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静かな日本と対照的 中国の「春節」はなぜ爆竹や花火で派手に祝うのか

中国では「春節」になると、爆竹や花火で派手に新年を迎える風習があります。穏やかに新年を迎える日本とは対照的ですが、なぜなのでしょうか。

春節を花火や爆竹で祝う北京の街。消防士が火を消す姿も(2017年1月、EPA=時事)
春節を花火や爆竹で祝う北京の街。消防士が火を消す姿も(2017年1月、EPA=時事)

 1月25日は中国の「春節(旧正月)」ですが、中国の春節は爆竹を鳴らしたり、花火を打ち上げたりする風習があります。横浜の中華街で、新年を祝って爆竹を鳴らす光景を、ニュースで見たことがある人も多いのではないでしょうか。日本は対象的に、新年を穏やかに迎える風潮があるため、大音量の爆竹を大量に鳴らしたり、花火を打ち上げたりするなど派手に新年を祝うことが、文化の違いとはいえ不思議に思えます。

 なぜ、中国では爆竹や花火で新年を迎えるのでしょうか。ノンフィクション作家で中国社会情勢専門家の青樹明子さんに聞きました。

爆竹の大きな音で邪悪をはらう

Q.なぜ、中国では春節に爆竹を鳴らしたり、花火を打ち上げたりするのでしょうか。

青樹さん「爆竹を鳴らすと大きな音がします。中国ではこの音で、疫病神的なもの、つまり邪悪な鬼のようなものが驚き、逃げ出すと考えられています。日本でいえば節分の『鬼は外』のような感じで、邪悪なものを爆竹の大きな音で追い出し、新しい年の門出を祝うために爆竹を鳴らすのです。

都市部では最近、爆竹の代わりに花火を打ち上げることが一般的になりました。打ち上げ花火といっても、日本の花火大会で打ち上げられる『大玉』のような花火ではなく、少し小型にしたものを派手に打ち上げます。爆竹と同じく邪悪なものを追い出し、門出を祝う意味があります」

Q.爆竹は、年が明けた瞬間に鳴らすものなのですか。

青樹さん「春節の大みそか(2020年は1月24日)から、爆竹を鳴らしたり花火を上げたりします。ピークは新年を迎えた午前0時からです。特に新年を迎えた瞬間は、例えば、北京市内は市民全員が花火を上げているのではないかと思うほど、迫力のある光景が展開されます。春節の期間中(今年は1月24日~2月8日)、規則を守った上であれば花火を上げることが許されています」

Q.花火は、一般的にどれくらいの量を打ち上げるのでしょうか。

青樹さん「花火は箱に入れて販売されますが、1箱分の花火では打ち上げを始めてから2分ももちません。また、価格も非常に高く、私の知る限りでも1箱が日本円で5000円以上していました。皆さん一度に複数の箱の花火を上げるので、2万円くらいは予算を組んでいます。とてもお金をかけていますね」

Q.日本では正月前、鏡餅など正月ならではのものがスーパーマーケットなどで販売されます。爆竹や花火も、旧正月前だけ中国の小売店で販売されるのですか。

青樹さん「春節の期間だけ、爆竹や花火の販売を許可された専用の露店が各都市のあちこちに出店します。今年でいえば2020年1月19日から1月29日までです。ただ、以前より露店の数は減っています。例えば、北京市では2020年、23の露店が出店を許可されていますが、2019年は37店だったので14も減っています。爆竹や花火による大気汚染を懸念してのことです。行政ができるだけ爆竹や花火を規制する方向のようです。打ち上げ花火や爆竹による火災などの事故が多いのも要因です」

Q.花火を打ち上げる限り、火災の危険はなくならないと思います。「危険だからやめよう」といった声は上がらないのでしょうか。

青樹さん「実は、春節の花火に関係する火事で経済損失が億単位で出ています。2019年は春節による火災により、中国全土で約8億円の経済損失が出たとされます。しかしながら、強く規制してしまうと国民の不満が高まってしまうのです。

中国国民にとって、爆竹を鳴らしたり、花火を打ち上げたりするのは春節に絶対欠かせない最重要行事です。北京市内では以前、爆竹が禁止されたことがありましたが、そのときに皆『本当につまらない(没意思)』と嘆いてました。日本に例えると、お雑煮のないお正月のようなものでなくなることはあり得ないと思います。禁止してしまうと、国民から怨嗟(えんさ)の声が噴出すると思います」

Q.日本では最近、豆まきをする家庭が減るなど伝統的な風習が失われつつあります。中国では、伝統的な風習を大切に守る意識が強いのでしょうか。

青樹さん「中国は現在、国内総生産が世界第2位の経済大国ですが、他の経済大国とは異なり旧暦を守っています。このような国は珍しいのではないでしょうか。また例えば、清明節や端午の節句、中秋節も中国では国が定めた休日になっています。

日本からはだんだんと消えつつあるこうした行事ですが、これらは今、中国でしっかりと守られているといってよいです。清明節に若者たちが先祖のお墓の掃除をする光景は、日本ではあまり見られなくなっています。伝統的な文化を守るというのは中華民族意識かもしれませんが、文化面では悪いことではないと思います」

(オトナンサー編集部)

青樹明子(あおき・あきこ)

ノンフィクション作家・中国社会情勢専門家

早稲田大学第一文学部卒、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程修了。大学卒業後、テレビ構成作家や舞台脚本家などを経て企画編集事務所を設立し、業務の傍らノンフィクションライターとして世界数十カ国を取材する。テーマは「海外・日本企業ビジネス最前線」など。1995年から2年間、北京師範大学、北京語言文化大学に留学し、1998年から中国国際放送局で北京向け日本語放送のキャスターを務める。2016年6月から公益財団法人日中友好会館理事。著書に「中国人の頭の中」「『小皇帝』世代の中国」「日中ビジネス摩擦」など。近著に「中国人の『財布の中身』」(詩想社新書)がある。

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