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警察官「君の名は?」 いきなり職質されても意外と大丈夫なワケ

虚偽回答でも、法的責任「まずない」

 続いて「君の名は?」と警察官に質問され、拒否せずに答えるケースを想定しましょう。ただし、その内容は「虚偽」とします。

「たとえ虚偽でも、法的な責任を問われることはまずありません。あくまでも任意であり、それに加えて、虚偽か否かの判断がとても難しいということが、その理由です」

 たとえば芸能人。彼らは通常、本名ではなく芸名を名乗っているため、名前について虚偽か否かの判断自体が難しくなります。

「ただし明らかに虚偽と分かるような内容を話すと、あらぬ嫌疑をかけられて、面倒臭いことになるため、虚偽の内容を話すくらいなら拒否して、その場を立ち去るほうが得策でしょう」

暴力を振るわれたら訴訟を提起できる

 それでは、不当な職務質問に対して、声を掛けられた人がその警察官を訴えることは可能なのでしょうか。西原さんは「不当な職務質問の中身の程度による」と前置きした上で、こう話します。

「職務質問の名を借りて、警察官から明らかな暴力を振るわれたような場合、国家賠償請求訴訟を提起することが可能です。しかし、職務質問に付随する正当な職務範囲内の場合や、それをわずかに超えた程度の場合、損害賠償請求が認められることはほぼないと考えてよいでしょう」

 西原さんも学生時代に繁華街を歩いていたころ、1週間に3回も職務質問を受けた経験があるそう。特に3回目は急いでいたこともあり、かなり腹が立ったといいます。

「質問をしてきた私服警察官に『所属警察署と所属課、氏名を教えていただきたい。さすがに今週3回目なので上層部にクレームを入れる。また私のどこに不審事由があるのか、理由をお答えいただきたい』と質問したところ、私服警官5人ぐらいに一瞬で取り囲まれました。結局、その中にいた責任者らしき人が謝罪したことで解決しましたが」。

 繁華街ではこのように複数で見張っているんだと、西原さんはむしろ“感心”したといいます。

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西原正騎(にしはら・まさき)

弁護士

1975年東京都生まれ。中央大学法学部、立教大学法科大学院卒業。2009年弁護士登録(東京弁護士会登録)。インテグラル法律事務所パートナー弁護士。NPO法人遺言相続リーガルネットワーク所属。東京弁護士会法教育委員会委員、同委員会若手会員総合支援センター委員、日弁連高齢者・障害者権利支援センター幹事、日弁連若手弁護士サポートセンター幹事。日経ビジネスコラム、その他書籍多数執筆。相続や離婚など誰もが巻き込まれる可能性のある一般民事事件から中小企業の法務、経営の相談まで幅広く取り扱っている。趣味はラグビー、ダイビング。

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