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最高齢79歳 大阪のシニア男女40人が「チアリーディング」で見つけたもの

初心者ばかりなので入りやすい

 メンバーがそこまで頑張る理由について、石原さんは「チアダンスは『チームでやる』からでしょうね」と強調します。「自分はチームの一員、だから、自分だけサボるわけにはいかないという気持ちになるんだと思います。そこがカルチャースクールで習うダンスとの違いです。“お客さま”として習っているのと、“チームの一員”として継続的に取り組むのでは、意欲や姿勢は当然、違ってきますよね」

 それくらい、チームとしての意識が強いということのようです。

「今、4チームに分かれていますが、それぞれのリーダーがうまく皆の意向をまとめていて、自主練習をしたり、うまくいかない人がいたら励ましたりと、組織としてしっかり機能するようになっています。イベントなどへ露出が増えるにつれて、意識も変わってきました」

 皆さん、意欲的なようですが、60代で初めてチアダンスをするのは心理的なハードルがかなり高いのでは?と思い、最後に石原さんに聞くと、あっさり否定されました。

「チアダンスの経験者はほとんどいないので、皆が初心者で横一線。メンバーに聞いてみると、そこがいいみたいです。他の趣味だと上級者がたくさんいて、『自分だけ初心者』の状況になりがちです。だから、ちょっと入っていきにくい。でも、チアダンスだと初心者ばかりなので、そういう壁のようなものがないということです。

ある人が『ここでは、性別も年齢も背景も違う、普通なら出会わないいろんな人たちと笑いながら取り組める。そういう場所にいられるのが、幸せなの』と言ってくれました。本当にうれしいことです」

「誰かのために」で頑張れる

 石原さんの口から何度も出た「自分の元気さで、周りを元気づける」という“チアスピリット”。高齢者には運動と交流が重要とされますが、「運動しよう」「交流しよう」という単なる心掛けと、「自分の元気で周りを元気にしよう」という精神や目標があるのとでは、取り組む姿勢に大きな差が出るはずです。

 また、「周りを元気づける」チアスピリットは高齢期に高まるとされる“誰かのために”という「自己超越欲求」とマッチしていますから、高齢者に適した活動ともいえるでしょう。

 筆者もほんの少しだけ、一緒に体験しましたが、明るく元気な人たちばかり。前向きで笑顔あふれる空気の中で、すぐに打ち解けることができ、心身ともに元気づけられました。石原さんの言う通り、チアスピリットは女性や若者だけでなく、高齢者にとっても重要な考え方だと感じさせられました。

(NPO法人・老いの工学研究所 理事長 川口雅裕)

【写真】「大阪オトン・オカンチアリーダーズ」の活動風景

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川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

NPO法人「老いの工学研究所」理事長、一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

1964年生まれ。京都大学教育学部卒。リクルートグループで人事部門を中心にキャリアを積む。退社後、2012年より高齢者・高齢社会に関する研究活動を開始。高齢社会に関する講演や執筆活動を行うほか、新聞・テレビなどのメディアにも多数取り上げられている。著書に「年寄りは集まって住め ~幸福長寿の新・方程式」(幻冬舎)、「だから社員が育たない」(労働調査会)、「チームづくりのマネジメント再入門」(メディカ出版)、「速習! 看護管理者のためのフレームワーク思考53」(メディカ出版)、「なりたい老人になろう~65歳から楽しい年のとり方」(Kindle版)、「なが生きしたけりゃ 居場所が9割」(みらいパブリッシング)など。老いの工学研究所(https://www.oikohken.or.jp/)。

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