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食事前の「いただきます」はする? しない? 2000人調査、研究家に聞くその意味

「日本の伝統文化」という人もいる食事前の「いただきます」ですが、大人になって、しなくなった人もいるかもしれません。「いただきます」をするかしないか、アンケート結果と和文化研究家の見解を紹介します。

あなたは「いただきます」を言っている?
あなたは「いただきます」を言っている?

 子どもの頃、親から、食事の前に「いただきます」と声に出して言うよう教えられた人は多いと思います。しかし、大人になっていつしか、「いただきます」と言わずに食事を始めるようになった人もいるのではないでしょうか。「いただきます」にはさまざまな感謝の意味が込められており、「日本の伝統文化」という人もいます。

 では実際、食事の前に「いただきます」をしている人はどれくらいいるのでしょうか。あいさつをする必要性はどのように考えられているのでしょうか。「いただきます」をしているかどうかについて聞いたアンケート結果を分析するとともに、和文化研究家の見解を聞きました。

理由に「単身世帯の増加」も

 アンケートは3月16日に、全国のYahoo! JAPANユーザーを対象に行い、2000人から有効回答を得ました。

「あなたは食事前に『いただきます』をしていますか」という問いに、56.1%の人が「している」、30.3%の人が「時々している」と回答する一方、「していない」は13.7%で、「いただきます」をしていない人は“少数派”という結果になりました。今回のアンケートは任意参加方式のため、普段、「いただきます」をしていない人が回答を避けた可能性はありますが、それを差し引いても、「いただきます」をする習慣が深く浸透していると思われます。

 では、どのように「いただきます」をしていることが多いのでしょうか。「している」「時々している」人のうち、70.4%が「声に出してしている」、29.4%が「声に出さず心の中で思っている」と回答し、声に出している人が多数を占めました。

 声に出す理由では「習慣として身に付いている」が87.9%、「声に出すように教えられた」が8.4%で、少数意見として、「子どもへの教育」などがありました。一方、声に出さず、心の中で思っている人の理由は「気が付けば声に出さなくなった」40.2%、「声に出す必要を感じない」29.4%、「声に出すのは恥ずかしい」24.1%などでした。

「いただきます」をしていない人の理由は「する必要性を感じない」54.6%、「恥ずかしい」21.2%と多く、「単身生活で1人での食事が多く、気付けばやらなくなった」という意見もありました。

 また、「『いただきます』という食事前のあいさつはこれからも必要だと思いますか」と全員に聞くと、87.3%の人が「必要」と回答。その理由としては「食材や料理をした人への感謝から」「当たり前のことだから」「日本の伝統文化だから」という声が出ました。「必要ない」という人は12.7%で、「必要性を感じない」「食事前だけ感謝を口にするのはおかしい」といった意見がありました。

戦後学校教育を通して普及

 アンケートの結果に対する見解と、「いただきます」に込められた意味や今後の必要性などについて、和文化研究家で日本礼法教授の齊木由香さんに聞きました。

Q.日本で食事の前に「いただきます」をするようになったのは、いつからですか。

齊木さん「日本でいつから、食事の前に『いただきます』をするようになったのかは定かではありません。戦前までは『いただきます』ではなく、『たべよ』『たべるぜー』など、さまざまな食事の前のあいさつが存在しました。しかし、戦後の学校教育を通しての“しつけ”で『いただきます』と統一されてからは、この教育が一定の役割を果たし、広く普及するようになったと思われます」

Q.「いただきます」にはどのような意味が込められているのですか。

齊木さん「大きく2つ考えられます。1つ目は、私たちが生きていく上で欠かすことができない肉や魚、野菜、果物などの食材への感謝です。肉や魚はもちろん、野菜や果物も、私たち人間が食べるために命を失っています。食事の前に『いただきます』をするのは『命をいただき、自らの命にさせていただきます』 という意味が込められているとされます。

2つ目は、料理が提供されるまでに関わった人への感謝です。肉となる牛や豚、鶏を飼育した人、野菜や果物を栽培した人、これらの食材を調理した人など料理に関わったすべての人に感謝するという意味合いがあります」

Q.海外でも、食事の前にあいさつをする習慣がある国は存在するようです。日本の「いただきます」との違いはあるのでしょうか。「いただきます」は日本の伝統文化といえますか。

齊木さん「イギリスやフランス、イタリア、ドイツ、オランダなど、海外にも食事を始める前のあいさつは存在します。しかし、それらの言葉は『おいしく召し上がれ』の意味で、これから食べようとする相手へ掛ける言葉であり、日本語の『いただきます』とは性格が異なります。『いただきます』が日本の伝統文化かは議論がありますが、日本独自の価値観であり、文化といえると思います」

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齊木由香(さいき・ゆか)

日本礼法教授、和文化研究家、着付師

旧酒蔵家出身で、幼少期から「新年のあいさつ」などの年間行事で和装を着用し、着物に親しむ。大妻女子大学で着物を生地から製作するなど、日本文化における衣食住について研究。2002年に芸能プロダクションによる約4000人のオーディションを勝ち抜き、テレビドラマやCM、映画などに多数出演。ドラマで和装を着用した経験を生かし“魅せる着物”を提案する。保有資格は「民族衣装文化普及協会認定着物着付師範」「日本礼法教授」「食生活アドバイザー」「秘書検定1級」「英語検定2級」など。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yukasaiki)。

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