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親族の結婚式に「着物」で出席する理由は? 着物の選び方や作法、保管法も解説!

既婚女性が親族の結婚式に出席する際は、着物を着るのが一般的とされています。なぜなのでしょうか。

既婚女性はなぜ着物?
既婚女性はなぜ着物?

 新型コロナウイルスの流行後、結婚式が中止、または延期されるケースが相次ぎましたが、緊急事態宣言の解除後は一部地域を除き、感染者数が減少傾向にあることから、秋以降の式の実施を目指し準備に入る人もいるようです。ところで、結婚式の出席者にとって気になるのが式に着ていく服装です。既婚女性が親族の結婚式に出席する際は「着物」を着るのが一般的とされていますが、なぜなのでしょうか。

 着物の作法とともに、和文化研究家で日本礼法教授の齊木由香さんに聞きました。

自分に合った「格」のものを着る

Q.実のきょうだい、義理のきょうだいなど親族の結婚式に出席する際、既婚女性は着物を着るのが一般的と聞きます。実際に着物を着るべきなのでしょうか。

齊木さん「着物を着ることをおすすめします。着物は日本の民族衣装として、華やかさがあるだけでなく、おめでたい柄、縁起のよい文様があしらわれているため、着物を通して相手に祝福の気持ちを表すことができるからです。

着物にあるおめでたい柄、縁起のよい文様を『吉祥文様(きっしょうもんよう)』といいます。例えば、『松竹梅』の柄は古来、『生命』『長寿』を連想させるおめでたいシンボルとして有名です。また、『鶴亀文様』は『鶴は千年、亀は万年』という言葉の通り長寿を表しており、幸せが長く続くという意味が込められています。

このほか、小物にもそれぞれ意味があり、例えば、帯に差す『扇子』は末広がりの形をしていることから、将来の発展や繁栄を願う思いが込められています」

Q.それでは、どのような着物を選ぶといいのでしょうか。

齊木さん「着物を選ぶ際に大切なのは、その場所にふさわしい着物、自分の立場に合った『格』の着物を選ぶことです。例えば、結婚式など祝儀の席で親族は『留め袖』を着用します。留め袖には『黒留め袖』『色留め袖』があり、黒留め袖は最も格式の高い第一礼装で、新郎新婦の母親、仲人の夫人にふさわしい着物です。西日本では母親以外の親族が着る場合もあります。

色留め袖は黒留め袖の次に格式が高い礼装で、既婚の姉妹や叔母などの親族が着用しますが、近年では未婚の姉妹も着用するのが一般的になりつつあります。また、招待客で最も主催者側に縁の深い主賓は、色留め袖やその次に格の高い『訪問着』を着用します。同僚や同級生などその他の招待客は訪問着や『付け下げ』を着用するのが一般的です。このように、主催者側にご縁の深い人ほど、格式高い着物を選ぶのがポイントです。

また、『白』は花嫁衣装の色であるため、白いドレスやワンピースはタブーとされていますが、着物は洋装と違い、『色』ではなく着物の『格』が重要になります。しかし、近年は着物を着ているだけで華やかな印象になりますので、招待客は気負うことなく祝いの気持ちを込めて、着物に袖を通してみてはいかがでしょうか」

Q.着物を着る際の注意点はありますか。

齊木さん「着物は男性女性に関係なく『右前』に着ます。つまり、自分から見て右側の身頃、続いて左側の身頃を重ねます。なぜ、このような着方をするかというと、719年に元正天皇によって発令された衣服令『右衽着装法(うじんちゃくそうほう)』によって、右前で着装することが定められて以来、現代に受け継がれているからです。

『左前』に着ると、仏式のお葬式で故人が身に着ける経帷子(きょうかたびら)の着方になるので注意が必要です。また、黒留め袖や色留め袖、訪問着など格の高い着物は、裾線(着物の裾)を足の甲に着くすれすれのところに決めると品格のある装いになります。逆に、裾線を短くするとカジュアルな印象になり、バランスが悪くなるので注意しましょう」

Q.着物で式場内を歩く際の作法はあるのでしょうか。

齊木さん「着物は着物独自の振る舞いをすることで、着る人の美しさを引き立たせることができます。そのため、ジーパンなどの普段着を着ているときのような振る舞いをすると、着物の魅力は半減します。

まずは着物のラインに沿って背筋を伸ばし、胸を張り、姿勢をよくします。天井からつられていることを意識しながら、『膝から下』で歩くことで、大股にならず、きれいな歩き方になります。その際、つま先から体の中央(内側)に着地するように一直線上を歩きます。そうすることで、歩き方が美しくなるだけでなく、着崩れ防止にも役立ちます。

また、歩く際は軽く脇を締めて、手を振りすぎないようにしましょう。品よく見えるだけでなく、袖が他の人に当たることなく、汚れを防ぐ効果もあります」

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齊木由香(さいき・ゆか)

日本礼法教授、和文化研究家、着付師

旧酒蔵家出身で、幼少期から「新年のあいさつ」などの年間行事で和装を着用し、着物に親しむ。大妻女子大学で着物を生地から製作するなど、日本文化における衣食住について研究。2002年に芸能プロダクションによる約4000人のオーディションを勝ち抜き、テレビドラマやCM、映画などに多数出演。ドラマで和装を着用した経験を生かし“魅せる着物”を提案する。保有資格は「民族衣装文化普及協会認定着物着付師範」「日本礼法教授」「食生活アドバイザー」「秘書検定1級」「英語検定2級」など。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yukasaiki)。

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