまが大皿からお肉を取るため、『他の客の飛沫(ひまつ)が肉に付着しているのではないか』と考える人がいます。また、同席者同士で同じ焼き肉テーブルを利用するため、『箸の接触などで感染するのではないか』と不安に思う人もいます。店側として、肉は注文を受けた分を客席に運ぶ、トングや取り分け箸を個々に用意するなど、お客さまの不安を取り除く対策が必要です」

Q.コロナ禍が終息したら、焼き肉店の「バブル」が崩壊する懸念はないのでしょうか。

成田さん「懸念があると私は考えています。コロナ禍が終息したら、焼き肉店以外の飲食店にもお客さまが流れるため、増え過ぎた焼き肉店の中には当然、選ばれない店も出てくるでしょう。

また、これは焼き肉店だけではなく飲食店全体にいえることですが、コロナ禍をきっかけに、企業ではリモートワークなどの新しい働き方が一気に広まっており、自宅で作る『内食』やデリバリーなどの『中食』の需要が大きく伸びています。外食は『仕事帰りに店に立ち寄る』から『わざわざ支度をして家から出掛ける』ものに変わり、今までのような集客は難しいでしょう。今後、焼き肉店はこのような問題を抱える懸念があります」

Q.多くの新しい焼き肉店を私たち消費者が訪れる場合、どのような基準で「よい店」を選んだらよいのでしょうか。

成田さん「焼き肉店だけでなく他の飲食店でもそうですが、現段階では新型コロナウイルス感染防止対策をしっかりしているお店を選ぶことが大切です。お客さまだけでなく、働くスタッフへの感染防止にも配慮しているお店はさらに『よいお店』だと思います。飲食店は食べるためだけの場所ではありません。おいしい料理やお店の人との会話が楽しめる場所であり、家とはまた違ったくつろぎの空間でもあります。多彩なお店がある中で、自分に合ったお店を探すのも楽しみの一つではないでしょうか」

(オトナンサー編集部)

成田良爾(なりた・りょうじ)

飲食店経営コンサルタント

ヴィガーコーポレーション代表取締役。厚生労働省公認レストランサービス技能士(国家資格)、文部科学省後援サービス接遇検定準1級、食生活アドバイザー2級、他。飲食業界25年以上。ミシュランガイド掲載の高級レストランから個人経営の小さな大衆店まで幅広いジャンルの飲食店に携わり、その経験に基づく統計解析および枠にとらわれないアイデアで多くの赤字店を黒字化させてきた実績を持つ。「100年続く店づくり」をモットーに、次世代育成や飲食業の働き方改革などにも力を入れており、食文化普及の他、職業訓練校講師(フードビジネス科)や子育て女性就職支援事業講師なども歴任。現在も多くの飲食店経営者のサポートを手掛ける。飲食店専門のコンサルティング「オフィスヴィガー」HP(http://with-vigor.com/)。

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