ハム、乳製品…「要冷蔵食品」がフリマアプリで常温転売、出品者の法的責任は?
フリマアプリで要冷蔵食品が常温で転売されているとして、消費者庁が注意を呼び掛けています。常温で転売した場合、出品者はどのような責任を負うのでしょうか。
フリマアプリで、ハムや乳製品などの要冷蔵食品が常温で転売されている事例があったとして、消費者庁が10月下旬、注意を呼び掛けました。年末から年明けにかけて、お歳暮向けの要冷蔵食品の常温転売が増加する可能性もあります。食品の常温転売を行った場合、出品者は何らかの責任を問われるのでしょうか。消費者庁と弁護士に聞きました。
食品表示法違反の可能性も
まず、消費者庁表示対策課の担当者に聞きました。
Q.今回、注意喚起をした経緯は。
担当者「お中元の要冷蔵商品がフリマアプリで常温転売されているという情報が、9月に寄せられました。調べたところ、贈答用のハムやソーセージ、魚介類の加工食品や乳製品などの常温転売が見られました。
また同時期に、ある食品メーカーが『フリマアプリなどで転売された商品で食中毒などのトラブルがあったとしても一切責任を負わない』と公表しました。現在までに食中毒などの被害の報告は入っていませんが、お歳暮シーズン後に要冷蔵食品の常温転売が増える恐れがあるため、注意喚起に踏み切りました」
Q.不適切な出品が増えた背景は。
担当者「フリマアプリ利用者の、食品の安全性に対する知識が不足していること、また、配送料を安く済ませようとすることが背景にあります。例えば、『真空パック詰めの食品だから常温で発送しても問題ない』と考える人もいるようですが、こうした密封食品(レトルト食品除く)を常温に置いた場合、ボツリヌス菌などの細菌が増殖する恐れがあります。
クール便は常温配送よりも配送料が高く、フリマアプリが行っている匿名配送サービスに対応していません。個人情報を特定されず、配送料を安く済ませたいと考える人が常温配送を行っていると考えられます」
Q.そもそも、食品を転売する行為について保健所などへの届け出や許可は必要ないのでしょうか。
担当者「フリマアプリの個人間取引は、基本的になりわいとは見なされないため、関係機関への届け出は不要です」
Q.もし、冷蔵品を常温で送った場合、発送者はどのような責任を問われるのでしょうか。
担当者「食品表示法違反に該当する可能性があります。食品表示法では、食品の情報を科学的根拠にのっとって正しく表示することが義務付けられています。要冷蔵品を常温で送るということは『常温食品』に扱いが変わるため、本来であれば、商品パッケージに記載している『要冷蔵(10度以下)』の表示を『直射日光を避け、常温で保存してください』などに変更しなければなりません。要冷蔵と書かれたまま、常温で送ると違反になります。
また、食中毒が起きた場合も法的責任を問われる可能性があります。さらに、もし転売行為がなりわいと見なされた場合、食品衛生法で定められた食品の保存基準を守らなかったとして同法違反に該当します」
Q.製造業者の知らないところで商品がフリマアプリで転売され、その後、食中毒などのトラブルが発生した場合、製造業者が責任を問われることは。
担当者「あくまで個人間取引で発生したトラブルであり、製造業者が関与したわけではないため、責任を問われることはありません」
Q.フリマアプリで食品を購入し、食中毒などのトラブルに巻き込まれた場合、どのように対処すればいいのでしょうか。また、フリマアプリの運営会社が責任を問われる可能性は。
担当者「まずは、フリマアプリの運営会社に連絡をしてください。ただ、個人間取引ですので、問題が発生した場合は当事者間で解決する形になります。アプリの運営会社の責任は問われませんが、社会的責任を負う必要はあると思います。消費者庁では今回の件を受け、フリマアプリの運営会社に対し、利用者への注意喚起を行うことや利用規約の見直しを検討するよう要請しています」
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